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日本刀を生かすも殺すも研ぎ
次第、とは巷間人口に膾炙さ
らて来た。
これは日本刀に限らず、鍛造
した鋼の刃物では同じ事がい
える。
600円で売られている全鋼の
安い肥後守でも、日本刀研磨
と同じ手法を用いたら、この
ような鋼の素顔を引き出す事
が可能だ。
研ぎ私。
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世の中、ナイフの研ぎは大抵は
ただ砥石でこするだけの研ぎが
一般的だ。
だが、鋼を使った刃物は、たと
え肥後守であろうとも、京都の
天然砥石を使って、突いたり引
いたりの技法を用いればこのよ
うな鋼の真の姿を浮かび上がら
せる事ができる。
肥後守でここまで日本刀研磨と
同じ事をやっている例は私以外
には見ないが(笑
手間だけやたらかかり、実用性
に乏しいので誰もやらないのが
その理由の一つだろう。
もう一つの理由は、一般の人た
ちは日本刀研磨の知識も技術も
無いので「できない」「やれな
い」のが理由だろう。
後者の理由に依る例が多いので
はなかろうか。
ただし、ナイフといっても、ス
テンレス鋼の削り成形や打ち抜
きのナイフはこうした地肌は出
ない。
これは素材の構造と質性による。
あくまで、鍛造した鋼の刃物の
みに熱変態の鋼の「働き」が
現れる。
現れてはいても、砥石でこすって
鋭利にするだけの研ぎでは、一切
この画像のように日本刀と同じ
素顔は見せない。
日本刀の研ぎとは、研磨の事で
あり、薄くさせて切れ味を良く
させる包丁やナイフの研ぎの目
的とは大きく異なる。
ただ切れ味のみを求めるならば、
日本刀とて名倉までの研ぎで
充分だ。
上掲の肥後守は16種類の砥石
を使用した。
金肌拭いはかけておらず、いわ
ゆる差し込み研ぎだ。
日本刀研磨のうちの古伝の技法
である。