1匹の魚が
おりました
にじいろの鱗を
持った
他にはない
美しい魚です
でも
仲間がいませんでした
他の魚たちは
みな
岩場や
海藻と
見間違うくらいに
平凡な色合い
でしたが
みな
群れをなしては
愉しげに
泳いでいました
にじいろの魚は
羨ましいような
キモチにも
時々なりました
「あなたたちの色を
ワタシも
真似するから
仲間に入れてよ
ねぇ イイでしょう?」
そう
嘆願すると
他の魚たちは
「お安い御用さ!
じゃあ今日から
キミはぼくたちと同じ
緑色の魚に
なってね」
そう云って
群れの一番後ろに
つくように
いいました
好奇心と
仲間が出来た
嬉しさで
グルグル
泳ぎ回った
にじいろの魚
でしたが
しばらくすると
飽きてしまいました
それから
赤い魚の群れ
黒い魚の群れ
と
次から次へと
仲間に入れては
もらったものの
結局は
何処も
どことなく
自分の場所では
ない
ヒトリよりも
淋しい場所
でした
「ワタシやっぱり
あなたたちの仲間に
なれないわ。
たった1色で
生きるなんてムリよ」
自分から
お願いしたものの
にじいろの魚は
そう
詫びて
また
ただ
1匹で
泳ぎ続けました
ある日
「おーい」
と
ずっとずっと
上の方から
にじいろの魚を
呼ぶ声が
聴こえてきました
目を細めて
見上げると
そこには
にじいろの魚と
同じ色を持った
おおきな橋が
架かっていました
「ごきげんよう!
ワタシと同じ色の
あなたは
だあれ?
きっと
ワタシたち
一緒に
泳げるわ
だって
同じ色ですもの!」
そう
にじいろの魚は
手招きしてみたけれど
おおきな橋は
ニッコリ笑いながらも
首を横に
振りました
「ボクは 虹
このおおきな空が
住むところなんだよ。
残念ながら
キミのところへは
行けないよ。」
おおきな橋も
手を振って
答えました
すこし残念な気もしましたが
にじいろの魚も
決して
おおきな橋のところへは
行けません
だって
生きるための
水が
時々しか
無いんですもの!
「傍には行けないけれど
あなたがそこに居てくれるだけで
淋しくなんかなくなったわ!
ありがとう!
息苦しくなったら
時々
見上げていいかしら?
そこに
仲間がいるって
強いキモチに
なれるから!」
にじいろの魚の
お願いに
おおきな橋も
ニッコリ
微笑みました
「それぞれの場所で
ボクららしく
輝こう!
ボクも淋しくなったら
キミの泳ぐ姿を
見守るからね」
そう云って
ちいさく手を
振り合いました
サヨウナラ
ではなく
またね
の
合図です
いつか
空に
虹が
架かっていたら
その時には
水の中も
覗いてみませんか?
同じ色合いの
にじいろの魚も
きっと
一生懸命に
泳いでいる筈ですから
それぞれの場所で
今度
生まれ変わったら
お互いに
相手と同じ場所に
生きたいな
そんなふうに
どちらも
想い合っているなんて
これっぽっちも
気付かないくらい
そう
一生懸命
に