若者から団塊の世代まで多い希望者
新規就農者育成のため1995年、道や農業団体などが設立した道農業担い手センタ-。新規就農希望の相談は2000年度の年間1197人を最多に09年度は796人。「本気で農業を志す人数はほぼ一定している」(同センタ-)という。跡継ぎなどを除き、毎年50~100人程度が新に認定農業者になる。同センタ-が就農支援貸付制度などの窓口のため、新規就農希望者の大半はここを経由し、市町村などが運営する道内171の地域センタ-を窓口に研修する。相談に訪れる人は20、30代が多いが50代も10%以上。道農政部によると、数年研修を積んで09年度に新規参入した67人のうち22%は50歳以上だ。
農地収得に壁
道のセンタ-経由し各地で研修
「問題は出口」と同センタ-や道農政部の担い手育成担当者は口をそろえる。出口とは、就農に当たっての農地の確保。離農者があっても、周辺の農家が吸収して規模拡大する例か゛少なくない上、「知らない人に農地はやれない」という地域の感情もあるという。そんな逆境の中、オホ-ツク管内美幌町の美幌みらい農業センタ-は00年度開設以来、新規就農希望者13人全員に農地を確保した。このうち12人が東京や大阪など道外勢。平均7・6㌶を耕作し、20㌶以上耕作する人も。離農跡の土地、農業機械など一切を継承する“居ぬき”で手に入れた人も3人。相談、指導に当たる午来博さんは「農地収得は難しいが、新規就農者を、農業を志してくれた同志として歓迎したい」という。「新しい栽培方法を考え出したり、地域にとけ込み活躍している移住者も少なくない」と強調する。地域センタ-などでの研修を前に、第一歩となるのが札幌市の「さっぽろ農学校」(01年度開設)。年度ごとに募集し「入門コ-ス」終えると、就農に近づく「専修コ-ス」に進む。本年度は専修コ-スで24人が学び、自分たちでつくった野菜を収穫、販売した。受講生の本川哲代さん(36)=札幌市=は以前、食品関係の仕事に携わり「食べ物を捨てる、無駄にするのがいやで農業にたどり着いた」。「将来は農学校OBらと連携して食べ物提供の場を作りたい」。「同じく就農を目指す札幌市の男性(45)は「会社員が窮屈でやめた。自然に触れながら野菜か花づくりをしたい」を夢を語る。
「同志歓迎」 居抜きで就農例も
すばらしさ孫に
一期生の中田浩二さん(59)は札幌市南区で就農。脱サラした次男夫と野菜づくりに励む。自らは現在、会社勤めとの兼業だが、定年後は専業に。農作業はきついが、ストレスはないという。「種まいて汗かいて収穫する。来年はこうしょう、3年後は-という目標もある。すばらしさを孫たちに伝えていきたい」と意欲満々だ。 国の構造改革特区(農村再生)に03年に認定された千歳市駒里地域は、農地収得の下限が道内は2㌶のところ、10㌃で就農できる。千歳市によると58区画中31区画が売れ(3月末現在)、農業をしていた人や、定年後の第二の人生を目指した人などが移住した。住人がつくった農作物を共同で展示、販売している。
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会社員を辞め、就農6年目を迎えた空知管内の40代の男性が、こう話してくれた。土地や気候の良い場所の中には、新参者に農地を渡さない所もある。本気で就農したいなら、自分の足で農家を回ってみること。新規就農者も不安だが、受け入れる地域だって知らない人は不安。信頼関係を築くことが重要だ。年収は200万円程度だが、特に若い人に言いたい。「会社なんかに入るより農業は面白いぞ」って。