初期人類 南アの猿人 化石調査
[ワシントン共同]アウストラロピテクスなどの初期人類は、女性は生まれた群れを離れて移動する一方で、男性は一ヵ所にとどまる傾向があったとする研究結果を米コロラド大や英オックスフォ-ド大などの研究チ-ムがまとめ、2日付けの英科学誌ネイチャ-に発表した。 チンパンジ-やボノボ以外の霊長類には見られない行動で、人類は200万年以上前から、花嫁を迎えるような特性を持っていた可能性を示すという。研究グル-は、南アフリカの洞窟で発見された約240万~170万年前の猿人のアウストラロピテクス・アフリカヌスと、バラントロプス・ロブストスの計19体の歯の化石を調査。化石に含まれる放射性ストロンチウムの同位体の割合を分析した結果、歯が小さく女性とみられる9体のうち、5体は数㌔~数十㌔以上離れた場所から移住してきたとみられ、男性は10体のうち1体だけだった。
岡山大など 英科学誌に掲載
光合成の最初に起こる反応で、太陽光で水が分解されて電子や水素イオンが作られる際の触媒となる「膜タンパク質複合体」の詳細な構造を、岡山大の沈建仁教授と大阪市立大の神谷信夫教授のグル-プが解明した。成果は英科学誌ネイチャ-電子版に18日、掲載された。グル-プによると、水から燃料電池で使う水素を作り出すことにつながり、太陽光の電気エネルギ-への効率的な変換が期待できる。膜タンパク質複合体は「光化学系Ⅱ複合体」と呼ばれ、自然界で光合成をする藻類や植物の葉の中に含まれる。これまで19種類のタンパク質が水分子と複雑に結合している全体構造は明らかになっていたが、原子レベルでの詳細な構造は分かっていなかった。
東北大教授ら発表 翼は親指、人さし指、中指
ニワトリの翼に存在する3本の指の骨は、ヒトの場合の親指と人さし指、中指に相当し、祖先とされる恐竜の獣脚類の前脚と同じ形態だとする研究成果を、田村宏治東北大教授(発生生物学)らのチ-ムがまとめ、米科学誌サイエンスに発表した。 従来、鳥類の指は人さし指と中指、薬指の3本と考えられており、獣脚類から進化したとする説では説明がつかない矛盾点として残っている。今回の発見は、この矛盾を解消する成果。チ-ムは「鳥類の恐竜起源説の正しさを支持する決定打ともいえる」としている。 鳥類は四肢動物に属し、翼が前脚に相当、指の骨が3本ある。一方、獣脚類は前脚に5本の指があったが、進化の過程で薬指と小指が退化。3本の指となったことが化石から分かっていた。チ-ムは、卵の中でニワトリの指が形成される過程を3本のうち最も外側の指に着目して詳しく調べた。指のもととなる軟骨が、初期には薬指の位置にあるが、発達とともに次第にずれ、どの指になるかが決定する段階では中指の位置に移動することを発見した。さらにこの指は、マウスの中指の作られ方と一致することも判明。3本は中指と、人さし指、親指と判断した。
岡山大グル-プ 女王フェロモンの成分特定 駆除薬開発に可能性
シロアリの女王が分泌し、ほかの雌による産卵を妨げている「女王フェロモン」の成分が、2種類の果物のにおいであることを突き止めたと、松浦健二岡山大准教授(社会生物学)らのグル-プが米科学アカデミ紀要に発表した。シロアリは、木造家屋などを食い荒らす嫌われ者となっている。グル-プは、このフェロモンの人工合成にも成功しており、効果的な駆除薬開発につながる可能性があるという。グル-プは、日本で最も一般的なヤマトシロアリの女王200匹を容器に入れ、回収したガスを分析。その結果、フェロモンの成分は、リンゴやバナナの香りに含まれる「プチルチレ-ト」と、ブドウなどに含まれる「2-メチルブタノ-ル」の2種類の揮発性化学物質の混合物だと分かった。次に、このフェロモンを人工的に合成して、働きアリ100匹を集めた空間に漂わせると、女王化するアリは1匹程度で、フェロモンがない場合の5匹程度に比べて明らかに女王化が抑制された。松浦さんは、合成フェロモンと殺虫剤をくみ併せることで、群れ全体を効率的に壊滅させる駆除薬を開発したいとしている。
イネ枯らすカビの一種 菌表面に「バリア-」、免疫すり抜け
イネを枯らし大きな農業被害をもたらす「ひもち病菌」は、特有の物質でバリア-をつくり、イネが持つ侵入防御システムの攻撃をすーかいくぐって感染していることが分かった。なぜ攻撃をかわせるのかは長年、謎だった。解明した農業生物資源研究所(茨城県つくば市)などのグル-プは、新たな防除法の開発につながる成果としている。
いもち病は、カビの一種のいもち病菌が原因で、もみや葉、穂などさまざまな部位に発生する。急激に広がり、葉や穂には茶色や白色の病変が現れる。感染したいもち病菌は、イネの細胞の中に微小な菌糸を多数伸ばし、栄養分を吸収してしまう。イネが枯れ、稲穂に実ができなくなるため、農家にとって厄介な敵だ。低温で多雨、日照りが少ないと多発する傾向があり、同研究所によると、冷夏の年に起きやすく、5~10年ほどの間隔で大発生している。こうした病原菌に備え、イネなどの植物は、一般的に、感染を防ぐ免疫システムを持つ。カビが侵入しようとする場合、すべての種類のカビの細胞壁に共通して含まれる成分が植物の細胞表面にあるセンサ-で感知され、植物はカビの細胞壁を分解し壊す物質を分泌して撃退する。
いもち病菌も攻撃の標的となる細胞壁の成分を持つが、なぜかイネの免疫システムをすり抜けて感染しており、その理由は不明だった。東北大、立命館大、広島大と共同で解析したところ、イネに感染したいもち病菌ではこの細胞壁成分がほとんど見つからず、代わりに、特有の多糖類が表面に蓄積していた。多糖類を取り除くと、本来の細胞壁成分が検出された。さらに実験で、雨水などをはじくためにイネ表面に存在するワックス成分を加えたガラス版の上でいもち病菌を育てると、多糖類ができることも分かった。階イネはこの多糖類を分解できないため、同研究所の西村麻理江主任研究員(応用微生物学)は「いもち病菌は侵入の際、イネのワックスを認識すると多糖類を出して自己を覆い、身を守っている」とみる。
新たな防除法
同研究所によると、いもち病菌はイネに取りついた後、不着器と呼ばれる器官から菌糸を出すが、現行の防除法は、不着器の機能を妨げる殺菌剤や防除剤が主流。だが、これらが効きにくくなる耐性菌の出現も報告されているという。グル-プは、いもち病菌がワックスを認識し、多糖類を合成する遺伝子の働きを活発にするメカニズムについてもほぼ明らかにした。今後、この多糖類を分解する物質を出すイネを作ったり、多糖類が作られないようにする物質をイネの根や葉から吸収するなどして、イネが本来持つ攻撃力を高める防除法の開発を目指している。西村研究員は「新たな防除法はいもち病菌の感染戦略の中核部分をたたくので、感染は難しくなるはす゛。耐性菌も出にくいと考えられる」と期待している。
丸紅と帯畜大 生菌剤を開発
大手商社の丸紅(東京)と帯広畜産大は1月26日、テン菜の葉や茎(ビ-トトップ)など農産物の残りかすを家畜飼料に変える生菌剤を開発したと発表した。ビ-トトップはこれまで決まった利用法がなく、飼料の自給率向上や低コスト化に一役買うと期待されている。生菌剤は、植物の繊維などに有用な菌を加えたもの。今回開発された生菌剤は、パ-ム油を取り出した後のヤシの繊維に、乳酸菌や枯草菌、酵母などを混ぜ合わせ粉末にした。乳糖に必要なテン菜の根を収穫した残りのビ-トトップは、十勝管内だけで年間100万㌧近く発生。水分が多いため腐敗しやすく、飼料としての利用は困難だった。同大の試験では、生菌剤を加えたビ-トトップは、常温で10カ月保存しても腐敗しなかった。乾草と混ぜて羊に与えると、乾草だけの場合に比べ体内へのエネルギ-蓄積率が1割以上アップするなど、栄養価の面でも効果が確認された。生菌剤はビ-トトップのほか、稲わらや果汁の搾りかす、おからなどの飼料化にも効果が期待できる。丸紅は今春、生菌剤1㌔当たり200~300円程度で発売する予定。飼料会社や農業団体などに売り込み、3年以内に年間5億円の売り上げを目指す。同大大学院の高橋潤一教授は「ビ-トトップの収集体制が確立されれば、安価な飼料の提供が可能になり畜産品の生産コスト削減にもつながる」」という。
コピペ見破るソフト開発 金沢工大教授ら 学生論文盗用防ぐ
学生論文からインタ-ネット上の他人の文章を勝手にコピ-して張り付ける「コピ-アンドベ-スト(コピペ)」を根絶しょうと、金沢工業大大学院の杉光一成教授東京のソフトウエア会社「アンク」がコピペを見破るソフトを共同開発、実用化した。発案した杉光教授は「ネット上の文章のコピペは盗用に当たる。学生たちの悪癖をなくすことに役立ってほしい」と話している。ソフト名は「コピペをするな」をもじって「コピペルナ-」。論文の中にネット上に同じ文章がないか検索。完全に一致する部分はお赤く表示され、単語を置き換えたり、語尾を変えた文章も度合いによって、該当部分がオレンジ色や黄色に表示される。コピペした部分が占める割合や転用した元の文献も割り出せるという。杉光教授は以前、学生のリポ-トでネットからの転用があることに気付いて、まじめな学生が損をしないようにと開発に乗り出した。卒論提出シ-ズンを前に、全国の大学などから問い合わせが相次いでいるという。