渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

磨ぎ、塗り 〜日本刀に似たキュー〜

2023年05月02日 | open
 

クリア塗りが乾いたら磨いで
行く。#1000〜#2000まで。
 
均し磨ぎをするとこのような
細かい削りカスが出る。


研磨して平らに均して、そして
また塗る。その為の最初の磨ぎ
段階。


磨ぎ出し工程では撫でるように
空磨ぎをする。優しく。


実に良い杢目だ。


カーリーとキルテッドの混ざり。
36年前の角材の時には全く分か
らなかった。


こちらは磨ぎ前のフォアアーム。
カーリーが出たメープルだ。


まるで日本刀の地肌のよう。


見れば見るほど日本刀。
カーリー部分は日本刀の映り
にも似ている。


このあたりは山城伝粟田口の
日本刀の地肌のようだ。
地錵(ぢにえ)が鱗のようにびっ
しりとつく作風の刀の肌目。
これは磨ぎ出し前の状態。

メープルの良肌のキューを私
が「撞球剣」と呼ぶ意味がご
理解いただけるかと思う。
複雑な杢目を見せるメープル
素材のキューは、肌目が日本
刀にそっくりなのだ。
今は真っ黒キューが大流行だ
が、こうした質感を持つメー
プルの材料を真っ黒に塗る
は、とても勿体ない。
 
スリーブのみ1回目の磨ぎが
終了。
また塗る。
それを何度も繰り返す。


塗り2回目。
砂吹きからの本塗装の1回目。
砂吹きは数回に分けて短時間
で行なう。


乾いたら磨ぎ出す。
何度も塗り、乾燥、磨ぎを
繰り返してクリアの層が厚
くなったら、最終的には軽
く水磨ぎをする。
それまでは優しく空磨ぎ。
 
クリアコートは塗りの技術も
大切だが、もっと重要なのは
磨ぎだ。
研ぎではなく磨ぎ。
機械を使った研磨ではなく、
指先に全神経を集中させて、
僅かなミクロン単位の凹凸
(おうとつ)さえも感知しなが
ら均して行くように撫でて
磨ぐ。
完璧に平坦になるように磨ぐ
のだが、足つけも兼ねる場合
の研磨と均しと磨きの三種が
あるので、それを使い分ける
ように手磨ぎをして行く。
 
それがうまく行くと、クリア
塗装はこのような仕上がりに
る。
今回、この時と同じ塗料を使
っている。
ウレタンではない。
 
今回1年ぶりにリペア塗装して
いる私のキューが出来上がっ
た頃の撞き。
6年前に完成した。
30年かけて(笑
材は東京下町の職人さんか
けて貰った江戸前の木材。
採れたのは北米東北部だが。

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