大学生活4年間をサポートしてくれたお礼にと、嬉しいことに娘が1泊旅行に連れて行ってくれた。ボーンマスから西へ続く海岸線約160キロはジュラシック・パークならぬジュラシック・コーストJurassic Coast と呼ばれ、1億8500万年前のジュラ記の古い地層の中からは恐竜以前に存在した生物の化石がみつかる。娘はこのコーストに魅了され、何10キロもハイキングしながらキャンプして絵を描く、ということを在学中に何度かしていたようだ。彼女の卒業制作の銅版画シリーズもここの断崖や化石をテーマにしたもので、万人受けはしない個性的な代物。
この美しい海岸線の中でも彼女の一番のお気に入りの町、ライム・リージスLyme Regis にどうしても私を連れて行きたかったようだ。二階建てバスの二階、一番前の席に陣取り、こんな景色 ↑↑ を楽しみながら3時間の旅。
坂の町ライム・リージスの中心は海岸周辺、住宅は坂の上に広がっている。19世紀初頭の女流作家ジェーン・オースティンはこの町に滞在中に小説『説得』を書いたそうで、彼女の名前を冠した公園が海岸沿いにある。またメリル?ストリープ主演の映画で話題にもなった小説『フランス軍将校の女』もこの町が舞台だということを知った。1811年に、この町に住む女性化石ハンターがジュラ紀に全盛だった魚竜イクチオサウルスの完全な化石を見つけたことから一躍化石の町として有名になったそうだ。町の街燈もアンモナイトの形!
B&Bに荷物を置き、サンドイッチ・ショップで蟹サラダのバゲットサンドと、イギリスの青カビチーズのスティルトン、セロリ、リンゴ、トマト、ルッコラの入ったサンドイッチを作ってもらって海岸でピクニックランチをすることにした。イギリス人は蟹みそを食べるんだよね。brown meat と言うのだけれど、蟹サラダには白と茶色の蟹身が両方混ざっている。アメリカ人は蟹みそを嫌がるので、ちょっと驚きだ。イギリスのパンは概して柔らかい。バゲットと言っても形がそうなだけで、本場フランスのバゲットとは全く違う柔らかいパンだ。パブでビールを買ってきて砂浜に座り、さあ食べようとしたらカモメがサンドイッチをかっさらいに急降下してきた。ギャッと叫びながら身体でブロックし、セーフ。ボーンマスでもここでも毎朝カモメの声で目が覚めたのだが、うるさくて厚かましくて、カラスと同じで全く可愛くない。スティルトンチーズのサンドは組み合わせが絶妙で大変美味しかった。これはキッチン・マーレでもまた紹介しよう。
夕方、娘の大学にゲスト・アーティストとして来て以来娘に目をかけてくれているこの町在住の女性アーティストのフランが、ワインを飲みにおいで、と自宅に呼んでくれた。子供達のためにロンドンから移ってきた彼女の家は、藁ぶき屋根の古民家を改装したもの。私好みのインテリアや照明で一杯、溜息が出てしまう。
夕食は、町で一番美味しいと評判のレストランを娘が予約してくれていた。フランお勧めのフィッシュ・スープとクラブケーキ(蟹のハンバーグのようなもの)はもちろん、あとカニ身を巻いた平目のクラブ・ビスク・ソースかけも注文した。フィッシュ・スープ、チャウダーっていうと普通は残り物の魚介を処分するのに格好の料理ともいえるのに、この店のスープに入っていた魚介はものすごく新鮮で感心した。さすが評判が良いわけだ。ただクリームが濃厚すぎて一人では食べきれないね。
翌日は残念ながら土砂降りの雨、そして寒い!ひどい天候続きの環境にいると、前日が晴れていてラッキーだったね、と過去形ポジティブ思考ができるようになってきたよ。町の歴史博物館で化石について学びながら雨が上がるのを待っても雨脚は強まるばかり。Beer という隣村までバスに乗ってランチを食べに行くのは断念し、ジェーン・オースティン公園内のレストラン(写真右端)に行ってみることにした。灰色の入り江cove をみながら遅いランチに舌鼓。
意外やロンドンの有名シェフの店だっただけあり、非の打ちどころのないプレゼンと味。スモークサーモン・パテ、トマトと蟹のサラダ、そしてsand eel のフライ。sand eel ってもしかしてドジョウかな??て思ったら、イカナゴだった。ちなみにドジョウはweather fish というらしい。
この食事からは私が支払おうと思ったのに、この町にいる間は自分が払うよ、と娘は太っ腹。毎回ビールやワイン付きでありがとう!
帰りのバスは雨で窓ガラスがすっかり曇って景色なんてなんにもなし。前日居眠りせずに堪能しておいて良かった!また positive thinking できたよ。