北大も「雇い止め」不安
北大教職員組合(宮崎隆志委員長)は、北大の非正規職員を対象に「雇い止め」など不安定な労働実態について初めての調査を行い、結果をまとめた。フルタイムで働く職員の6割が担当業務の内容は正規職員以上か同じと感じている一方、低賃金や雇い止めで生活に不安を抱いている現状が明らかになった。
調査は昨年12月から今年2月にかけ、主に事務系一般職の非正規約8百人に質問を送り、267人から回答を得た。うち週40時間勤務のフルタイムで働く契約職員60人、週30時間以内の短時間勤務職員167人について分析した。北大の労働契約は原則1年、期間は最長3年とされている。担当業務の内容は契約の61%、短時間の39%が「正規以上」「正規と(ある程度)同じ」と回答。「比較できる正規がいない」が契約で29%、短時間で33%あり、同組合は「正規を置かず、実質業務を非正規に一任している表れ」と指摘する。一方、生活面では、税込み年収は契約が平均約350万円、短時間は百数10万円。契約の77%、短時間の65%が「生活が苦しい」と感じ、全体の8割以上が「次年度への不安か゛大きく業務に打ち込めない」「仕事の流れをつかんだころに雇用満了になってしまう」などとして雇用期限の撤廃を望んでいた。宮崎委員長は「非正規職員は大学の中核的業務を担っているが、処遇が見合っていない」として、大学側に待遇改善を求める方針。
待遇改善の動きなし 大学側
「来年どうなるか不安でつらい」「1年契約でいいから期限撤廃を」-。北大教職組合が実施した非正規職員の実態調査では、「雇い止め」の不安を抱えながら大学を支える非正規職員の切実な姿が浮かび上がった。「分かっていて選んだ職場だから仕方ない。専門性か゛評価されないのは残念ですが・・・」。北大総合博物館で資料管理を担当する持田誠さん(36)はあきらめがちに言う。「研究支援推進員」という名の短時間勤務職員で、今年が3年目。来春以降、ここでは働けない。学芸員の資格を生かし、勤務は週5日、1日6時間。諸手当はなく、年収は140万円程度。それでも自費で研修会に参加し、この春には乾燥から貴重書を守るため、展示室に加湿器を置くことを職場で提案。1ヵ月の試行中、休日も加湿器に水を足しに通った。今後、働きながら職を探すが、「正規のポストはほとんどなく、「流しの学芸員」にならざるをえない」。
学部事務室で働く短時間勤務の30代女性は、履修届受理区資格取得にかかわる重要な役割を担い外部の問い合わせにも応対。「責任の重さに条件が見合ってない」と感じる。月収は12、3万円という。国立大の多くは2004年の独立法人化に合わせ、厚生労働省が雇用トラブル防止のために定めた基準を参考に、非正規の雇用期限を3-5年の間で定めた。国からの運営費交付金が減る中、正規職員を減らし、非正規に恒常的な業務を任せる大学は増えている。ただ、非正規の待遇改善の動きも。全国大学高専教職員組合(東京)の調査では「回答した国立43大学のうち、今春から7大学が非正規の雇用延長や雇い止めの実質廃止に踏み切った。同組合は「大学自身が、雇い止めは効率的でなく、教員研究活動にマイナスと気付き始めた」とみる。約30年前から非正規の雇用期限を3年としている北大は「現時点で期限撤廃の考えはない」(人事課)と言う。「期限をなくし、非正規職員の1年契約を繰り返し更新することで正規のように継続的に雇用するのは、必ずしも妥当とは言えない」との判断だ。教授や正規職員からは「優秀な人には長く働いてほしい」と一律雇い止めに疑問の声も出ている。
北大の非正規職員 約4600人(昨年6月現在)を 大学が直接雇用している。教職員組合によると、研究員や学生アシスタントを除く一般職は2千人弱で、事務職は情報処理や語学を生かした留学生対応、技術職は実験補助や観測など、専門的義務も少なくないという。正規職員は約4200人(同)