稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

No.39(昭和62年1月18日)

2019年01月30日 | 長井長正範士の遺文
川合月海先生は、日本保育協会、保育科学研究所所長であり、
私は以前から拝読しているが、少年剣道指導に当り、大変教えられる所多々あり、
特に「8秒間のスキンシップ」こうすれば子どもの“やる気”がひき出せる。
という本(学校法人広池学園出版、昭57年9月初版発行、その後再三発行されている)は
なるほど、と感じられ、教えられたので、次に大事なところだけ更に要約して書いておきたい。

尚、この中の“やる気”の要点は去る昭和59.6.9、昭和60.6.8の二回にわたり、
全剣連主催の少年剣道指導法の講師として大阪修道館でお話申し上げたが
大切な事と思うので敢えて転記しておきたい。



○親は、一日も早く子供に知識や技術や、正しい生活習慣などを身につけさせようと願い
“覚えなさい、練習しなさい”とあせり、急がせるところがあるものですが、
このような形で触れていると、子供から、かえって“やる気”を奪い、
子供の中の“やりたくない”“するものか”等という反対の心を作ってしまう。

これはすべて生きものは楽しいものだけを求め、
楽しくないものから逃げようとする心を根本的に持っているものなのに、
相手の気持ちを考えないで、支配、命令、禁止、強制という形で触れるため
“楽しくない、不自由だ、うるさい”等、不快さが起こり、それが怒りの心までも作り、
やる気をすっかりそぎ落してしまうのである。

子育てとか、教育とかいうものは、親や先生が、ああしなさい、こうしなさいと、
ものごとを覚えさすことではなく、たった一つ、子供の中に“よしやって見よう”
といったやる気を大きく作り伸ばすようように援助することである。

そして、そのやる気は初めに書きましたように、
楽しさ、自由さ、面白さという三つの条件がないと絶対に大きく伸びられないので、
子供自身に、楽しいな、自分の思う通りに出来た、面白かった、
などという満足する気持があれば、子供は、もっとやりたい、
今度はこう工夫してみよう、もっと面白くならないか、と、
そのものごとに何度でもぶつかっていき、それを繰返すうちに子供は次第に知識を増やし、
技術を磨き、人と人との調和の仕方や、人間の世界にある、いろいろな約束ごと、
といった大切な知恵までも身につけてゆくものである。

世間でよく「うちの子は親が何か言わないと動かない。
本当にやる気が無いんだから」などと恨みごとを言っている親を見かけるが、
これはとんでもない見当違いである。

子供はもともとやる気の固まりであったのを、親の方が触れ方を間違えて、
子供のやる気をすっぽりそぎ取ってしまったのであるから、責められるのは子供の方ではない。
自由で、楽しく、面白いというやる気を大きく伸ばしていくためには
第二回の構造の矢印の方向に親の触れ方を進めていけばよいのである。

この図の原則は、すべての人間に当てはまると思う。

(注)スキンシップ
皮膚関係という意味の新造語で、母親の愛情が子どもに伝わるためには、
皮膚の接触関係を通じてでなければ成就(じょうじゅ)されないことを強調したことば。
即ち、母親の子に対する皮膚の接触を愛を言う。

○次に大事なことは親の笑顔が“やる気”の源泉であるということ。
子供に楽しさを与えるのはオモチャではないか、すばらしい音楽じゃないか、
色あざやかな絵本ではないか、おいしい食べ物ではないか、などと親は単純に
(この項つづく)
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