渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ドラマ『JIN -仁-』

2020年05月22日 | open


もう、毎回感動しながら観ている。
ほんとに良いドラマだ。

ずっと昔にも書いたが、この場所はどこ
なのだろう。
江戸の町を眼下に見下ろせて、そして、
江戸城の位置があそこにあって、富士山
が遥かに見える。太陽が沈む位置から、
北東より江戸を望んでいることになる。

現実にはこの場所はない。
現実のこの地点にあたる位置には丘陵
地帯は無い。
現実世界の地形では、江戸ー東京には、
こうした山もなければ丘もないのだ。
これは架空の場所だ。
それでも、155年前の時代であるのに、
なぜかとめどもなく郷愁を誘う。
不思議な景色だ。

朝。朝日が昇る。


ありゃりゃ?
同じ丘の上だぞ。
方位的には右手が海になるはずだ。
さすれば向こうの山は房総半島。
しかし!
江戸城の形が上の景色と同じだよお。
これまた、架空も架空、大架空だ。
まあ、この場所は品川御殿山と考えれば
あながち外れてはいないが、南方先生と
咲さんが語らいをした夕陽の丘と同じ丘
の地べたというのは如何ともいかんちゃ。

まあ、架空ファンタジーなのですが、この
江戸の景色はベアトが撮影した大江戸風景
の写真をベースにしているので、リアルさ
とちぐはぐさがミックスになっている模
様。
ベアトの幕末写真はかなり見応えがあり
ます。
江戸城なんて森だもんなあ。
溜池もホントにまだ溜池があるし。
そして、ベアトの江戸写真には、本物の
江戸町人と本物の武士たちが写っていま
す。こりゃすごい。

愛宕山から撮影。右手向こうの森が江戸
城だ。当時、パリを抜いて世界一の大都
会。地球上で一番の都市だった。






現高輪プリンスホテルの裏あたり。


外国人警護の幕臣旗本。


有名な外国人警護の旗本たちの写真。
警護隊なのでより探りの腕こきが集めら
れたことだったろう。
後ろ向かって右側は、齋藤大之進殿では
なかろうか。夏なのか、絽の羽織を着て
いる者もいる。刀は幕法に則り全員短い。


ナイフのR部分の研ぎ

2020年05月22日 | open


剣友がナイフの研ぎについて、きつい
Rの部分、日本刀でいうならフクラの
部分が上手く研げないというので、
呼び方は知らないが、ナイフの湾曲部
の研ぎ方を即席で動画を撮って教えて
あげた。
手元に引いて来るときに切先をだんだん
立てて行く方法で、ナイフのシャープ
ニングではよく行なわれている方法だ。
その徐々にハンドル側を持ち上げてRに
沿ってエッヂに刃を付けて行く技法は、
何と呼ぶのかは私は知らない。
まあ、直線部はスーッと同角度で来て、
R付近から段々立てて行き、ポイント=
切先部分では砥石が削れる程に立つ。
この研ぎ方をするとRに対して綺麗な小刃
を付けたり、ハマグリでも綺麗なエッヂを
造形したりすることができる。
このやり方は私は80年代に知って、それで
ナイフや包丁のR部分は仕上げている。
それをしないと、刃物は直線部分とR部分
では砥石に当たる角度が変わるので、平に
Rから先も研ぐと小刃は広がってしまう。
また、鎬がある包丁はベタ研ぎだと先の
ほうで鎬を蹴る可能性も出てくる。
特に小刃付けの場合は、綺麗なブレード
のRに沿ったRでお尻を徐々に持ち上げて
いってやる必要がある。

ジャンプ台研ぎ?
そりゃ変ですね(笑)。
しゃくりとも違う。
タツに突く時などは結構しゃくるけど、
それとも全く動きが異なる。
まあ、なんてのか、やはり言うならば
ジャンプ台(笑)。
もしくは滑り台。
何か固有名詞があるのかも知れないが、
洋物研ぎ技法なので、よく知らない。
日本刀の場合は、ナルメは細いソーメンを
並べたように研ぎ域を細かく狭く整列させ
て鋩子のR面は研いで行く。
これはナイフとは全くやり方が異なる。

このようなカーブエッヂのナイフでは、
持ち上げ研ぎの方法が必須となる。




こちらは、オールドビンテージガーバー
刃付け研ぎ。
ナイフの刃付け



研ぎ

2020年05月22日 | open
 




見る人が見れば、どこをどうして何を
やっているのか判る私の研ぎ。


ほんの2000円程の中華製ステンレスナイフ
でも、一閃すればこうなる。















暦は12月まで右角さようなら。
まあ、私物なんで切り試しで切っても
よし。
狙い通りの黒線の角を切れました。
 
刃物は生かすも殺すも研ぎ次第。
ただし、この切り方は前に説明したフライ
キャストにも通じる「ある切り方」で切っ
ています。
ただ振っただけでは切れない。
特殊な刃物の使い方の用法を用いていま
す。
狙い点を正確に切るのは日本刀の刀術に
よるもので、これは訓練、鍛練、稽古
次第でできるようになります。
刀で畳表を切る場合も、例えばマジック
で線を引いてそこを切る、置いた豆を
切る等々、錬成すれば開ければできる
ようになります。ゆくゆくは置いた米粒
一つを切れる程に。私はそれはできません
が。
この「狙った所を正確に斬る」という事は
刀術、剣術では非常に大切なことになり
ます。斬撃部位を任意に狙った所に斬り込
めるのですから。槍ならば、穂先には細い
現代釘を着けて、一文銭の穴を貫ける程
に。
この斬撃の正確性は、武器使用においては
かなり大切な要素になります。
この画像の場合も、切ったあとは、刀身
は勢い余って真下に向くなどはしません。
これは長い日本刀でも。
対敵戦闘斬りの方法なので、切先は斬切後
も的に
向けたままです。
まあ、的が倒れたら倒れた所をポイント
するのですが。
 
こちらの「切り」に関しては、見る人が
見ても、どれを使っているのかは区別が
難しいかも。いろいろあるので。
ただ、刺突はそれほど種類はありません
が、こと「切り」に関しては、「斬り」と
「切り」の違いに始まり、細分化された
技法が多くあります。
突くのは存外簡単ですが、切りと斬りに
関しては非常に多くのメソッドがある。
刀術は結構深いのです。
 
日本刀などの長物は、扱いが非常に難しい
ので刀法という刀術の体系が古来から
研究
れてた歴史があります。
そして、体術と刀術が合体していわゆる
剣術となり、さらに総合的な法理が整理
されて剣法となった。
刀はいろんな使い方があるんです。
さらに、小刀(しょうとう)や短刀もそれ
れの術がある。
この6cmの短いナイフでさえも、それ
の特性を活かした使い方があります。
 
でも、ナイフを本当はこのようには使い
ませんから(笑)。
ナイフは平和の道具ですから。
いや、野外で枝打ちのチョッピングでは
使えるかな(笑)。
それと、日本刀での戦闘も現代では存在
しません。上述した事は、あくまでも、
過去の伝統武芸としての話です。

北海道の友人が愛用のバックのワン
テンをヒグマ撃ちの人に1年貸して
みて、クマ撃ちさんからの感想を
聞いていて、いろいろナイフ、刃物
談義をしましたが、やはり長すぎる
ナイフよりも10センチ以内のナイフ
が使い易いし、それでヒグマも解体
できるとのことでした。
いろいろと思うところはある。
4インチよりも3.5インチ≒9センチ
のほうが使い易いし、多くの実用的
見地からはホローグラインドは
不必要であるばかりか使い勝手の
阻害要因にさえなることもある、と。

しかし、6センチのナイフではクマ
とは一戦は無理です(笑)。
というか日本刀でも無理でしょうね。
上の私の切り方は、あくまでも対クマで
もない過去の武芸技法としてのおはなし。

日本刀の場合、この使い方の切り方を
すると、牛乳パックなどもスパスパ切れ
ます。切断できる。
技術なんです。理論的な裏付けを知って、
それを体現できるように稽古をすれば、
やがてはできるようになる。
しかし、やみくもにやってもできるよう
にはならない。

物を切る場合には、日本刀であろう
とナイフであろうと包丁であろうと、
見誤ると大きく道を逸れる事があり
ます。
それは「切断できたかできないか」
だけに気持ちが取られること。
これは料理の世界ではそんな所に
気が取られていると何もできない。
包丁の技法はシビアです。
このことは実は日本刀での刀法でも
同じで、ただ切断できたできない
ではなく、「何をどうどのように
どうやって切ったか、もしくは
斬ったか」というのが重要なのです。
日本刀を使って畳表や竹を切断
することだけが刀法では決して
ない。
日本刀も料理人=包丁人のような
シビアな視点を持って、日本刀を
使う武技では刀術人といえる程の
刀技の用法の極めが要るのではと
私は思うのです。
人の曰く「剣術遣い」という領域を。
静止物体が切断できたかできないか
は刀法や剣法や剣術とは関係があり
ません。
それは試刀の類別に属するかと。
そして、大切なことは、研ぎの状態
です。これはありとあらゆる刃物が。

里親さん決定

2020年05月22日 | open

しまちゃんの里親さんが決まった。
県北の取引先勤務の方だ。
なんかそこの職場でも里親希望の名乗り
を上げてくれた人が複数いたようだ。
里親さん決まって、よかったよかった。

他の2匹も無事里親確定しました。
めでたしめでたし。
あとは離乳まで母乳で免疫つけてもらう
のと、きょうだいで遊ばせて社会性を身
につけることをにゃんタマたちにはして
もらう、と。
そろそろドクター検診かなあ。
毎日、日々どんどん活発になってきてま
す(笑)。


刃物は金額にあらず

2020年05月22日 | open



三徳が登場してから文化包丁という呼称
はいつしか消えて行った。
これこそが文化包丁そのもの。実物本体。
小4〜小5の時の横浜の小学校の家庭科
調理実習で愛用した包丁だ。
もう50年前になりますよ(笑)。
普通に今でも使ってます。
小学校の時のキャンプにもこれを持って
行ってた。
私が通った学校だけなのかどうかは知ら
ないが、うちの学校は、調理実習では
包丁は生徒が持って来ていました。
各人か班かは忘れたが、やためったら
実習室は包丁が並べられたので、班以上
の単位で持参していたのではなかろうか。
当時のキャンプは、今最近人気が再燃して
いる三角テントが主流だった。てか、それ
しか無かった。しかも、化学繊維は超高価
だったので、帆布だよ、コットン。重いの
なんのって。いや、まじで重かったので
す。ありゃ担ぐだけでくたびれた。

自分のだと判るように名前を柄に彫刻刀で
彫り込んである。これも50年前の小4の時
にやった。


ブレードがこれでもかもという程に薄い
ので硬物は切れないが、今でも良く切れ
ます。
調理実習室でのクラスのリンゴの皮むき
勝負とかでは力を発揮してくれた(笑)。
どれだれ長く皮が繋がって続くかの勝負
ね。


刃物は大切にすれば長くもちます。
刃物、どうか大事にしてください。
刃物の価値は値段ではありません。
だって、私の一番古い刀なんて、500年
以上前に作られた物だよ(笑)。
使う物ではないけれどさ。
こちらはかなり値も張るが、それゆえ使わ
ないのではない。欠点無比で、審査に出せ
ば重要刀剣まで行くような出来の刀剣
に載るような健全な古三原だからだ。
(刀剣審査は重要刀剣に行くまで審査料合計
で約70万円程かかります)
その古三原は完全な鑑賞刀。
だが、実用で使っている戦国時代の長船の
戦場刀でさえ、時代の長きは450年程前の
作になる。
残っていることがすばらしい。

たった文化包丁1本でも、ほんの肥後守1
丁でも、大切にして長く一緒にいてあげ
てほしい。
刃物の価値とは、「人と共に存在し続け、
人に潤いをもたらすもの」ではないかなあ
と私は思っています。

砥石

2020年05月22日 | open


日本刀は天然砥石でないと研げない。
天然砥石でそれなりの研磨技法を駆使し
て研がないと、鋼の素顔を見ることはでき
ない。

600円の肥後守をここまで研ぐ馬鹿は国内
で私だけかもと思いますけど(笑)。
鋼の良い素顔を化粧なしで出してあげた。


炭素鋼の研ぎって、単にエッヂをつけて
「よく切れる」ようにするシャープニング
とは違うんだよなあ。
「切れ味」の先の「切り味」を究める研ぎ
を求めるのと同時に、見て鋼の素顔の良い
部分を出して、良くない部分は伏せる、
起こしと伏せができないとなあ、と自分に
は課題を課している。

私が使う荒砥以外の砥石の一部。
#1000も荒砥に入るのでしょうけど。








世の中のすべての砥石の中で、私が一番
好きなのは青砥だったりします。
砥あたりが何とも言えない味わいがある
から。
崩れ易いので、カシューで周囲を固めて
養生してあります。


そろそろ、本気で人から依頼されている
研ぎと、20口の専門刃物の完成を目指そ
う。
お待たせしていて申し訳ありません。
気力はどんどん満ちて来ました。
(気分が一番大事で、これはほんとに
申し訳ない)

包丁百年(2015年過去記事再掲)

2020年05月22日 | open

先日、鯛と出刃包丁の画像を横浜の刀術
の友人が送って来てこの日記で掲載した
が、その人が私も推奨していた砥石を購入
したという。
本日、それを使って刃物を研いでみて、
あまりの実力に驚いたとのことだ。
また出刃だけでなく各種包丁やコールド
スチールのナイフも研いでみたとのこと。
切れ味の復活度合いにびっくりしていた。
砥石は大切。
そして、「新しい出刃を買おうかと
思っていたけど必要ないですね」との
こと。
それはそうだろう。刃物は鋼が無くなる
まで使える。刃物は捨ててはダメだ。
もう使えないのでは?と思える包丁でも
やりようによっては完全再生できる。
私も時々、一見用済みか?と思われる
状態の包丁を直して復活させることが
あるが、思うところあり、それに関する
過去記事を再掲載する。

まだ、その砥石を私が使っていなかった
頃の記事を再掲載する。
この再生復活させた包丁は、砥あたりと、
研ぎ上げ後の切れ味、切り味からみるに、
悪くない良質な鋼だった。
堺の包丁、やはりいいなと感じた次第。

(以下、2015年の記事を抜粋再掲載)

-包丁百年-

このような状態を、曲がり直し、鎬付け、
本研ぎ、と徹底的に直した。


この状態から(下から2番目)・・・


(こういう状態)

まず金床(かなじき)で慎重に空打ち
して歪みと曲がりを除去。

火造りの時のように打つのではない
別な打ち方で補修。
(鍛造の時ではないので金床は錆びて
いる。これは刃物鍛造前には鏡面近く
に研ぎ上げる)





棟側。
よれよれヘロヘロを真っ直ぐに修正。


刃側。


刃道も大まかに削り込んで補修した。


「堺てんま 別打」の刻印あり。




使用する砥石。今回は人造をメインに
仕上げる予定だ。


すべて手研ぎで研いでいく。


消滅していた鎬を手研ぎのみで
成形していく。整形ではなく成形。


















時間はかかったが、完成。
完全復活した柳刃だ。


むちゃくちゃ良く切れる。

ところが、最近恐ろしい事実を知った。
この個体は、せいぜい1970年代製かと
私は思っていた。
だが、この包丁は俺が生まれた頃には
あったのかと母に尋ねたら「当たり前
じゃない。私が結婚する前からあった
のだから」と言う。
この包丁は母が父と知り合った時には
もうすでに使われていた。
私の母が10代の頃から私の父方の祖父
が使っていたのだという。
それどころか、亡父の妹(叔母)の
話ではその戦後の時期ではなく、戦前
からこれは使われていた、とのことだ。
つまり、大よそ、最低で80年程の選手
だったということになる。

どうりでヘロヘロだったはずだ(笑)。
ところが完全完璧に復活させた。良い
包丁というのは100年使えるとは本当
なのだなと感じた。

私は新品の柳刃は買わないことにした。
霞だが、この柳刃を使って行く。
祖父は本職の包丁人ではないが、寄り
合いの時などは呼ばれて料理を作りに
出ていたらしい。その頃使われたのが
この包丁で、私で三代続いた包丁になる。
姿もなかなか良いと思う(私が再生
させたのだが)。鎬はビシッと立てた。
やはり、包丁は物置きの奥よりも、まな
板の上が似合う。


通じる手の内

2020年05月22日 | open
 












フライフィッシングのキャスティングは
他の釣りとは全く異なるロッドの使用の
仕方をやる。
それをやらないと軽い毛鉤は飛ばない。
 
そして、フライキャストではよく喧伝され
てきた嘘がある。
それは、「時計盤の10時から2時の間で
腕を振る」というものだ。
これでは円運動になりタイトで正確な
ループは物理的に作れない。正解は、
腕は水平移動で押したり引いたりする
動きをするのだ。ロッドの最先端は
円運動
はさせない。
 
似たような嘘が二つ世の中にはある。
それは一つはビリヤードの「膝から下を
振り子のように振ってキューを水平に撞
く」というものだ。振り子運動は円運動
なので、膝の真下に吊り下げたキューが
真っ直ぐ水平に振幅運動するなどという
ことは物理的にあり得ない。
なのにこの嘘はこれまで広くさも本当の
事のように喧伝されてきた。
 
もう一つの嘘は、刀法だ。
「刀を円運動で振るのが正しい」とする
事がよく言われる。
世迷言だ。
実際に打撃や斬撃をやらない人が脳内で
設えた妄想事である。
斬撃はギロチンのような刀の使い方をして
初めて「切れる」のだ。
円運動などしたらなで斬りになって刃先
に斬撃パワーを乗せられないし、切断は
一切できない。
引き切りなどはしてはならない。
敵の面の上に刀を投げて真下に鋭く叩き
落とすような心待ちと意識で刀は振るの
である。
体の各部の全てを使ってそれをやる。
刀術を知らない人が見たら、単に丸く円
運動で刀を振っているだけのように見える
が、腕に覚えあるできる人が見たら違いは
即座に見抜くことができる。
 
そして、剣に鋭い冴えをもたせる切り方
は、フライフィッシングのキャスティング
に非常によく似ている。
ヨーヨーのようなタイトなループを作る
ためには、力は用いない。
それでいて鋭いパッ!とした切れ味を発揮
することができる。
詳細は割愛するが、これにはテクが要る。
なので、「術」なのだ。
術は、鍛練により習得することができる。
ただし、正しい解析ができていないと、
かなりの遠回りをすることになる。
一人合点や我流、我田引水は全く以って
技術系の事柄はどんなジャンルでも本道
からは逸れてしまい、本質には近寄らな
くなってしまう。
極めが大切だ。極めの始まりは見極めか
ら。
偽情報を誤信しては本物が見えない。
また、誤認を認知したら、早期に己の
誤認を認める勇気と鋭意が大切だ。
それが前に大きく進む力となる。
 

写し物

2020年05月22日 | open


(ネットからの拾い物。私と私のフライ
フィッシングの師匠の山の管理人さん。
私は佐治武の剣鉈を左腰のベルトに差し
ている)

(このマス釣り人造湖のあるキャンプ場
は現在は廃業して廃墟となっている)

20世紀の最終年の平成12年-2000年-に
毎週通っていた行きつけの山で、私主催
による「鍛造刃物焼き入れ会」を行なっ
た。
私が希望者の望む形に予め鍛造鍛錬して
姿を作った焼き入れ前の素材を山に持ち
込み、そして移動簡易焼き入れ炉を使っ
て合宿の夜に焼き入れを行なうのだ。
刀身の適温を見るためには真っ暗でない
とならない。そのため深夜に焼き入れは
行なう。もしくは、鍛冶場の場合は暗幕
を張って手探りでないと前が分からない
ほどに真っ暗にする。
日中に明るいままで焼き入れはできない。
正確な鋼の温度を正しく捉えられない
からだ。これは鍛冶仕事の常識だ。鍛造
は日中でもいくらでもできる。

その焼き入れ会の時の参加者の一人に
現在私の同志盟友となる友人がいた。
もう20年の付き合いになる。
気づくと真剣刀法の武術までやるように
なっていた。元々は剣道の剣士だったが、
大会の試合会場にある日突然いたので
驚いた(笑)。これがまたできる。さっと
県大会優勝してましたよ。

その友人の職場の親友夫婦も焼き入れ
会には参加した。
その人の依頼で、私は写し物を頼まれた。
著名な土佐打ち刃物の鍛冶職が作る
剣鉈の写しだ。
寸分たがわず法量はフルコピーしたが、
きっかりと打つのは少し苦労した。
ただし、私の刃物は利器材や割込みで
はなくて無垢全鋼の折り返し鍛造なの
で、焼き入れの際の反りや歪みについて
は焼き入れ直後にできる限り修正は
するけど本歌のその土佐刃物とは全く
同じ形にまとまるかどうかは保証でき
ないよ、という前提を呑んでもらって
の写し物製作だった。
その本歌を作った作者は名跡跡目襲名
前のまだ30代の鍛冶だったが、今では
かなり有名な鍛冶師となっている。
あまり有名ではなかった頃にその人の
作に注目していた友人の慧眼には20年
後の今になって脱帽する。

深夜の焼き入れ会は有志6名で行なった
のだが、焼き入れ炭も私が適正寸法に
炭切りし、焼刃土も私が練り設えて
用意して臨んだ。
それと、手引書として私が焼き入れと
冶金に関する基本をまとめた小冊子を
配布して事前に読んでもらった。
焼き入れは一名の女子を除いて全員
一発で成功した。
女性は焼き入れの際に刀身を真っすぐ
に舟に突き入れることをせずに平で
入れてしまい、真横に刀身がへの字
に反り返ってしまった。
それはすぐに焼きなましをして鎚で
打ちなおして形を真っすぐに整え、
焼き均しをして残留ストレスを除去
したが、その夜は焼き入れができない
ので翌日の焼き入れとなった。
他の個体は、全部で8本焼き入れした
のだが、焼き戻しもうまくいった。
私が横で声をかけながらタイミングを
伝えて、参加者は全員自分で焼き入れ
と焼き戻しをした。
自分で焼き入れした刃物は、参加者
へのプレゼントのお土産となった。
参加費も材料費も無料で行なった。
一般公募参加ではなく、ごく親しい
友人同士のフライフィッシングの仲間
内の関係なので、食事会ご招待と同じ
感覚で私が招待者としてすべて用意
した。
逆にその晩の合宿の宴会食事はみんな
が私の分をもってくれてラッキー(笑)。
翌日は、早朝から皆さん粗研ぎに
いそしんでました。
全員がニコニコしていてとても良い
笑顔だったのが強く記憶に残っています。
実に心地良い空気と時間が流れていた。

数日前、ナイフのコンシールドタングに
ついて書いたが、フルタングにするほう
がやはり頑丈さという点においては勝っ
ているのは確かだ。
ただ、フルタングとコンシールドの
どちらが「実用的」かというと、何を
取るかで評価が変わってくる。
鍛造刃物は炭素鋼であるので、防錆上
はコンシールドのほうが勝る。
刀剣しのぎの新藤店長と私は、日本刀
の歴史考察で、日本刀は元来なかごに
錆付けをして防錆していたのではなか
ろうかという推測をしている。
これはどう見ても時代錆だけではない
ような錆色が古刀には見られるからだ。
大磨上の作や末古刀、新刀、新新刀、
現代刀のなかごを多角的に解析して精査
精査すると、ぼんやりとながらその推測
の根拠が見えてくる。
いにしえの実用時代の日本刀は柄の中
のなかごに予め防錆処理の黒錆付けを
していたのではなかろうか、と。
その類型は、現在でも黒打ち刃物や
大工道具の刃物、あらゆる和式刃物で
は防錆黒錆付けの技法として残存して
いる。

ただ、防錆処理をしない炭素鋼の場合、
フルタングにすると、使っていたらすぐ
にナカゴ部分=タング部分が出錆でボロ
ボロになってしまうでしょうね。

和式打ち刃物形式のブレード形状と
フルタングの組み合わせのこのナイフ
のシルエットデザインはかなり洗練され
ていて魅力的だ。
ただ、素の削り磨き地の炭素鋼では
これはできない。D2あたりでも出錆
が危ぶまれる。
やはり、この構造は、錆に強いステン
レス鋼という特殊鋼でないと実現は
現実的ではないように思える。
姿はめちゃくちゃかっこいいのだけ
どね。


家内に「見て見て。このナイフのデザイン、
とてもいいと思わない?」と言って昨夜
この画像を見せたら「作れば?」と簡単に
言ってのけた。
いや、スカンジではなくコンベックスに
すれば作るのは作れるだろうけど、鍛造
刃物がこの構造に適しているか否か、
どこまで防錆処理を施したとして防錆
を射程に入れた実用に耐えられるかと
いう問題があるんだよなぁ・・・。