十王図一堂、永源寺の書画展示 東近江で重文含む68点
全11幅が一堂に会した「地蔵十王図」(東近江市五個荘竜田町・観峰館)
臨済宗永源寺派大本山永源寺(滋賀県東近江市永源寺高野町)を開山した寂室元光(じゃくしつげんこう)の650年遠諱(おんき)に合わせ、同市五個荘竜田町の「観峰館」で、特別企画展「永源寺に伝わる書画」が開かれている。寂室の墨跡など重要文化財28点を含む同寺所蔵の68点を展示している。
永源寺は南北朝時代の1361(康安元)年、近江守護の六角氏頼が、中国で修行した名僧寂室元光を開基に招いて創建したとされる。寺が保管している南北朝時代から明治時代までの記録などをつづった「永源寺文書」は、2002年に重文に指定されている。
同館に昨年、展示品の温度や湿度調整ができる新しい展示棟が完成したことから、地元の優れた文化財を知ってもらおうと企画。展示は前期、後期に分かれており、現在は後期展(20日まで)が開かれている。
会場でまず目に入るのは、寂室直筆の墨書「永源寺」(南北朝時代)。氏頼の法名「崇永」と「近江源氏」から取ったとも伝わる山号を、威風堂々とした楷書で記している。
「華蔵寺宛消息」は、寂室が親しい京都の住職に送った書状。同館の寺前公基学芸員は「普段の寂室の字がよくわかる。六角氏頼が下向していたことを知らされず『恨み入る』などと記され、人間くささを感じる面白い作品」と評する。
後期展最大の目玉は、元時代の中国で描かれたとみられる「地蔵十王図」。仏教において、亡者が裁きを受けるとされる閻魔(えんま)王ら10王と地蔵菩薩(ぼさつ)が審理にいそしみ、亡者が拷問を受ける様子が描かれている。11幅が一堂に展示されるのは非常に珍しいという。
永源寺中興の祖、一絲文守(いっしぶんしゅ)の書や、井伊直弼が参詣した際に秋の紅葉にも劣らない新緑の美しさを詠んだ和歌、同寺を祈願寺としていた足利義満が記した三河国の末寺「天恩寺」の山号など、寺にゆかりのある僧侶や武将らの書画も多数並び、永源寺の歴史と影響力を感じられる。
20日まで。月曜休館。入館料千円(高校生以上800円、中学生以下無料)。19日午後1時から、学芸員による講座(500円、要申し込み)もある。観峰館TEL0748(48)4141。
【京都新聞 2016年11月13日 22時00分 】