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平砥石は平砥石と書く程で、砥石の研ぎ面
がビタリと全面平面が出ていないと平砥石
として使えない。
研ぐと砥石は減る。刃物も減るが砥石も
減る。刃物を濡れ砥石で押すと、砥石の
微細な粉と水分とが合わさり研磨剤とな
り刃物を削り、さらに刃物から出た削り
粉が砥石汁と混ざってさらなる研磨力を
持つ「研ぎ汁」となる。
力で研ぐのではない。科学的な原理で金属
は砥石によって研がれるのである。
さらに天然砥石は研ぎ汁が化学変化を誘発
して鋼に変化をもたらす。その特性を知悉
して、炭素鋼の場合には熱変態による素顔
の景色を引き出したり、伏せたりする事が
可能となる。これは天然砥石でないと科学
的に不可能だ。
成形や整形をしたり、ただ切れるように
研ぐだけならば天然砥石は必要ない。
しかし、炭素鋼の素顔が描く刀身の景色を
引き出すには、天然砥石以外には不能だ。
天然砥石で研磨するから、このような鉄
の素顔、本当の姿を肉眼で見えるように
することができる。これは低炭素鋼であ
ろうと、高炭素鋼であろうと、研ぎのやり
方次第で出せる。
(私の研ぎ)
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平砥石の場合は、平面を出す。
研磨の前や途中やあとに砥石を別の砥石
や研磨用道具を使って研いで平面を出す。
それを面磨りと呼ぶ。
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直線が出た定規等を使って計測し、コンマ
ミリたりとてゆがみやへこみがないように
平面を手作業で出す。
この作業はかなり時間がかかるが、これ
をやらずば、研ぎなどは出来ない。
水も漏らさぬようなピシッとした平面を
出してこそ正確な刃物研ぎは可能になる。
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