『必殺! THE HISSATSU』(1984)の
オープニングで出てくる中村主水の
刀がどうも真剣日本刀に見える。
ただし、ワンカットで剣戟の殺陣を
やっているので、真剣だとしたら
厚い刃引き刀だろう。
ラストのクライマックスシーンで仕事人
の助っ人仕事人片岡孝夫が使う鎧通し風
の短刀も、どうも真剣に見える(笑)。
刃引きだろうけど。
1935年大河内傳次郎版の2004年リメイク。
出演者の演技に難あり?だが、ラスト
間際には原作者林不忘の味が良く出て
いる。人情ものとして結構泣かせる。
豊川悦司は『北の零年』(2005)での
新政府軍に立ち向かうテロリストの
元会津藩士役や『椿三十郎』(2007年
リメイク版)での室戸半兵衛役のような
冴えがない。どうにも無頼の浪人になり
切れていない。
丹下左膳と茨右近を演じ分けるのは困難
かもしれない。
丹下左膳も茨右近も林不忘の『新大岡
政談』に登場する人物だが、それより先
に登場した早乙女主水之介(『旗本退屈
男』原作佐々木味津三)とは別風味の、
日本の時代劇の一つのヒーロー像の基本
となった。大元は平手造酒がイメージ
シンボルだろう。
豊川悦司はこの作では台詞が無いシーン
のほうが魅せる。
この後ろ姿の演技などは絶品だ。
実在の柳生対馬守は江戸柳生家の四代目
当主の大名だ。
この物語に出てくる実子の「安坊」に
あたる実子はいない。
長子は別家大名家の養子となっている。
この作品では、最後の最後のラストシーン
は、安坊が大名の落胤として柳生家に
行くのか、それとも左膳が用心棒をして
いる矢場に戻ってくるのか、どちらにでも
取れる表現描写にしてある。
作品は楽しめた。子どもを使う人情もの
は反則のようにも思えるが、子役の子が
かなり良い演技をしていて、とって着けた
ような違和感はまったく無かった。
この映画作品の中での主役は彼では
なかろうか。
物語のネタバレにはなるが、逆シェーンの
ような物語だ。
林不忘が生み出したキャラクターの浪人
茨右近については、林不忘の『魔造』に
ほれ込んで自ら作品を作った杉良太郎版
のテレビドラマ『喧嘩屋右近』が最高だ。
ただし、原作からはかけ離れた物語と
なってしまっている。
原作者の林不忘(長谷川海太郎)は35歳で
1935年に亡くなった。
文筆活動ではいろいろと大仕事の功績を
残した。
文学作品は時代が過ぎても世に残る。
それは85年過ぎた今でも色あせない。
1906年の『坊ちゃん』(夏目漱石)など
は、明治39年の当時の時代世相を反映
した大時代青春学園小説だが、あの作品
で描かれている「坊ちゃん」の痛快さは
114年経った今でもまったく輝きを失わ
ない。
文学は永遠に不滅だ。
その不朽性こそが、文学の文学たる命
だろう。