【縄文~室町時代の31遺跡の出土品約450点!】
奈良県立橿原考古学研究所付属博物館(橿原市)で夏恒例の発掘調査速報展「大和を掘る」が開かれている。38回目の今年は2022年度に発掘調査が行われた県内13市町村・31遺跡から出土した約450点を一堂に展示中。馬の絵が書かれた井戸枠、国内最大級の子持ち勾玉(まがたま)、用途が不明な土製品など注目を集めそうな出土品も並ぶ。9月3日まで。
2022年度に最も話題を集めたのが国内最古・最大の蛇行剣(保存処理中)が出土した富雄丸山古墳(奈良市)。会場内ではこの古墳の円丘部南東側から出土した湧水施設形の埴輪を、独立したガラスケース内で展示している。水の祭祀に関わるものとみられる。同古墳を紹介する別のコーナーでは盾形埴輪や管玉、鍬形石などの出土品も展示中。
京奈和自動車道奈良IC開発に伴う平城京左京六~八条・一~三坊(奈良市)の発掘調査では墨書で馬の絵を描いた板が見つかった。1頭の馬が生き生きと描かれており、井戸の枠材として転用されたとみられる。大型動物の骨なども出土した(下の写真)。当初は馬の骨とみられていたが、専門家に調べてもらったところ牛と判明した。平城京で馬のほか牛も利用されていたことを示す貴重な遺物だ。
平城京南方遺跡(奈良市)からは奈良時代の瓦窯1基が出土した。調査地北側にある五徳池が古い文献に出てくる越田池と考えられることから、長屋王邸北側の側溝から出土した木簡に記された「越田瓦屋」の一部と推定されている。
史跡東大寺旧境内の第194次調査では、鐘楼周辺から「大佛餅」と書かれた赤膚焼の皿や茶碗が見つかった。昭和に入って焼かれたものとみられる。かつて鐘楼近くには茶店がいくつもあったという。大仏殿の基壇北辺部からは奈良時代の基壇の規模を示す石敷き遺構を検出した。
中遺跡(五條市)からは鎌倉前期の青銅製の印章が見つかった。県内の出土古印としては7例目、銅印としては3例目。印文は篆書体で「市」とも読め、有力な家・人物の私印とみられる。
狐井(きつい)稲荷古墳(香芝市)は墳丘長約80mの前方後円墳。これまでに出土した土器片などから5世紀後半ごろに築造された狐井丘陵で最初の古墳であることが分かった。この古墳からは日本最大級の子持ち勾玉も見つかっている。大きさは長さ13㎝、幅10㎝、厚さ5.5㎝。小さな突起の子勾玉が10個付いている。
櫟本辻子(いちのもとずし)池上遺跡(天理市)では名阪国道北側の丘陵に挟まれた岩屋谷から、古墳時代中期~後期の礫敷き流路が見つかった。ミニチュアの土器や木製品が多く出土しており、祭祀遺跡の可能性が指摘されている。
鴨都波(かもつば)遺跡(御所市)ではこれまでの出土品の再整理中に、用途不明の土製品があることが分かった。長さ33㎝、幅8cm、厚さ2㎝の扁平な棒状で、一方の端部分はY字状に口を開けたような不思議な形状。古墳時代前期の埴輪や中期の須恵器などとともに出土した。「用途が分かった方はご一報ください!」。説明文にこんなお願いが添えられていた