人で賑わう
公園も
ひとたび
桜空を
見上げれば
其処は
静寂の彼方
井の中の蛙
ならぬ
樹々の中の迷い子
のよう
桜が
愛される理由は
そこはかとなく
美しく
そこはかとなく
幽玄だから
桜の木の下には
屍が眠る
そう記したのは
梶井基次郎
だったかしら
叶わぬと
あきらめ
散った
たくさんの
願いも
一度
土に還ったのち
こうして
継がれているの
だろうか
だれかの
哀しみのうえに
成り立つ
幸福を
噛みしめると
苦みが
先走るのは
気のせい
だろうか
幽玄なる美しさに
見惚れて
そう
花弁一枚ほどの
想いを
置き忘れてきて
しまったような
それは
大切な記憶のような
叶えたかった
ユメノカタチのような
はっきりと
させたいコトなんて
ほんとうは
ひとつも
なかったのかも
しれない
桜色舞うころ~中島 美嘉~
桜色舞うころ
私はひとり
押さえきれぬ胸に
立ち尽くしてた
若葉色 萌ゆれば
想いあふれて
すべてを見失い
あなたへ流れた
めぐる木々たちだけが
ふたりを見ていたの
ひとところにはとどまれないと
そっとおしえながら
枯葉色 染めてく
あなたのとなり
移ろいゆく日々が
愛へと変わるの
どうか木々たちだけは
この想いを守って
もう一度だけふたりの上で
そっと葉を揺らして
やがて季節(とき)はふたりを
どこへ運んでゆくの
ただひとつだけ 確かな今を
そっと抱きしめていた
雪化粧 まとえば
想いはぐれて
足跡も消してく
音無きいたずら
どうか木々たちだけは
この想いを守って
「永遠」の中ふたりとどめて
ここに 生き続けて
めぐる木々たちだけが
ふたりを見ていたの
ひとところにはとどまれないと
そっと おしえながら
桜色 舞うころ
私はひとり
あなたへの想いを
かみしめたまま