く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<クサノオウ(草の王、瘡の王)> ケシ科の鮮やかな4弁花

2018年06月07日 | 花の四季

【毒草・薬草、タムシグサ、イボクサなどの別称も】

 ケシ科クサノオウ属の越年草で、全国各地の日当たりのいい道端や土手、草地などに生える。5~7月頃、直立した高さ30~60cmの茎の先に、径4cm前後の鮮やかな黄色の4弁花を付ける。茎は中空で、葉は羽状に深く裂ける。同じケシ科のヤマブキソウの花によく似るが、こちらは5弁花で樹林下などの半日陰を好む。

 全草にケリドリンなどのアルカロイド成分を含む毒草だが、鎮痛作用や知覚神経を麻痺させる作用があり、古くから薬草として利用されてきた。かつては痛み止めとしてアヘンの代わりに使われたこともある。漢方名は「白屈菜(はっくつさい)」。貝原益軒は主著『大和本草』(1709年)の「白屈菜クサノワウ」の項で「茎葉を折れば黄汁いづ 味苦し 今俗に草の王と云 よく瘡腫を消す その葉をもみてつくる 妙薬也」と記す。

 クサノオウの名前の由来にはこの中にある「草の王」のほか「瘡(くさ)の王」「草の黄」など諸説ある。それぞれ薬草の王様、瘡(皮膚病)によく効く薬草、黄色い乳液を出す草から。古くから皮膚病を治す薬草としてよく用いられたことを示すように、クサノオウには「田虫草(たむしぐさ)」「疣草(いぼくさ)」「皮癬草(ひぜんぐさ)」など皮膚疾患に因む別称や方言が多い。

 かつては胃がんの治療薬として用いられたこともあった。『金色夜叉』で有名な明治の文豪、尾崎紅葉(1868~1903)は晩年、胃がんを患って苦しんだ。そのとき門下生たちが薬効があると信じられていたクサノオウを求め手分けして探し回ったという。泉鏡花はその顛末を随筆『白屈菜記』(1903年)に書き記している。

 クサノオウは種子をアリに運ばせて分布域を広げる〝アリ散布植物〟としても知られる。種子にはアリが好む「エライオソーム(種枕=しゅちん)」と呼ばれる白いゼリー状の脂肪塊が付着しており、アリは巣に持ち帰ってこれを食べ、種子本体は巣の近くに捨てられる。国内ではアリ散布植物が他にスミレ、カタクリ、ニリンソウ、フクジュソウ、ヤマブキソウ、ツリフネソウなど200種ほど確認されている。

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