北大医学チ-ム 判定法開発 クラゲ蛍光色で識別
北大大学院医学研究科の大場雄介准教授(病態医科学)と近藤健講師(内科)らの研究チ-ムが29日、10種類以上ある慢性骨髄性白血病の治療薬が、患者ごとに有効かどうかを治療前に判定できる手法を開発したと発表した。発光クラゲの蛍光タンパク質を使って作った分子構造を、患者から取り出した細胞に注入し、タンパク質が出す光の色で有効性を判断する。現在は最長1年かけて適合する薬を探しているが、この手法なら、患者の負担を軽減できる。29日付けの米がん学会誌に掲載された。慢性骨髄性白血病の患者の約7割は「イマチ二プ」という薬で原因タンパク質の活動を抑えられる。しかし、効かない患者がいるうえ、1度効いても耐性ができ効果がなくなる例も報告されている。大場准教授らは薬の効果を判定するセンサ-として、2008年にノ-ベル化学賞を受賞した下村脩博士が発見した蛍光タンパク質に着目。遺伝子工学の技術を使って、蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んだ新たな分子構造を作った。この分子構造は白血病の原因タンパク質が働くことで細胞に生じるリン酸化の有無で違う色の光を出すよう作られており、それを薬を服用した患者の細胞に注入。薬が効かずに細胞がリン酸化していると、細胞内が黄色く光り、薬が効いてリン酸化していないと、青緑色に光る。研究チ-ムは実際に患者の細胞を使い、この手法の有効性を確かめた。現在はこうした事前の判定ができず、患者に適合した薬を探すために次々と薬を投与している。一つの薬を試すのに数ヵ月かかるため、有効な薬が見つかるまで1年ほどかかる場合もあり、患者が副作用や病状悪化などに苦しむことがあった。大場准教授は「今後1~2年かけて試験を重ねて有効性をさらに確認し、実用化したい」と話している。
慢性骨髄性白血病 遺伝子の異常により、がん細胞を生じさせる原因タンパク質ができ、骨髄で白血球が過度につくられる血液のがん。発熱や倦怠感が続き、脳や心臓に転移する例もある。急性より少ないが、国内では年千人が発症し、現在の患者は約5千人。死亡例も多い。