プロ招き地権者説得
まちの「顔」とも言える駅前などの中心市街地が、全国各地で衰退の一途をたどっている。最近は人口190万人を抱える札幌でさえ百貨店が撤退したり、売上高が激減する状況にある。復興の手だてはあるのか。日本政策投資銀行の藻谷浩介氏に聞いた。
-中心市街地はなぜ衰退したのですか。
「最大の原因は、行政が各地で沼地を埋めるなどして土地区画整備を行い、中心市街地に住んでいた人を郊外に流出させたことです。1960年代に始まった動きで、80年代には市街地の住民を相手にしていた商店がつぶれ始めた。パブル崩壊後は大型ス-パ-や百貨店も閉鎖し、2000年以降にはオフィスビルも空き、空き地や駐車場が目立つようになりました」
-大型店の郊外進出が要因だという指摘が多いですよね。
「郊外店が直接の原因という例もありますが、郊外店も決して調子は良くない。苫小牧のように、イオンができる前に中心部の鶴丸百貨店が閉店した例もあります。問題なのは人口が広く分散し、そのどこでも密度が低くなっていることです」
-どうすれば復興しますか。
「郊外に流出した人を中心市街地に戻し、コンパクトシティ-化することです。人口密度が高まれば活力を維持できる。例えば、夕張は人口が分散しすぎて商業施設が成り立ちにくい状況ですが、隣の(空知管内)栗山町は、夕張と人口規模は同じぐらいなのに、一ヵ所にある程度集中しているため、大手ス-パ-などがある」
-人を中心市街地に移すのは簡単ではありません。
「まず行政が郊外開発をやめないと。そのためには、まだどこも行っていないのですが、各自治体が道路や上下水道、除雪開連のコストと、固定資産税収を、町丁目ごとに計算して公表することです。すでにインフラが整った中心市街地は黒字で、いまもインフラ整備中の郊外は赤字になるはず。それを見れば、これ以上の郊外開発はできなくなります。その上で、中心市街地に住めば在宅介護が安く受けられるなど、何十年もかけて人を誘導するのです。ただ実際は膨大な作業となるので、町丁目ごとのコストを出すのは難しい」
-中心市街地は空き店補や空き地の地権者がそれらを有効活用しないのも衰退の原因とされます。
「地権者は後継者の代になって、地元にいない場合が多い。処分に困っている後継者もいるのですが、不動産活用の素人なので何もできない。そんな地権者を探し出して説得、調整し、地権者の代わりにマンションなどを建設、運営するプロが必要です。意識の高い地元の商店主権地権者が、そういう人を外から連れてくる。香川県高松市の丸亀町商店街などは、そうやって活性化しました」
-そもそもなぜ中心市街地を活性化するべきなのですか。
「住民生活に支障が出るからです。いまは全国的に高齢者が増え、活発に消費する現役世代の人口が減っている。それなのに郊外開発を続けると、上下水道の改修や除雪などのインフラを税金で支えられなくなり、まち全体が機能を維持できなくなる。江別のような大都市近郊でも、コンビニエンスストアすら維持できない地域が出ています。商店街(振興組合)のためというような限られた話ではないのです」
コンパクトシティ- 上下水道や道路など、生活に必要な社会基盤が整備された中心市街地などに人口を集中させ、効率的、持続的な都市運営を目指す政策。新規の郊外開発が進んだことで自治体の行政コストが膨らみ、高齢者などの交通弱者が住みにくくなったことに対し、1990年ごろに米国で議論が活発化し、90年代後半から日本ても提唱されるようになった。
価格高騰 エコにも貢献 ビニ-ル二重 地熱の研究着々
原油価格か゛高止まりする中、道内の農家で灯油や重油など化石燃料を使わない栽培方法が広がっている。ビニ-ルハウスを二重にして太陽光の暖かさだけで栽培する方法などがあり、成育は若干遅くなるが野菜に甘みが増すと好評だ。建材メ-カ-は灯油を使わず地熱を利用した栽培方法の開発も進めており、「地球にも、農家の財布にもやさしい」と実用化を期待する声か大きい。
ハウス13棟でホウレンソウやカリフラワ-などを栽培する伊達市農協野菜生産部会の副会長大滝貢さん(46)。「周りでも、暖房を使わない野菜栽培が増えてます」と話す。3月下旬、外気が氷点下1~同4度でも、ビニ-ルを二重にかけたハウス内は、暖房がなくても3~4度、1日平均で10度を保てる。大滝さんは、寒さに弱いトマトを栽培する3棟では専用の灯油スト-ブを使っており、栽培を始める3月中旬から2ヵ月間、室内を14度ほどに保つ1棟あたり2千㍑の灯油が必要になる。燃料費(1㍑73円換算)は1棟で約15万円に上るが、ホウレンソウなどの無加温栽培では灯油代がかからない。道立花・野菜技術センタ-(滝川市)によると、無加温栽培は8年ほど前から道内で始まった。12月上旬に種まきし翌春に出荷する「縮みホウレンソウ」にも導入され、近年、渡島管内や噴火湾周辺に広がっている。胆振管内むかわ町ではレタスにも導入している。ただ、ビニ-ルを二重にするなどの作業に手間がかかる上、厳寒地での栽培はまだ、難しい面もある。一方、建材メ-カ-積水化学北海道(岩見沢)は道内の大学などと化石燃料を使わない農業用の暖房器具を共同研究している。ポリ塩化ビニ-ル管を地中に埋め、管に取り込んだ外気を地熱で暖めてハウスに送る方法だ。道東で行った試験では、氷点下30度の外気が0・8度に上昇。逆に夏季の外気32度を19度に冷やした実績もあり、実用化に期待が高まっている。管の埋設など初期工事に数百万円かかり、コスト削減が課題だ。石油情報センタ-によると、道内の3月の灯油価格は1㍑79円と前年同月比で11円高い。今後も長期的には高止まりする見通しで、農家の間に無加温栽培がさらに広がるとみられる。
コメ収穫に広がる喜び=野沢 紗智さん(25)=安平町
明るい茶髪。白いフワフワの耳当て。作業服のつなぎは、鮮やかなピンク色。胆振管内安平町の野沢紗智さん(25)は、そんな恰好で畑に出る。いまの季節は毎朝7時半すぎから、ビニ-ルハウスを建てたり、種をまいたり。64馬力のトラクタ-に乗り、土起こしもする。昨年4月、札幌からふるさとの安平町にUタ-ンし、恋人で3代目農家の杉淵正人さん(33)の農地で働き始めた。杉淵さんを手伝いたかったのはもちろんだが、何より農業がやりたかったからだ。サラリ-マン家庭に生まれ、高校卒業後に札幌へ。事務、接客と仕事を変えながらの都合生活。違和感も少しずつためていた。買って食べる野菜のまずさ、ややこしい人間関係-。勤め先の飲食店で客だった同郷の杉淵さんと出会い、交際が始まった。話すうちに故郷の新鮮な空気や、のどかさが懐かしくなった。「私も農業やりたい」。自分から頼んだ。つけづめ外し、化粧を落として、土に足を踏み入れた。春先、温度管理に気を配っていたイネが発芽したときは感動した。夏は、雑草取りに苦しんだ。実りの秋。収穫したコメを母に持っていくと、ほめてくれた。「自分が育てた作物を食べ、喜ぶ人がいるんだとうれしかった」と野沢さん。「マジで農業やるの-。ウチは絶対にムリ」。そう言っていた札幌の友人たちか゛、最近「手伝ってみたい」と興味を持ち始めた。ノギャル仲間はこれから増える。そう確信している。
大切な食べ物は自分デ=藤河 陽子さん(28)=伊達市
頂上に、まだうっすらと雪をかぶる有珠山。農場たつか-むは、そのふもと、胆振館内壮瞥町にある。藤河陽子さん(28)か働き始めてから、半年が過ぎた。毎日、伊達市の実家から通い、農作業と、従業員の食事の調理を担当している。幼いころからアトピ-に悩まされた。一昨年、玄米や野菜などを中心とした食事法と出会い、実践したら、ほぼ克服できた。食べ物の大切さを知った。でも、それを作り出す農業の担いテが少ないと聞き、「それなら自分がやろう」と思い立った。近所のス-パ-で、たつか-むの野菜を偶然見かけ、応募した。今年初めてハウスでトマトやナスの種をまき、苗まで成長した。日々大きくなっていくのを見守るのが、こんなに楽しいとは-。家は建築関連の自営業。高校卒業後、埼玉や京都などで販売やアルバイトなどをしたが、「いま思えば自分に明確な目標がなかった」。たつか-むでは農薬を一切使わず、無化学肥料で栽培する。従業員には障害者も多く、それぞれの力や個性に合わせて働いている。無理がない、ごく自然な生活。居心地がいいと初めて感じた。これまで縁がなかった農業。「これからもずっと続けていきたい」と藤河さんは言う。
知的な職業 楽しさ格別 「ノギャル」、農業をするギャルのこと。
「ノギャル」の名付け親で、若者の食や農業への関心を高めることを目的とした「ノギャルプロジェクト」発起人の藤田志穂さん(24)=東京在住=に思いを聞いた。
農家の高齢化が進み、後継者も少ないと聞き、昨年、ノギャルプロジェくトを立ち上げました。秋田県大潟村でコメづくりに取り組み、田植えや収穫のツァ-には約100人のギャルが参加しました。「生産現場を知るとご飯がおいしく感じる」「いただきますという言葉の意味が分かった」と好評でした。若い女性が農業を仕事としてとらえづらいのは、農業に触れる機会が少ないから。ファッションは身近なので、アパレル業界はすぐに思い浮かぶでしょう。食は大切なので、学校でもっと農業について教えてもいい。農家の方のアピ-ルも大切です。自分の仕事のよさについて、どんどん語ってほしいですね。
成長する芽 子供のよう=西川 志穂里さん(21)・三笠市=
朝6時に目が覚める。外を見て晴れていたら、居ても立ってもいられず車で10分の職場に駆けつける。あの子たちが、暑がっているかもしれないから。三笠市の西川志穂里さん(21)の毎日は、こんなふうだ。「あの子たち」とは、約2千株の小玉スイカの芽。ビニ-ルハウスで育っている。同市の渡辺農場に勤めて2年目の今年から、栽培を任された。夜は寒いので、ビニ-ルで作ったかまぼこ型のトンネルをかぶせる。気温に合わせてトンネルをよけたり、ハウスのドアを開けたりする。「子供のように手がかかるけど、毎日の成長を見るのはとても楽しい」と西川さん。実家は十勝管内大樹町の酪農家。両親は牛の世話で忙しく、家族旅行をしたことがない。農家にだけはなりたくなかった。ただ、ふるさとの自然には愛着があった。高校卒業後札幌の専門学校の自然環境学科で学び、環境教育に興味を持った。就職先として選んだのが、畑を生かした自然体験イベントも行っている渡辺牧場だ。農業で自然と格闘しながら、自然体験イベントで案内を務める。理想の仕事に出会えたと実感している。働き始めてすぐに、分かったことがある。天候と深く結びつく農業は、体力だけでなく、科学的な知識を要求される知的な職業。大変そうにしか見えなかった両親に対し、「初めてかっこいいと思った」。最近、もう一つ気づいた。「種まきも育苗も収穫も、それぞれの農作業は年1回きり。30年続けても30回しかチャンスがないんだなって」。農作業は一つ一つが手を抜けない、貴重な機会なのだ。作物の気持ちが肌で分かり、雑草取りも苦にせずこなせるベテラン農家に少しでも近づきたい。いまはその目標に向かって全力投球するだけだ。
注目される有機農法
19世紀以降、作物の生育を促進させる窒素を主成分とした窒素肥料をはじめ、多くの化学肥料が農作物の栽培に用いられてきました。ですが、化学肥料を長期間利用すると、作物が弱体化して病害虫への抵抗性が弱くなります。そこで、病害虫の被害を防ぐため、農薬も大量に使用されるようになりました。そして、化学肥料や農薬で土壌が汚染されると、生態系もくずれるようになりました。さらに、農作物自体にも化学物質がたまるようになり、それを食べる人間の健康もおびやかすようになったのです。そこで提唱されたのが「有機農法」です。有機農法では、家畜や人の糞尿、食品加工での副産物などの有機肥料を用いて土壌づくりをおこない、土壌の生産性である地力を高めます。それによって、安全で栄養価が高く、食味のよい野菜をつくることができるのです。ただし有機農法は、長期的な視野で土壌づくりをおこない、多大な労力を必要とするため、小規模農家で営むにはむずかしい農法です。ですが、健康に対する関心の高まりとともに、有機農法への注目が集まっています。
生産の周年化と作型
我が国の野菜生産において特徴的なのが「生産の周年化」です。生産の周年化とは、一年を通じて作物を生産・供給できるように栽培することです。日本では、改良品種と栽培技術、栽培環境などを組み合わせた栽培方法の体系を「作型」とよび、豊富な作型を開発して、生産の周年化に成功しました。作型には、以下の種類があります。
- 露地栽培・・・・自然な気候および自然な畑の条件のもとに作物を栽培する方法。適期に適地で無理なく生産されるので、新鮮で栄養価が高く、安全な旬の野菜が栽培される。ただし、自然条件に左右されやすい。
- 施設栽培・・・・ガラスやプラスチックでつくったハウスなどの施設を利用して栽培する。自然災害から作物をまもるとともに、適切な生育環境を維持する。一定以上の品質を保った野菜を1年を通じて供給できるが、露地栽培にくらべて施設の費用がかかる。
- 水耕栽培・・・・土を使わず、農作物の生育に必要な養分やす水分を調整した培養液を利用して栽培され、葉液さい栽培ともよばれる。収穫期を自在に調節でき、いつでも同レベルの野菜を供給できる。ただし、培養液を入れる装置、水や酸素を供給する機械などの設備費が必要。
- 促成・抑制栽培・・・自然な状態の栽培より早く生産して出荷する栽培を「促成栽培」、逆に通常より遅らせて栽培する方法を「抑制栽培」という。
また種のまかれる季節により「春まき・夏まき・秋まき・冬まき」などとよばれる作型もあります。
日本で栽培される野菜の特徴
日本で利用されている野菜は、約150種類ほどといわれています。この野菜の中で、我が国原産のものは十数種類のみで、多くは世界各国からわたってきました。これらは日本各地に伝えられ、やがて、その他に伝えられ、やがて、その地域に合うよう改良された、「在来品種」とよばれる野菜が生み出されるようになります。1950年以降になると、さらに品種改良技術が発達し、異品種同士で交配させられるようになりました。交配して最初に生まれた品種は、均一性(葉や実がそろう)・早熟性(熟期がそろい、収穫期に達するのが早い)・強健性(病害虫などに強い)・多収性(収穫量が多い)などにすぐれており、「F1(エフワン)品種」とよばれ、これまでの在来種に変わり、多く栽培されるようになっています。
光や温度を人工制御して野菜など農産物を栽培す「野菜工場」か゛、新たなビジネスとして東京都内で注目されている。都心のビルは屋内に水田を備え、野菜も生産。空き倉庫を使い、販路を広げる商社もある。無農薬で安定生産できる野菜工場は、冬場の露地栽培が困難な道内にも広がる可能性がありそうだ。
ビジネスマンが行き交う東京・大手町。9階建てビルに入ると、90平方㍍の水田が広がっていた。98個のライトに照らされた稲の向こうには、ガラス越しに高層ビルが見える。人材派遣会社「バソナグル-プ」が3月に設けた「ア-バンファ-ム」。就農支援する同社が農業の可能性を伝えようと開設した。レタスやインゲンなども栽培されている。野菜工場は土を使う場合もあるが、多くは養分入りの水で育てる水耕栽培だ。蛍光灯や発光ダイオ-ド(LED) の光は成長を促す赤や、形を整える青などを組み合わせている。水の成分やライトの使い方で味や栄養成分も変わる。天候に左右される露地物に比べ、野菜工場は温度や水、光など最適な生育環境を保てる。閉鎖空間のため、病害虫の影響も受けにくく、無農薬栽培が可能だ。野菜工場は産地偽装が相次ぎ、「食の安全」を求める消費者の志向とともに増えてきた。不況で本業が不調な異業種が「農地以外でも農業に参入できる」と関心を寄せている。東京・日本橋で紙製品を扱う商社「小津産業」は、都内の空き倉庫を活用。2008年からレタス類を年間60万株生産している。千葉大などの協力で、野菜本来の甘みが出るようにし「日本橋やさい」としてブランド化。都内の百貨店などで1株250円で売り、黒字化のめどを付けた。野菜工場は1980年代に稼働が始まり、09年に50ヵ所に増えた。経済産業省と農林水産省も普及に力を入れ、11年度までに150ヵ所に増やす方針だ。天候が厳しい立地でも生産が可能で、経産省によると08年からは南極昭和基地で小型工場が稼働、越冬隊に野菜を提供している。しかし、生産量は少ない。工場野菜は現在、レタスなど葉物類が中心だが、国内のレタスの総生産量約50㌧のち、工場産は1%程度。農水省は「野菜工場が農業の主役になるとは考えにくいが、さまざまな栽培方法が野菜の安定生産につながる」と説明する。課題は採算性だ。財団法人社会開発研究センタ-(東京)によると、工場産レタスの主な小売価格は300円前後で、露地物の2倍。数億円の設備費や、光熱費を回収するため割高になってしまう。同センタ-の高辻正基理事は「普及には低コスト化と消費者へのPRが不可欠と強調する。実際、太陽の当たらない工場で育つ野菜に違和感を持つ人も多い。工場産レタスを購入した男性会社員(33)は「最初は栽培方法が気になったが、購入すると味が良く、日持ちもした」と話す。
安定生産、道内でも利点
道内の主な野菜工場は09年で3ヶ所だが、研究者らは北海道は好立地と口をそろえる。道内の露地レタスの生産は夏場に限られ、それ以外は道外に頼る。ス-パ-や外食チェ-ンにとって、端境期や天候に左右されない安定供給は魅力的だ。岩見沢で工場を稼働する社会福祉法人クヒドフェアも「道内で販路を開拓するチャンスは十分ある」と話す。工場を大消費地の近郊に設置すれば、輸送コストも抑えられる。研究者らは「天候が厳しい地域ほど安定生産のメリットが生かせる。販路などで露地野菜とすみ分けも可能」と話し、道内に熱い視線を送っている。
土に返せる
ピ-トモスは、土壌中の植物の茎や地下茎が数千年単位でゆっくりと分解されて繊維質が残ったもので、保水性があり微生物がすみつきやすい。ピ-トモスによる生物脱臭はドイツなど欧州が先進地で当初は豚舎で活用されていた。日本では1980年代に水処理最大手の栗田工業(東京)と東京工業大学が共同研究を開始した。栗田工業は、国内主生産地で耐久性にも優れた石狩川のピ-トモスを採用。88年には最初生物脱臭装置が完成し、下水処理場や食品工場で利用されてきた。脱臭装置には人工の線維質も使われるが、栗田工業は顧客にピ-トモスを推薦している。開発本部の日名清也さん(49)は「人工線維の多くは石油資源から作られるがピ-トモスは腐って土に戻る。自然に返すことができるんです」と話す。
土壌か改良のピ-トモスは近年、家庭で行う生ごみ堆肥化への活用が進む。特に知られているのが、「暖ボ-ルコンポスト」。電動生ごみ処理機や生ごみ堆肥化容器(土の上に置くコンポスト)と比べ、費用が安く室内にも置けるため、庭のない家庭やマンション、北海道など積雪寒冷地でも取り組みやすいとして人気が増している。ホ-ムセンタ-などで入手できるピ-トモスと、もみ殻の薫炭などを混ぜて段ボ-ルに入れ、生ごみを投入してこまめにかき混ぜると、ピ-トモスにすみつく微生物の働きて゛生ごみが分解される。段ボ-ルの大きさにもよるが、3ヵ月で約30㌔の生ごみを堆肥としてリサイクルできる。北海道農材工業によると、ごみ減量化など環境意識の高まりとともに「7~8年前から全国的に生ごみ堆肥化へのピ-トモス活用が増えてきた」という。道内でも自治体や消費者団体による講習会が開かれ、普及が進んでいる。
世界初 低コスト実現、来月発売 エコマックスジャパン
日本家畜貿易(帯広)子会社で環境関連機器製造・販売のエコマックスジャパン(東京)は、円形蛍光灯型の発光ダイオ-ド(LED)照明を開発し、4月1日から発売する。同社によると、円形蛍光灯型のLEDは世界で初めてという。12日まで東京都内で開かれたLED機器の展示会で発表した。蛍光灯30型相当の14㍗照明を1万2千円程度、32型の15㍗を1万3千円程度で発売する。これまで低コストで基盤を円形加工する技術が課題だったが、同社は中国の系列工場で製造するなどして克服。新商品は従来の同型の蛍光灯と比べ、消費電力は半分以下、明るさは約1・5倍になるという。明るさを無段階調整できる6㍗(白熱電球60㍗相当)の電球型LED照明も開発。4月1日から6千円程度で発売する。小森唯永社長は「明るさと安さで他社製品に負けない自信がある。省エネ時代をリ-ドしたい」と話す。
東京電力、東大と共同で
東京電力は17日、東京大学と共同で洋上風力発電の実証研究を国内で初めて本格的実施すると発表した。独立行政法人新エネルギ-・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で機関は5年。東電は実証研究での成果を踏まえ、洋上風力発電の本格展開を検討する考え。実証実験では、千葉県銚子市南沖合約3㌔地点に高さ約80㍍の塔を建て、風速や風向、波の状況を観測する。期間後半には風力発電機を設置して、設備の安全性や環境への影響も検証する方向だ。約13億円の実験費用は全額NEDOが負担する。NEDOや東電によると、洋上風力発電は海中の基礎工事などで建設費用が陸上の1・5倍程度と割高だが、強い風か゛安定して得られるため、採算は取れるととう。欧州では一般的だが、地震や台風が多い日本では建設されなかった。
高騰する輸入肥料原料 環境省が実験へ
環境省は本年度、し尿や浄化槽の汚泥に含まれるリンを回収するモデル事業を行う。リンは肥料の原料などとして不可欠だが、日本は全量を輸入に依存。近年、取引価格が高騰して確保が危ぶまれていることから、廃棄物からの資源活用に期待が寄せられている。リンは農産物を通して人体からは排せつされ、浄水層の汚泥にもたまる。モデル事業では、今後選定する全国二ヵ所のし尿処理施設に専用プラントを設置、リンを回収し肥料工場などに引き取ってもらう。リン回収は既存の技術で可能だが、回収量がわずかで採算ペ-スに乗りづらく、取り組みが遅れていた。今回は代表的な2つの手法について、各一ヵ所で実証実験し、実用化への課題を探る。現在国会で追加経済対策として審議されている本年度補正予算に関連予算9千万円を計上した。財務貿易統計によると、日本のリン鉱石輸入量は2008年度74万㌧。リン資源リサイクル推進協議会東京などによると、バイオエタノ-ル製造のため肥料の需要が世界的に高まり、リン鉱石の価格は約2年前から上昇を続けている。
「エコフィ-ド」生産倍増目指す
農林水産省は、食品残さを使った家畜飼料「エ コフィ-ド」の認証制度を本年度内に始めること を決めた。飼料の品質を保証することで農家の 利用を促し、2015年度までのエコフィ-ド生産 倍増を目指す。同省などによると、国内の食品 残さ発生量は飲食店や食品工場で年間1100㌧、道内も食品加工 残さだけで約40万㌧に上る。ただ、飼料化はその2割にとどまり、 4割は廃棄されているのが実情。残さの飼料への混合比や栄養価も まちまちで、農家が使いづらい問題もあった。新制度は重量比で食品 残さを20%以上使い、タンパク質、脂肪など栄養成分の記録を残す などの基準を満たした飼料をエコフィ-ドと認証。パンくず、酒かすな ど利用度の低い残さも5%以上使うこととし、幅広い残さの利用を促 す。エコフィ-ド販売業者は、専用の認証マ-クを飼料の容器などに 表示できる。同省は今後、エコフィ-ド由来の畜産食品にも表示を広 げ、消費者にアピ-ルしたい考えだ。
内閣府世論調査 「自給率向上を」93%
食品を買うとき、輸入品より国産品を選ぶ人が 89・0%に上ることが15日、内閣府が9月に実 施した世論調査で分かった。食料自給率を高め るべきだとの回答も93・2%を占め、輸入品に対 する信頼感が著しく低下している実態が浮かび 上がった。農林水産省は「中国製ギョ-ザ中毒 事件や世界的な食料危機などが影響したのでは ないか」と分析している。国産品を選ぶと答えた 人は、2000年の同種調査より7・1ポイント増え、 特に主婦や60歳以上の割合が高かった。輸入 品より国産品を選択する際の基準(複数回答)は「安全性」が89・1% と最も高く、「品質」56・6%、「新鮮さ」51・6%と続いた。「おいしさ」は 28・0%だった。輸入品を選ぶと答えた人はわずか0・5%、「特にこ だわらない」は10・1%で、選択する際の基準はいずれも「価格」が トップだった。現在40%(カロリ-ベ-ス)の食料自給率については 「低い」が79・2%、「妥当な数値」が8・3%、「高い」が7・3%だっ た。食料不足や価格上昇への対応(複数回答)では「食品破棄を減 らすため食べ残しを減らす」が51・2%、「外食や総裁の購入を控え、 家で調理する」が488・%、「国産農産物を購入する」が43・2%で 上位だった。調査は全国の成人男女5千人を対象に実施、回収率は 62・9%だった。