渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

人間工学的モノヅクリ 〜TAD考〜

2023年03月01日 | open



TADキューには特徴がある。
TADを語る時、それはネットでは
殆ど語られているのを見た事がな
い。TADの歴史やデザインや撞球
特色について語られる事は多くと
も。
TADキューの最大の特徴。
それは、ハンドル部の細さだ。
これは、世界チャンピオンたちの
アドバイスを活かしてTADコハラ
が導き出した一つの答えかと思う。
一般的なキューよりもハンドル部
がかなり細いのだ。
この事は、二輪レーシングマシン
(レース専用設計の競技車両)の
ヤマハTZのグリップがとても細
いのと同じ目的だろう。
TZグリップは細い。
TZグリップを握ってから一般
道車両のグリップを持つと太さ
が判る。ハーレーに至っては牛
乳瓶のように感じる。
なぜスロットルをレーサーは細く
してあるのか。
それは、操作性の向上の為だ。
細いと扱いはシビアになるが、
シビアだからこそ細かく繊細で
広範にリニアな操作ができる。
鉛筆は細いがマジックペンは太い。
マジックインキペンの太さで勉強
したり絵を描く事は困難だ。
極端に言えば、その定理をキュー
に落とし込んだのがTADコハラの
キューの人間工学的なモノヅクリ
だった。

私のオリジナルキューはTADと
同じ太さにハンドル部を削り込
んで製作している。時間をかけて。


非常に操作性が高い。


TADコハラのオリジナルは、他に
もいろいろな工夫が詰め込まれて
いる。本当に良いキューだ。


コハラ製ではないこのキューは
大昔のマスプロキューだった。
バットハンドル部が異様に太かっ
た。


ハンドル部は私がカスタムして
TADと同じ太さまで削り込んだ。
結果、抜群の操作性を得た。


TADコハラのキューの特色。
それは、ハンドルが細い事。
二輪レーシングマシンのグリップ
と同じ理論によるものだろう。
後に、世界チャンピオンとなった
ジョニー・アーチャーがリリース
するスコーピオンキューは、ハン
ドル部を適正に細く設計したキュー
だった。TADに近い。
マスプロメーカーでは日本のMezz
がごく僅かにハンドルを細くして
いて、TADが初めて始めた操作性
向上定理の体現の手法に設計思想
を寄せている。

日本では宮本武蔵が1600年代
初期にそれに気づき、自身の刀
の柄を細くしていた。
武蔵は身長180cmと、当時とし
巨人なみの大柄な体格だっ
たが、刀の柄は細くした。
そこにこそ武蔵の慧眼がある。
一般的な凡人は、自分の手が大き
いからと柄を太くする。
だが、そうした私的観念を超える
一つの定理という物が世の中には
存在する。
それは、鉛筆は極太筆の太さでは
ない、という事がその内実を示し
ている。
キューや刀は服や靴ではない。
体格に合わせて太さのサイズを
変えるのか?という問題がある。
手の大きさによってシャフト先の
タップの大きさを変えるのか?
という事だ。
答えは否、である。
体格合わせとは別な運動理論が
存在するのである。
だが、TADキューを語る時、少
なくともネット上では、TADの
この最大たる特徴は語られない。
しかし、TAD遣いたちは日常的
言辞として語る。
「TADって細いよね」と。
現実のリアル世界とネット世界の
違いがそこにある。
今のインターネット情報などは
現実乖離の世迷い言で満ちている。

物理的な寸法としては、一般的な
キューのハンドル下端スリーブ上
端位置で凡そ直径が31ミリ。
太いキューだと31.5ミリ。
TADは29.5〜30ミリ。
その差は数値では僅かにミリ単位
の差だが、実際に握ってみると、
TADは明確に細さを感じさせる。


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