いよいよ明日ロンドンに戻る。日本滞在最後のブログは和食について書こうと決めていた。そしたら数日前、和食がユネスコの無形文化財に選ばれたという。そう、和食は日本の食材と日本人の知恵、美的感性が見事に融合した産物だと思う。
帰国中色々な料理を食べたが、欧米料理には以前ほど惹きつけられなかった。イタリアン、フレンチ、スパニッシュ、どこも同じようなものしか出さないから。今のロンドンには、レストランビジネスへの投資資金とともに、腕の良い優れたシェフも世界中から集まってきている。だから日本人の「イギリスはまずい!」という先入観とは裏腹に、あちらでセンスの光る美味しい料理をたくさん食べてきた(ま、いまだロンドン外ではまずいかもね)。そのせいなのか、日本の欧米料理は所詮モノマネの域を出ないから物足りない。そりゃ超高級店に行けば話は違うんだろうけど。
そういうわけで、滞在中の後半はほぼ和食三昧。その中でも特に気に入った神戸の和食店を二軒紹介しよう。どちらも夜しか営業していないが、美味しいので何度も通ってしまった。
南京町のはずれにある鶴のひとこえは、食べログでいつも高得点を取っている。2年ほど前からずっと行きたかったのに予約がなかなか取れず、ようやく今回行くことができた。
高級居酒屋というのか、居酒屋のイメージが変わる目新しいメニューがここには一杯ある。新鮮な魚介はもちろん、野菜料理も豊富だ。カウンターに座ると、調理法を一から見ることができる。ほとんど下準備をしていないようで、茄子と海老のあんかけを注文したら、まず茄子を切るところから始まった。↑この料理は予想外の姿で出て来た。揚げ茄子に海老のあんかけがかかってるものかと思ったら、とんでもない。ごはんにかけてもいいんじゃないかっていうような野菜たっぷりのあんかけ料理。
↑穴子ともち米の茶巾蒸しなんて、見事なコラボ。↓温野菜の豆乳ソースかけも彩りが実にきれいだ。里芋とたこの煮物はびっくりするほど柔らかく、たこと海老のぬたも色々な野菜が入ってる。
器も味があり、お酒がすすむ。大将のそっけなさをとても感じのいい女将のサービスがカバーしている店だ。
北野坂のふもとの路地に佇む音音(ねね)はまさに隠れ家レストラン。ワインと和食がコンセプトの店だ。L字型カウンター席しかない店だが、その中の調理エリアは黒いおくどさん風に仕上げてある。
店の外のガラス壁には水が流れているのだが、カウンターの上にも水を流していて、とても落ち着く。
魚も肉も、何を食べても美味しい。アラカルトもいいが、色んなものが楽しめるコースがオススメ。
吉兆出身のシェフがいるのかな?と思わせる正当派和食で攻めるだけでなく(聞いたら一人はそうだった)、蟹とカブラのスープや赤ヤガラなんていう珍魚を使った料理が洋風のプレゼンテーションで出て来たり、フォアグラの茶碗蒸しなんて絶品。わって驚くような料理を次々と出してくれる。
ワインリストもヨーロッパとニューワールド(アメリカ、オーストラリア、南米、南アフリカ)を網羅していて、グラスで注文できる本日のワインの種類も8種類ぐらいはあり、ワイン好きを楽しませてくれる。
豚肉のグリル↑と神戸牛のいちぼステーキ↓
コースの〆には、今日の魚の漬け丼、烏骨鶏の卵かけ御飯、鯛茶漬けの中から一つ選ぶ。どれも捨てがたく、運良く三人だった時は3種類ともオーダーして回し食べしてしまった。どれも美味だったよ~。肩肘はらずにレベルの高い和食とワインが楽しめる音音。この秋一番のみっけものだった。また来年帰ってきたら、お邪魔します。ごちそうさま!
それでは、次回は冬のロンドンからのお便りということで。お騒がせし、お世話になった皆さん、どうもありがとう。いってきまーす!