ほっかいどうの本
北海道からみる地球温暖化 (岩波ブックレット NO. 724) 価格:¥ 504(税込) 発売日:2008-05 |
地球温暖化の概要と課題を、北大の研究者5人が平易に解説する。 「北海道」というロ-カルな視点から出発して、地球規模での対処の あり方を考える材料を提供しているのが特徴だ。帰山雅秀教授(大 学院水産科学院)は温暖化が進めば北太平洋の海水温上昇で北海 道のシロザケの回遊ル-トか゛失われ、「約90年後の北海道では、 シロザケの遡上を見られなくなる可能性が、極めて高い」と指摘。水 産資源を持続的に守る政策への転換を訴える。一方、大崎満教授 (大学院農学研究院)は、道内では温暖化によって基本的に「作物 の生育はよくなり、リンゴなど現在は不適な植物も生育できるように なって「日本の食糧基地としての北海道の重要性は、ますます高ま る」と述べる。急激な気候変動の影響は複雑だ。大切なのは、吉田 文和教授(公共政策大学院)が指摘する通り「正確で納得できる知 識を得ること」から出発し、地域と地球の双方を視野に対処の方法を 考えることだろう。興味深いのは、大崎教授が紹介している「自立的 な循環モデル」を北海道で構築する北大の研究だ。有機農業を再生 可能エネルギ-利用と組み合わせ、余剰な食料生産力はバイオ燃料 に回す。さらにエコツ-リズムや環境教育で。「潜在力ある自然資源」 を持続的に活用して自立仕組みを目指すのである。大崎教授は、北 海道が今後の日本をけん品するモデルとなり得る可能性を正しく認 識することから、北海道と日本の未来が開けてくる。(中川大介=北 海道新聞厚岸支局長)