【山車のからくりも、旧東海道の町並みに人の波】
絞り染めで有名な名古屋市緑区有松町で、6月2~3日「有松絞りまつり」が開かれた。主会場は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている名鉄有松駅南側の旧東海道の古い町並み。絞り技法の実演や体験実習、新作の展示、山車のからくり披露、町並みツアーなど多彩なイベントが繰り広げられ、通りを埋め尽くすほどの人出でにぎわった。
絞り染めはインドから中国を経て日本に渡ってきたといわれ、正倉院や法隆寺に伝わる布の中にも絞りを施したものが見られる。有松絞りは江戸時代、尾張藩が特産品として保護・育成したことから活況を呈した。旧街道沿いには往時の繁栄ぶりを映すように今も重厚な商家などが軒を連ねる。有松は歴史的な町並みの保存・再生に取り組む「全国町並み保存連盟」の発祥の地としても知られる。
絞りまつりは今年で34回目。有松絞りの特徴は100種を超える多様な技法と作業工程の分業制。会場に数カ所設けられた実演コーナーでは、模様を作る〝くくり〟を実演する女性たちの手元を通り掛かった人たちが食い入るように見つめていた。往時の絞り問屋の伝統的な建物として市指定有形文化財になっている竹田家住宅では、オードリー・ヘップバーンを描いた絞りの作品や女優の吉岡里帆さんが昨年のNHK紅白歌合戦で着用したという着物も展示されていた。
人気を集めていたのが〝手蜘蛛絞り〟の手拭い・ハンカチを作る体験実習コーナー。この手蜘蛛絞りは糸を巻き上げて絞り、染め上がった形がクモの巣に似ていることからこう呼ばれる。1人1000円、所要時間約30分ということだが、希望者で長い行列ができていた。そのそばでは女の子が自分の作品を大切そうに干していた。有松山車会館では海外の絞りアーティスト11人による「YUKATA展」が開かれていた。6月27日~7月1日に名古屋市で開かれる「第11回国際絞り会議 in Japan」の併催事業という。古い商家などの前では絞りの衣装をまとった男女をモデルに写真撮影会も開かれていた。
有松では毎年10月の「有松天満社秋季大祭」のときに3台の山車が曳き回される。絞りまつりに合わせこれらの山車も展示され、西町の「神宮皇后車」では皇后が鮎を釣って神意を占ったという故事に因むからくり人形の実演が行われた。東町の「布袋車」は四方を飾る大幕(1812年製作)の劣化が激しいため、今秋の大祭が見納めになるとのこと。大幕は今後12年がかりで新調されるそうだ。