ついに始まる大躍進の時代 TPPで日本は世界一の農業大国
否定的な論評が農業関連に散見します。それは単に既得権に固執し、日本の農業の世界に冠たる潜在的能力を阻害しています。如何に日本の農業関連事業が、これからの就活対象に重要な位置を占めるかを魅力満載で記述している下記書籍、最低3回以上は読破したいものです。
TPPで日本は世界一の農業大国になる 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2012-03-16 |
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ついに始まる大躍進の時代 TPPで日本は世界一の農業大国
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先進国の15歳対象にユニセフまとめ 30%、平均の4倍も「気まずさを感じる」も最多
狭い人間関係背景に受験競争も影落とす 国際児童基金(ユニセフ)が発表した先進国の 子どもの幸福度に関する調査報告書によると、 学校で孤独を感じる15歳の割合は日本が約30 %で最も多く、平均を20ポイント強も上回るなど 突き出していた。道内の専門家は「孤独という言 葉の受け止め方は文化により違う」としながらも、 日本の子どもの人間関係が「親子」と「同級生」に 限られがちで多様さに欠ける点が、高い孤独感 の背景にあるとみている。報告書は、経済協力開発機構(OECD) 03年、41ヵ国約28万人の15歳(日本は高校1年生約4700人) を対象に行った学習到達度調査を基にして、ユニセフが編集した。 OECD調査は「学校はどんな場所か」を尋ねる設問があり、「孤独 を感じる」「簡単に友達がつくれる」など6項目について、それぞれ 「強くそう思う」「そう思う」「そうは思わない」「まったくそう思わない」 から一つを選ぶ内容。
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ユニセフの報告書によると、日本の15歳は29・8%が「孤独を感じる」 と答えた。2位のアイスランドは10・3%、OECD平均は7・4%だった。 同じ設問に対し」気まずさを感じる」とした回等も、日本は18・1%でトッ プだった。日本ユニセフ協会広報室は「外国語と日本語とでは、質問の ニュアンスが微妙に違う可能性がある。数字だけでは比較できない」と した上で、「孤独や気まずさを抱いている青少年がいる、という事実を 踏まえた対策が大事」と主張する。
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北海道こども診療内科・氏家医院(札幌)の氏家武理事長は「親が過 剰な甘えを許し、子どもが欲望を満たされて育つと、協調性は低くなる。 一人っ子は、その傾向が強い。相手の気持ちを考えられなければ友人 ができず、人間関係が親子関係だけでに限定されかねない」という。さ らに、日本の学校は「子どもの居場所としての自由度が低く、多様な 人間関係を学べる場になっていないし、その余裕もない。そうした中、 受験を通し<勝ち組・負け組み>に分かれてしまう」。人間関係の乏し さや学力による格差が疎外感を誘発する-との見方を示す。
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子どもたちが気軽に悩み事を話せる電話を開設しているNPO法人「チ ャイルドラインさっぽろ」の代表で、北星学園大社会福祉学部の今川民 雄教授(社会心理学)も、子どもたちを取り巻く人間関係の幅の狭さが、 孤独感を生む一因だと強調する。かっては幼稚園児から中学生までが 一緒に遊ぶ機械が地域にあり、子どもたちは<自分の数年後のモデ ル>と身近に接していた。だが地域の崩壊で、それがなくなったとも。 今川教授は「さまざまな人間関係を築けないと、特定の集団での関係 が絶対的になる。いまの子どもは友達を大切にする半面、集団内部で ちょっとしたトラブルが起きると、敏感に孤独を感じやすくなっているので は」と分析。「いろいろな年齢の他者と接し、多様な経験をすることが、 子どもたちの可能性を広げる上で大切」と強調している。
希望を求めて-再生へこう考える 子供と向き合う時間を
-北教組は労働運動とともに、戦後の教育現 場で子供の「学ぶ意欲」を引き出す授業の研究、 実践を重視してきました。 「授業は最優先の仕事で、授業の技量を磨き子 供たちとともに成長するのがわれわれの理想で す。そのために、授業の工夫やアイデアを発表し、教育研究集会 (教研集会)を続けています。しかし、最近は忙しさが増し、教研集会 に参加したくてもできない教職員がいます。事務作業や授業に無関 係な校務を軽減し、子供たちと向き合う時間を確保するためにも組合 が大切です」
「序列化」に反対
-授業の技量を重視する一方で、全国学力テストに反対する理由 は何ですか。 「学習到達度を調べることに反対なのではありません。テストによる 子供たちの序列化に反対なのです。全国一斉で受けさせ、結果を公 表する狙いは地域、学校、子供たちを点数で序列化し、教育に弱肉 強食の競争原理を持ち込むことにほかなりません。本当に大切な学 力、社会で生きていく働く力は、点数競争とは別な勉強で身につきま す」 「全国学力テストは、学校での査定昇級の動きとつながり、『管理職 に評価されるために学力テストの点数を上げなくては』という発想すら 生まれかねない。勉強の不得意な子供はどうなってしまいますか? 一部の学者が指摘するように、抽出方式のテストを、結果を非公表に して行えば十分です」 -しかし、全国学力テストで北教組は当初の「非協力姿勢」を道教委 に押し切られる形で撤回し、結果は完全実施となりました。 「われわれの主張を道民に理解してもらうための時間がなかった。来 年の第二回全国学力テストは、保護者をはじめ多くの人たちの理解 を得て実施を阻みたい。全国学力テストに先立ち、昨年12月の道教 委のいじめアンケ-トに反対したことでも『北教組はけしからん』と批 判を浴びましたが、もっと丁寧に道民に伝え、理解を得る必要を感じ ています」
いじめで報告書
-道教委のいじめアンケ-トに反対した理由は。 「あのアンケ-トは、いじめ解決に役立ちません。深刻ないじめ事件 が相次ぐ中で、道教委が形だけの対策を示すアリバイ作りでした。 むしろアンケ-トを行うことで子供同士に不信感が生まれ、『アン ケ-トに自分が書いた内容が漏れたらどうしよう』という不安をもたら した」 「クラス内の微妙な関係にアンテナを張り、真剣にいじめに立ち向 っている教師に、迷惑です。いじめの解決は現場の努力にかかって いる。あのアンケ-トが現実の対策で役立つたという話は聞きま せん」 -若手を中心に北教祖に加入しない「組合離れ」が進んでいます。 「組織率の低下は確かに問題です。若い教職員に組合の理念を分か ってもらわなくては-。北教祖はじめ問題でも、道教委のアンケ-トに 反対しただけではありません。組合員による『いじめ解決の実践報告 集』を今年6月に作成し、一般市民にも配布しました。こうした活動は 保護者にも知らされておらず、やはり情報発信の必要を痛感していま す」 -仕事に熱意のない組合員がいるとの批判も一部で聞かれます。 「教育の専門職としてしっかり仕事をすることが本来の組合活動の前 提です。まじめな教職員の多くが『もっと子供にかかわりたい』と望ん でいる。そのために『ゆとり』を確保することは大切ですが、楽をするた めの組合ではありません。教職員が子供たちとともに育つ教育を進め たい」
希望を求めて-再生へこう考える 「子供のため」最優先
-文部科学省が43年ぶりに行った全国学力テ ストの完全実施に向け強い姿勢を見てましたね。 「子供の現状を把握するために学力調査は大切 です。やるからには全市町村すべての学校で調 査の趣旨を踏まえ、きちっと行わないと意味が 薄れてしまう。形だけでなく、担任の先生たちがそろって一斉にやる ことが『テストの結果をみんなで前向きに生かそう』という力にもなる と考えました」「北教組は当初『非協力方針』を示しましたが、これに は道教委が非協力の教師に対する処分も辞さない構えで実施を求 めました。結果として『道教委は本気だ』というメッセ-ジを市町村教 委、学校に発信することになり、スム-ズな完全実施につながりま した」
低学力放置せず
-結果は北海道の平均正答率が小中学校とも全国の下位でしたが。 「北海道が下から何番目、だから北海道の教育はダメといった議論で 問題は解決しません。『応用力が足りない』という全国的な傾向に着 目し、学力を幅広くとらえて子供たちを伸ばす手だてを講じたい」 「一方で、道立高の校長先生から『掛け算、割り算ができない生徒が いる』という話を聞かされることもあります。『幅広い学力』とは別問題 として、基礎的な計算力や英語のスペルなどが身についてない低学 力を放置しては、教育の責任を果たしたことになりません。このため 道教委は現在、小中学校の各段階で『全員が必ず身につけなくては いけない基礎学力』を独自にコアアビリテイ(中核的能力)と位置づけ、 子供たち全員に指導を徹底するための方策を3年計画で立案中です」
身内の論理排除
-滝川市で起きた小学生のいじめ自殺では、道教委内部で遺書の コピ-が紛失したことなど゛が批判を受けました。その後の組織改 革は。 「遺書紛失は私の就任半年後に発覚し、道教委全体の意識改革が 必要と痛感しました。『身内に都合の良い役所の論理』がなかった かを自問自答し、『子供たちのため』をすべてに優先して考える。当 たり前のことですが、これを徹底することが私の責任です」 「今年6月の機構改革で部制を廃止し次長のもとで情報を一元管理 する体制にしたのも、課題を共有し機敏に対処する目的です。まだ 満点ではありませんが、道教委は前向きに変わりつつあります」 -北広島市では同級生へのいじめを訴えた中学生が逆に孤立して 転校を強いられたことが発覚し、最近校長が処分を受けましたが。 「北広島の問題では、学校当局、管理職に『子供を守る』という強い 意思があったのか。疑問を抱かざるを得ません。生徒にトラブル、問 題が及んでいるのに迅速に行動せず静観することは『手をこまねい ていた』と同じです。これからは、道教委の組織も学校現場も『何もし ないでいる』こと自体が、責任を問われることになります。学校現場で このことを徹底したい。大多数の先生が一生懸命にやっていることは、 十分に理解しています」 -教師を目指す若者が減っていますが。 「先日、小樽水産高校の実習船の出発を見送り、胸が熱くなりまし た。道教委の教員はペ-パ-テストの成績順で採用するわけでは なく、面接などで教育への志とエネルギ-を重視します。専門知識や 経験を生かしてもらうため、教員免許を持たない人の採用も本年度か ら枠を拡大しました。情熱のある若者に、教育という素晴らしいプロ ジェクトにぜひ参加してほしい」
クレ-ムの利益と不利益(うちだ・たづる=神戸女学院大教授)
「モンスタ-親」という見慣れない言葉をメディアで見かけた。無理 難題というほかはない苦情や抗議を執拗に繰り返す保護者や住民 のことだそうである。「仲のいい子と必ず同じ学級にしろ」「うちの子 の写真の位置がおかしい」「チャイムがやかましい。慰謝料を出せ」 「子供のけんかの責任を取れ」・・・。担任交代要求まであるという。 教育の現場に身を置いていると「クレ-マ-親」たちの理不尽ぶりに 驚かされることが多いのは事実である。「はしか」が流行したときに 休校措置をとった大学で、受けられなかった教育サ-ビスを大学は どう補填をするつもりかという怒りの電話をしてきた親がいた。
○ ○
感染の危険があるのに予防措置を怠ったというのであれば大学が 管理責任を問われるのは当然のことだが、予防措置にともなう「受 益者の不便」について補償を求められては学校も立つ瀬があるまい。 感染を回避できたという「利益」と受講機会を逃したという「不利益」は トレ-ドオフされると私は考えるが、そういうふうには計算してくれない ようである。だが、自己利益の確保をあまり急ぐと、むしろより大きな 不利益を呼び込む場合があることを忘れてはいけないと思う。学校の 管理責任や教師の教育力不足をきびしく批判する親たちの指摘には 根拠があることを私は認める。だが、その批判が学校を子供にとって 快適な場所にし、教師の能力向上に資するか、その逆の効果をもた らすかは熟慮すべきであろう。医療事故も同様である。医療事故をき びしく告発することによって医療の質が向上すれば患者は利益を得 る。だが、訴訟を嫌う医師たちがトラブルの多い診療科勤務を避けれ ば、患者たちは受診機会失うという不利益をこうむることになる。事故 利益追求のために人々があまりに要求をつり上げ、他者に対して過 度に不寛容になると、社会システムが機能不全に陥ることがある。 クレ-ムによって確保される利益と不寛容がもたらす不利益のどちら がより大であるかについては、慎重な吟味が必要だろう。
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これまでメディアは何か事件が起るたびに「責任者出て来い」と怒号 する「被害者」にほぼ無条件に同調してきた。クレ-マ-の増加はメ ディアのこの安易な「正義主義」と無関係ではない。こけまで教師を 叩いてきた人々が今度は手のひらを返すように「モンスタ-親」を加 害者として告発する。だが、大切なのは被害者、加害者の白黒をつ けることではない。自分のしようとしている社会的行動のもたらす利益 と不利益を冷静に考慮する習慣を市民一人一人が身につけることであ る。「100%の正義」が「100%の不正」を告発するという単純な図式 こそが、私たちの社会システムの円滑な機能を妨げているという事実 に私たちはそろそろ気づくべきだろう。私は「モンスタ-親」などという ものは存在しないと思う(「モンスタ-教師」や「モンスタ-医師」が存 在しないのと同じように)。いるのは「いささか常識を欠いた方」たちだ けである。被害者と加害者、正義と不正の単純な対立図式であらゆる 社会問題を扱う態度こそ「いささか常識を欠いてはいないか」と私は危 ぶむのである。
希望を求めて-再生へこう考える 能力理解し補い合う
-教師に必要な能力について分析した「教師 力ピらミット」を考案されました。 「教師の仕事は10年前と比べて格段に難しく なったと感じたのが、きっかけです。行政と生徒・ 保護者からは水も漏らさぬ対応が求められ、仕 事は多様になっています。保護者対応でのトラブルは絶えず、マス コミなどの学校批判も続いています」「一方で、多くの教師は誠実に 仕事と向き合っていますが、いじめや学級崩壊などの問題が依然発 生しています。学校の外にいる人も教師自身も、教師に必要な能力 と実態を知ることが、問題解決の出発点になるのではないか。そう思 い、考えたのが『教師力ピラミット』でした」
教師の力を3分類
-ピラミットの特徴は。 「日ごろの仕事について、教師に求められている 力を分かりやすく、網羅しています。三角形の底 辺から頂点までを、能力習得の難しさで三段階 にランク分けしました。『モラル』と『生活力』が教師の土台となるの は、当然でしょう」 -二段目の指導力と事務力とは。 「『指導力』は、悪いことは悪いと生徒にしっかりと伝える『父性型』、 悩んでいる生徒を包み込む『母性型』、生徒と一緒に楽しむことがで きる『友人型』に分けられます。この型を時と場合によって使い分ける 能力が必要です。批判の多くも、この部分に集中している感じがしま す」「一方で、見落とされているのが『事務力』です。成績処理や進 路事務などには高い『緻密性』が求められ、新たな授業法を開発す る『研究力』も必要です。複雑な時間割作りや年間計画の策定など、 教育課程の編成にかかわる『教務力』も不可欠です」 「以前は指導力と事務力の割合が9対1でしたが、今は五分五分と いう感じでしょうか。事務に追われ、子供たちと向き合えないことに悩 む教師が多いという実態も、ここに要因があるのです」 -先見性、創造性とはどんな力でしょう。 「いじめや不登校などの問題が起れば、教師や学校は『予兆がとらえ られなかったのか』と責められます。行事などは生徒の多くが活躍する、 華のある運営が求められ、学校改革では、最新のデ-タを用いて学校 独自の特色も創造しなければなりません」
情報交換を蜜に
-求められる能力は、多種多様ですね。 「そこで私が強調したいのは、一人の人間がすべての能力を持つの は無理だということです。私は今、中学3年の学年主任と担任、運 動クラブの顧問をしています。指導力では『父性型』と『友人型』を使 い分けていますが、『母性型』は持っていないため、同じ学年の同僚 教師の力を借りています。また、主任として、若手の学級運営に対 する目配せを強く意識しています」 「3年前に勤務校に赴任して以降、学校・学年単位で教師が互いの 長所と短所を理解し、カバ-し合うことを念頭に置いてきました。保 護者会の機会を多く持つなど家庭と緊密に情報交換し、初期段階の 対応に腐心しました。これらの相乗効果で学校の運営は安定し、今 はクレ-ムを受けることがほとんどなくなりました」 「学級崩壊にしてもいじめにしても、対応が担任任せになったり、担 任自体が問題を抱え込むケ-スがいまだに多いように思います。 個々の力を向上させるのはもちろんですが、いかにチ-ム力を発揮 する環境を整えるか。その視点が、今後ますます重要になっていくと 思います」
希望を求めて-再生へこう考える 先人の「財産」共有を
-教師への視線は厳しいものがあります。 「罪を犯すケ-スは論外ですが、『教える術』を 持たない教師が年齢に関係なく多いことも、批 判の要因の一つでしょう。学校現場には、我流 授業がまん延しています」「教師たちが授業を 批評し合う研究授業を見れば、その実態が端的に分かります。 まず、何年も研究授業に臨まない教師が多数います。研究授業に 臨んだ教師でも、授業の流れを記した学習指導案を見ながら授業を しているありさまです。舞台で台本を見ながら演技する役者がどの 世界にいるでしょう」
学ぶ場 実習だけ
-そのような状況に陥っているのは、なぜですか。 「教師の要件として人間性が重視され、授業技術を軽視する風潮 があるからです。教員養成系大学でも教える術を本格的に学ぶの は、教員実習だけです。つまり、術を効果的に後輩へ受け継いでい くシステムがなく、現場に入ってからの実践任せになっています」 「医師の世界と比較すれば、分かりやすいでしょう。まず、医療技術 や知識を持たない医師に、治療を任せる患者がいますか。また、大 学の医学部教授は医師であり、手術で執刀する実践家です。教員 養成系大学の教授で、小、中学校の教壇に立った経験があり、学生 に術を教えている人がどれだけいるでしょう」 -その欠陥を補うのが、道内も含めて一万人の教師が学ぶTOSS (Teacher's Organization of Skill Sharing)の狙いですね。 「先人が培ってきた優れた授業技術は共有財産です。その技術を現 場での実践を繰り返して検証し、教師の力量を上げていきます。基本 技術では、教師が指示を出す時、二つ以上の目標を同時に示すと、 理解できない子供が必ず出てくるため、『一時に一事を指示する』こと を徹底しなければなりません。子供たちと視線を合わせる、リズムと テンポを大切にすることも同じです」 「また、『知ること』と『すること』には雲泥の差があります。教師個々の 技量を測り、目標を示すシステムとして、2003年から導入したのが 授業技量検定です。最高位は八段、最下位は三十四級です。二十 級で学級崩壊したクラスを立て直せる技能があり、現に多くのTOSS 教師たちが崩壊学級を立て直しています。段位クラスは全国でもトッ プランクの授業提案力を持っています」
標準基準 明確に
-ただ、TOSSの運動を「マニュアル主義だ」などとする批判もあり ます。 「私は教師の仕事について、授業技術がすべてだと主張しているわ けではありません。ただ、授業はあくまでも学校の基本であり、教 壇に立つ以上、基本技術が必要だと言っているのです。キャッチ ボ-ルができない野球選手が、プロになることはあり得ません。 教師には基本がない『自称名人』が多すぎます」 -現状を変えていく有効策は。 「検定がその一つの方策でしょう。ただ、向山が独断で作り上げた 基準だとの批判も耳にします。それなら、独自の検定を作ればいい はずです。道教委検定でも、道教大検定でもいい。時代は、客観的 で明確な基準によって教師を評価することを求めています」 「ここ数年、道内も含めた全国の自治体の首長や教育長から、協力 の申し出を多数いただいています。これは、教育を変えるには、教 師の力量アップが欠かせないという思いの表れです。子供たちに学 べと言っている教師自身が学ぼうとしない現状のままでは、何も変 わりません。急務なのは、教師の意識改革でしょう」
希望を求めて-再生へこう考える
-なぜ勉強が大切なのか、ということからうか がいます。 「勉強の一番のメリットは、頭が良くなることです。 運動で体が敏しょうになるように、人は勉強とい うトレ-ニングで知識がつくだけでなく頭が良くなり、 自制心がつきます」
ル-ル踏まえる
-頭が良くなるとは具体的に、どのようなことですか。 「文章や人の話を理解する読解力、情報を整理してつなげる文脈力、 物事の本質を把握し別な場面で応用する上達力などを含んでいます。 数字で3×xは3xと表記し、x3ではありません。ル-ルに基づき筋道 を立て目的に向かう力は多くの職業で必要ですし、私たちが他者を 信頼して社会を構成する前提でもあります。また心をコントロ-ルす る自制心は人間関係に大切ですが、『勉強したため粗暴ですぐキレ る性格になった』という話はめったにありません」 -受験競争の一方で、勉強や無関心な若者も増えている印象です。 「日本には昔から字を覚え、知識があることを尊ぶ歴史がありました。 経済のバブル時代の風潮とあいまって過去20年ほどの間に『知らな くてもいいじゃん。恥ずかしくないし、気楽だし-』という言葉が聞かれ るようになってしまった。勉強が すべての基準とはもちろん言いませ んが、昨今の教養無視は前代未聞です。小中学校の教育が鍵をにぎ っています」 -勉強とテストの関係については、いかがですか。 「テストは大切です。小中学校で教えることは『私たちの社会には、こ の知識が必要』というエッセンスで教師は不退転の覚悟で教えなくて はならない。『楽しい授業』だけど、成績はさっぱり上がらないのでは 意味がない。勉強の到達度を測り『この問題を解く力は大切』とメッ セ-ジを子供たちに発信し、同時に授業を検証することがテストの役 割です」
テスト通じ把握
-学力はテストだけでは測れないという主張もありますが。 「学力はテストで的確に把握できるというのが、私の考えです。教科 を理解し知識があるのにテストの点数はすごく悪い、あるいはその 逆-など、あり得ない。教師がテストを嫌ったり、テストが教育をねじ まげたりするなどと言ったら、それは『逃げの姿勢』で、もう教育にな りません」 -四十三年ぶりの全国学力テストで北海道は小学6年が全国で下 から数えて二番目の46位、中学3年が44位でした。 「他校とのわずかな差といった<せこい>比較は必要ありませんが、 学力を伸ばす『本気の努力』は大切です。部活動なら例がある。転勤 する先々で合唱部を見事にうまくしてコンク-ルで入賞させる先生が いますね。子供の歌の才能はどこも同じレベルで、合唱の練習環境 に都会も地方もありません。同じように、熟や予備校もなく、学力に対 する保護者の関心が概して低い地域の小中学校でも、先生たちが『う ちは国語の読解力で全国トップクラスを目指す』『算数の成績を全校で 上げよう』と結束すれば、効果は上がります」 「郷土意識は勉強にも有効で、親御さんたちはぜひ学校に足を運び 『君たちはこのマチの誇りだ』と、北海道日本ハムファイタ-ズを応援 する札幌ド-ムのあの空気を教室に送ってほしい。中には、教室が荒 れてしまって授業にならない学校もあるでしょう。そんな場合もやはり 『やってみたらできた』という喜びを子供に実感させる教育本来の魅力 で引っ張るしかありません。まず、最初に戻って一歩を踏み出すこと です」
希望を求めて-再生へこう考える
住民が学校サポ-ト -東京都の中学校で初の民間校長になって五 年。「世の中のダイナミズムを学校に」がモット- だそうですね。 「学校も世の中の一部という当然のことが、この 業界(学校)で自覚されてきませんでした。企業は人、モノ、金、 情報と時間を駆使し、トップが責任を負う。学校も、校長が生徒の成 長という最大の目的に向けあらゆる手段を講じるべきなのに、『健全 な知恵比べ』がなさすぎた。多くの校長が『公教育は平等』の建前の もと他校の良い例をまねようともせず、サボってきたためです」
教師の負担軽減 -勤務する区立和田中の改革は。 「教師が授業に集中し生徒と向き合う時間を確保するには負担の軽 減が必要と判断し、着任してすぐに住民が学校をサポ-トする『地域 本部』設立に動きました。主婦、商店主、庭造りの職人さんら多彩な スタッフが、大学生を講師に招き土曜補修授業や平日の英語特別授 業を自主運営しています。図書室の放課後の運営・管理なども幅広く 担ってくれています」 「教師は地域本部にタッチせず本来の仕事に集中する。この仕切りで 学校の総合力が高まった。地域本部は杉並区と文部科学省の支援 対象事業になり学校に措置される予算からスタッフに謝礼を支払って います。やり方次第で、他校にも同じ道が開けています」 -授業の改革は。 「教科書と現実社会をつなぐ総合学習『よのなか科』を創設し、ハン バ-ガ-店を出店したらもうかるかを考えたり、弁護士をゲストに模擬 法廷を開いたりと、生徒の討論を大切に授業を展開しています。一コマ 五十分が標準の授業を四十五分に短縮し、五分ずつ浮かせた時間で 英数国を中心に週の授業コマ数を増やす取り組みも軌道に乗りました」 -摩擦はありませんでしたか。 「職員会議が反対の嵐だったこともありました。しかし私は『嫌だから反 対』というのは認めません。筋の通った対案を出せないなら、従ってもら います。同時に校長として成果が上がらなければ退くか降格人事を受 ける覚悟があります。『生徒のため』という思いはみな同じで、いつも力 強い賛同者が現れました」
生徒数が2倍に -改革で学校はどう変わりましたか。 「学校選択制で校区から三十人ほどが他校に流れていたのが逆 転し、五年間で生徒数が2倍以上に増えました。本年度の新入生 百五十七人は着任時の3倍です。行事や部活など集団による教育 効果が生まれ、生徒数に応じ増員された教師を機動的配置できま す。生徒の学力は着実にアップしています」 「近隣校でも和田中に負けじと地域と連携した学校づくりが始まっ ています。学校選択制はベストではなくても、当面は有効です。保 護者には『選んで入学するからには責任を持ち学校に参画を』と呼 びかけています」 -民間校長を増やすべきだと考えてますか。 「特に公立中に必要です。入試で均一な生徒を集める私立と違い、 全国の公立中に能力、個性がさまざまで多感な子供たちがいる。 彼らが学力と公共心を身につけた市民になるかどうかに、日本の 将来がかかっているのでは-。『着任し最初の一年は動かず、じっく り校内を観察することが校長の心得』などと言っている人たちに任せ ていられません」 「民間といっても社内の人事と予算を握り部下を動かしてきたタイプ は校長に向きません。その手法で教師は動かない。『生徒のため』 という説得力を持つリ-ダ-シップが大切です。NPO代表や熟経営 者、学者や行政関係者、幅広い人材の『参戦』が必要です。教師出 身で実績ある校長には定年退職後、こんどは民間校長としてぜひ 活躍してほしい」
希望を求めて-再生へこう考える
学校秩序の再構築を -教育が今抱えている最大の問題は何でしょ うか。「戦後の日本を支えてきた義務教育シス テムが機能不全を起こし、崩壊の危機に直面し ていることです。昨年秋以降に相次いだいじめ 自殺や、学級崩壊、不登校などの諸問題はその表れです。 問題は深刻化するばかりで、抜本的な解決策が見つからない状況 です」 -その原因は。 「第一に、子供たちの変質があります。私たち『プロ教師の会』のメン バ-が現場の教師として子供たちの変化を感じ始めたのが、1980 年代半ばごろでした。それが90年代に入ると一気に変わってしまい ました。その状況は今も大きく変わっていません」
挑戦しない子供 「特徴は我慢できず、感情のままに行動する。嫌なこと、つらいことに 挑戦し、学ぼうとしなくなった。傷つきやすくなり、自分を守るために殻 に閉じこもるか、相手に攻撃的に向かっていき、『キレる』ようになった。 そう感じます」 -変質の原因を、どのように分析していますか。 「高度成長期を経て国民が豊かになり、食べられるようになったと同時 に、家庭や学校を支えていた地域共同体が崩れ始めました。個人第一、 自由、平等な社会が実現し、子供も消費者として『一人前』扱いされる ようになったことが背景にあるのでしょう」 -ただ、その変質を実感している人は多くないように思います。 「確かに、社会も教師自身もこの変質をいまだにとらえられず、自身の 子供時代をイメ-ジして今の子供を見ています。現実と認識の間に大 きなズレがある限り、問題解決は難しいでしょう。本質が分かっていな いから、対応も小手先でその場しのぎとなり、後手に回ってしまうので す」 「ゆとり教育への批判とともに語られている学力低下論を見ていても、 本質がまったく見えていないと感じます。問題は、前提として、生活習 慣や社会性が十分身に付いておらず、学習に臨む心構えや姿勢が弱 くなっている点にあるのです」 -だからこそ、効果的な改革が必要なはずです。 「義務教育が抱える第二の問題点は、その改革のありようです。教育 改革は80年代の臨時教育審議会(臨教審)以降、競争原理の導入が 土台となっており、安倍晋三前首相の肝いりで始まった教育再生会議 などの議論を見ても、その流れは加速しています。学校選択制や教育 の免許更新制などの各制度も、この競争原理を政策化したものです。 背後にあるのは『弱肉強食』『エリ-ト主義』の思想です」
強者偏重の改革 「私が委員として議論に参加した2000年の教育改革国民会議で も『エリ-ト教育にとにかく力を注ぐべきだ』などという意見が強く出 されていました。そこにあるのはひとりひとりの子供を一人前の社会 人に育て、全体の力を底上げするのではなく、一部のエリ-ト層の 養成に力を集中しようという意図です。子供を持つ親も学力・学歴と いう物差ししか持たず、その考えに乗ってしまっています」 -するべき対策は何でしょうか。 「『基礎学力と生活力を持った一人前の社会人を育てる』という義務 教育本来の目的を再確認し、学校秩序を再構築することが最大の 課題て゜しょう。不登校児を受け入れる学校や生活力養成を重視した 学校、国をリ-ドしていく子供を教育する学校など、同年齢の子供を 一斉一律に教える従来の単線型ではなく、子供たちの現状に合わせ た複線型の学校編成が必要だと考えます」
希望を求めて-再生へこう考える
明確な「目標」設定を -今の教育改革の主眼は「学力低下」への対応 ですが、肝心の議論がかみ合っていません。 「学力低下論は、2003年の国際学習到達度調 査(PISA)で読解力が八位から十四位に下がっ たことが発端でした。ただ、同じ調査で日本の科学的応用力は二位、 問題解決能力は四位。学力は低下したのか。そもそも学力とは何な のか。現状分析も根拠も定義もあいまいなまま、議論はム-ドで進ん でいます。だから、小、中学校の授業時間数の10%増という、原因 に対応していない学力向上策が出てくるのです」
まずは現状把握 「25年以上勤めた文部、文部科学省時代もずっと感じてきましたが、 日本の教育論議は空回りやすれ違いが多く、建設的な議論になりま せん。それは多くの日本人に、マネジメントという発想が決定的に欠 けているからです」 -マネジメントとは何ですか。 「『現状』を正しく把握し、その『原因』を究明する。その上で、現状を改 善する具体的な『目標』を設定し、適切な『手段』を講じる。これらを集 団の同意を得て政策化・ル-ル化し、目標と結果を検証する。そして、 その検証した結果を次の段階に結びつけていく。このプロセスがマネジ メントです」 「一連の過程で最も重要なのが『目標』の設定です。しかし、教育界で は特に、この点がおろそかにされています」 -具体的には。 「学校の目標が典型例でしょう。どの学校も『生きる力』『豊かな心』 『確かな学力』などの文言を掲げていますが、これは単なるスロ-ガン でしかありません。生きる力とは、どんな学力や体力、精神力を指すの でしょう。スロ-ガンはあってもいいでしょうが、『○○か゛全員できるよ うになる』など、結果との関係を明確に比較できる具体的なものでない と、目標とは言えません」 「学力低下論で言えば、PISAの調査結果が発表された当時、文科省 の担当課長に『それでは読解力が何位になれば、目標を達成したこと になるのか』と問いただしましたが、答えは返ってきませんでした。目 標がないのに、学力が上がった、下がったという判断がなぜできるの でしょうか」 -なぜ、そのような事態になってしまうのですか。 「文科省の役人や自治体教委の職員、学校長など、決定権がある人間 が明確な判断を示さないからです。明確な目標を掲げて、その通りの結 果が出なかったら、決定者は責任を取らなければならないのは、当然の ことでしょう。目標をあいまいにしておくという発想では、有効な対応を取 れるわけがありません」
具体性に欠ける 「日本の教育はこれまで、具体的な目標も設定しないまま、政索を 次々に追加して解決を図ろうとする『追加教育症候群』に陥り、学校 教育を圧迫してきました。その歴史的事実に目を向けるぺきでしょう」 -改善策は。「学力という点で言えば、『読み』『書き』『計算』など、 日本の子供に必要な力は何なのか。全員に必要なミニマムな目標と、 それ以外の目標を分けて設定する必要があります。詰め込みもゆと りも今の学力再重視の動きにも、その視点がありません。このまま では、間違いを繰り返す羽目になります」「『手段の目的化』という言 葉もある通り、『目標』と『手段』の関係は重層的なため、教育に関す る目標は『日本をより良くする』という上位の目標にとっては手段とな ります。教育論議を進めるには、国の将来象についても真剣に議論 し直すことが必要不可欠です」