「就業規則がお店を滅ぼす」(黒部得善)読了。
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社会保険労務士の重要な仕事に「就業規則を作成する」というものがある。
けっこう値段も高い。
(作成する側にとっては「売上」が大きい。)
しかし、お客様にとって本当に高い金を出すに値するものなのか?という疑問が
個人的にはあった。
「従業員が10人以上になったから届けなければ」というケースは多いし、
作っても実際には従業員さんに説明もしていなければ見せてもいない、というケースも
少なくないだろう。
社会保険労務士としては「頂いたお金に見合う」ように
リスク軽減できる就業規則を詳細に作り込もうとするのだが、
あまりに詳細なために、現実には経営者も従業員さんも見ないし
理解できない、という結果に陥っていたりする。
経営者も従業員さんも、就業規則を読んで理解するのが本業ではない訳で。
# 「これだけは理解して欲しい」簡略版を
別に作るケースもあるとは思うが。
そんな「就業規則」に対する疑念や不安などもあり、
刺激的なタイトルのこの本を手に取ってみた。
タイトルは刺激的だが、
内容はそこまで異常なことを言っている訳ではない、というのが個人的な感想。
就業規則のメインは「リスク管理」「経営者が従業員を統制するルール」なので、
就業規則から入るとどうしても経営者と従業員は対立するものである、
という「労使関係」になりやすい。(これはこれで一つの現実ではあるのだが)
しかし、特にお店では経営者と従業員が同じ方向を向いて
商売やお客様へのサービス提供に邁進しなければならない。
そのためには就業規則を中心に据えた労務管理は不適切ではないか。
就業規則はあくまでも労務管理の一つのツールであり、
就業規則以外にも労務管理で必要な事項、
お店を良くするために重要な事項はある、というのが全体の基調。
就業規則だけでない労務管理について具体的に書かれており、有意義な本だと思う。
章立てが
「社長が説明でき、皆が納得できる給与の払い方」
「新入社員もアルバイトも長く生き生きと働ける指揮命令のあり方」
「分かりやすい言葉でスタッフを一丸にまとめるルールの作り方」
「知らないうちに人を酷使してしまわないリスク管理の方法」
となっており、
これも経営者が労働者のため、お店のために留意する事項が
上手く挙げてられている、と感じた。
以下、個人的に参考になった部分を挙げてみる。
□店舗型ビジネスの労務管理の要諦は
「会社や店の目標に合わせて、店長が指揮命令しやすい仕組みをいかに作るか」
□「指揮命令しやすい仕組み」は規模や業態、社歴によって違うし、
店や会社の成長に従って変えていかなければならない
その際に
・地理的距離
・役職的距離(世代間ギャップも含む)
・契約的距離
という3つの距離を最初に認識するべき
□給与を払う意味を明確にしてスタッフに伝える
□採用したスタッフがすぐに退職するケースが多い場合、
・面接の仕方
・初日の受け入れ
・入社後のコミュニケーション
を確認するべきである
□モチベーションの向上のために、
まずその人の「やる気のスイッチ」を把握することが必要である
例えば大きく9つに分類する方法がある
□多過ぎるルールはルール違反の横行を生み、
社員の不満を募らせ、反発を生む
□経営理念を明文化・共有することが必要である
経営理念には
・経営者の心や行動を支える
・経営者や店長による指揮命令の根拠となる
という二つの役割がある
□会社の「常識」を整理し、「作る」「作り続ける」必要がある
□職場の働き方のルールが明確であり、
スタッフが自分の将来像をきちんと描けるような環境が
社員の「安心」につながる
□解雇がトラブルに転じるのは
・堪忍袋の緒が切れて解雇する
・問答無用で解雇する
のいずれかである
□過労死を生まないために残業時間の実態を知ることが近道である
・週単位で残業時間とその連続性を把握する
・実質の拘束時間を把握する
□人件費率から店舗とスタッフの状況を把握するポイントとして
・リスク
・教育
・チームバランス
の3つがある
□「会社を主語にして」スタッフと向き合っているか?
「会社を主語にする」とは理念や戦略を定めて、
すべての仕組みをそれに合ったものにすることである