金沢大などの研究チ-ム ガンマ線放出の仕組み解明
「ガンマ線パ-スト(GRB)」と呼ばれる宇宙最大級の爆発現象が、ブラックホ-ルを取り巻く強い磁場の作用で生じていたことを、金沢大などの研究チ-ムが宇宙ヨット「イカロス」に搭載した検出器による観測で解明した。成果は19日から鹿児島市で開かれている日本天文学会の秋季年会で発表される。 GRBは、巨大な恒星が寿命を迎え、爆発を起こした後に残るブラックホ-ルの中心から吹き出す「ジェット」とともに、非常に強いガンマ線が爆発的に放出される現象。発生には強力な磁場が関与していると推測されていたが、観測による証拠は見つかっていなかった。 金沢大の村上敏夫教授らの研究チ-ムは、イカロスの検出器が昨年8月に観測したGRBを分析。観測されたガンマ線に、光(電磁波)の振動の向きがそろう「偏光」があることを検出した。また、偏光の方向が、約100秒間続いたGRBの前半と後半で違うことも分かった。研究チ-ムは、偏光は強力な磁場が存在する場合にしか生じないことから、偏光は強力な磁場が存在する場合にしか生じないことから、偏光の検出は磁場の存在を裏付けると推測。また、短時間で偏光の向きが変わったことから、ジェット内に複数の強力な磁場が存在しており、これらの磁場が電子に高いエネルギ-を与えて強力なガンマ線を放出させていると結論付けた。
宇都宮大など 半導体 容量10倍も
半導体を使った電子部品の小型化に向け、研究を進めていた宇都宮大(宇都宮市)や長岡技術科学大(新潟県長岡市)などのグル-プが、半導体に回路を描く光の微細化に成功した。波長が従来の30分の1で、より小さな回路を描くことができる。グル-プの東口武史・宇都宮大准教授は「実用化すれば同じサイズの電子部品でも容量が10倍以上になる。スマ-トフォン(多機能携帯電話)でDVDが見られるほど性能が上がり、コストダウンにもつながる」としている。研究論文は米専門誌に掲載され、英専門誌「ネイチャ-フォトニクス」でも取り上げられた。宇都宮大によると、回路はレ-ザ-光を使って半導体の表面に描く。波長が短いほど細い線が描けるが、最先端の装置でも波長は193ナノ㍍(ナノは10億分の1)。線の幅は細くて30ナノ㍍程度だ。グル-プは、金属にレ-ザ-光を当てると金属自体からより波長の短い光が出ることに着目。以前から金属のスズで実験していたが、レアア-ス(希土類)を材料にしたところ6・5~6・7ナノ㍍と、より短い波長の光が得られた。幅10ナノ㍍以下の線も描けるという。昨年、レアア-スを使った研究に着手。レ-ザ-光の波長の調整を重ね、レ-ザ-光に対するレアア-スの光のエネルギ-の割合(発光効率)も、実用の可能性が一気に高まる1%を超えた。東口准教授は「発光効率をさらに上げ、10年後の実用化を目指したい」と話している。
※半導体部品の製造 半導体を使った電子部品の製造過程では「ステッパ-」と呼ばれる装置を使い、光で回路図を“縮小コピ-”して半導体の表面に焼付ける。最先端のステッパ-は光線にレ-ザ-光を使うが、次世代型も開発中。レ-ザ-光を金属に当てると金属がプラズマ状態となり、プラズマが出す光を光源とするタイプで、数年以内の実用化が見込まれている。
千葉大 パソコンの小型化に
パソコンなどに記録された情報を読み取るのに必要な磁気センサ-に有機分子を利用し、世界最小のセンサ-の開発に成功したと、千葉大の山田豊和特任准教授(ナノサイエンス学)らの国際研究チ-ムが20日、英科学誌ネイチャ-・ナノテクノロジ-(電子版)に発表した。山田准教授によると、インクや顔料などの発色効果に有用なフタロシアニン有機分子をセンサ-に利用。分子1個は100万分の1㍉で、金属やレアア-スなどの無機物を使った従来のセンサ-の100分の1程度の大きさとなる。従来の約10倍の感度があり、安価で耐久性にも優れているとしている。山田准教授は「パソコンなどの小型化につながる環境に優しい製品の開発に役立つ」と話している。
米の湖で発見 生命の要素異なる
[ワシントン共同]通常の生物にとっては有毒なヒ素を、生命活動の根幹となるDNAに取り込んで成長できる細菌を発見したと、米航空宇宙局(NASA)などの研究グル-プが、米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
地球上の生物は、主に炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄の6元素でつくられており、これらは生命活動に不可欠と考えられている。だが、この細菌はリンをヒ素に換えても生きることができるという。現在知られているものとは異なる基本要素で生命が存在する可能性を示し、生命の誕生、進化の謎に迫る発見といえそうだ。専門家らは生命を構成するのが6元素であることを前提に地球外の生命探しを進めているが、研究グル-プは「どのような物質を追跡の対象にするか、より真剣に考えなければならない」と指摘している。研究グル-プは、米カリフォニア州にあるヒ素濃度の高い塩水湖「モノ湖」に生息する「GFAJ1」という細菌に着目。ヒ素が多く、リンが少ない培養液で培養すると、リンが多い培養液よりは成長は遅くなるものの、細胞数が6日間で20倍以上に増え、GFAJ1はヒ素を取り込んで成長することを確認した。細胞内の変化を調べると、DNAやタンパク質、脂質に含まれていたリンが、培養によってヒ素に置き換わっていた。リンとヒ素は化学的性質が似ているため、このような現象が起きたと考えられるが、どのように置き換わるかや、置き換わった分子が細胞の中でどのように働くかは分からないとしている。
進化史上古くない 生命の初期進化を研究する山岸明彦東京薬科大教授の話
リンの代わりに化学的性質が似ているヒ素を利用する微生物の存在は、理論的には考えられたが、実際に見つけるのは難しかった。大腸菌に近い仲間なので、進化史上、それほど古くないのではないか。今回の発見により、「生き物」というものの考え方がかなり広がった。地球外生命を探す際の視野も広げる必要がある。例えば、土星の衛星タイタンには液体のメタンがたくさんあり、水の代わりにメタンを利用する微生物が存在するかもしれない。
米研究チ-ム 世界初、人工生命へ前進
[ワシントン共同]人の工的に合成した細菌のゲノム(全遺伝子情報)を別の細菌の細胞に組み込み、生きた細菌を作ることに成功したと、米国のクレイグ・ベンタ-博士が率いる研究チ-ムが20日付けの米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。ウイルスを人工的に作った例はあるが、ゲノムがより複雑な細菌での成功は世界初という。細胞膜や細胞内の物質は人工合成していないため完全な「人工生命」ではないが、その実現に近づく画期的な技術と言える。チ-ムは今後、バイオ燃料を製造したり、有害物質を分解したりする有用な微生物作製を試みたいとしている。一方、人工的な生物を環境中で利用した場合、ほかの生物や自然環境にどのような影響を与えるのか未解明な点が多い。生物兵器開発に利用される恐れも指摘され、規制を求める声も強まりそうだ。作製したのは、「遺伝情報として約100万個の塩基対を持つ「マイコプラズマ・ミコイデム」という細菌とほぼ同じゲノムを持つ細胞。チ-ムは、ミコイデスのゲノムの設計図を基に千塩基対程度の短い情報を持ったDNAの断片を化学的に合成。さらに、DNA断片を大腸菌や酵母菌に組込んでつなぎ合わせ、完全なゲノムを合成した。次に「マイコプラズマ・カプリコルム」という別の細菌を特殊な液体に入れて本来のゲノムを失わせ、そこに合成ゲノムを移籍。すると、カプリコルムの細胞内で合成ゲノムが働き始め、細胞の自己複製が始まった。また、この細菌の外見は正常なミコイデスに似ていたほか、ミコイデスと同じタンパク質しか生成しなかったという。
世界初 資源保護へ一歩前進
独立行政法人水産総合研究センタ-(横浜市)は8日、卵から育てたニホンなぎウナギから採取した卵と精子を使って2世代目のウナギを人工ふ化させる「完全養殖」に、世界で初めて成功したと発表した。現在のウナギ養殖は、漁獲したシラスウナギと呼ばれる天然の稚魚をウナギの成魚にまで育てているが、過去30年余の間にシラスウナギの漁獲量が10分の一程度まで急減、資源保護が急務になっている。人工ふ化の成功率はまだ低く、年間に必要とされるシラスウナギ数億匹を量産するメドは立っていないが、シラスウナギの安定供給と資源保護に向けて一歩前進した。同センタ-の養殖研究所(三重県)は2002年、人工ふ化させた仔魚を育ててシラスウナギにまで変態させることに世界で初めて成功した。このシラスウナギが成長して体長45~70㌢の親ウナギになったため、同研究所と鹿児島県の志布志栽培魚業センタ-で、ホルモン処理して性成熟を促し、今年になさて精子と成熟卵を採取することに成功。この精子と卵を使った人工授精で3月26日に約25万粒の受精卵が得られ、翌日、仔魚がふ化した。4月2日から人工的に与えた餌を食べ、順調に成長しているという。人工ふ化で得られた親ウナギから精子と卵を採取して人工授精ができるようになると、飼育環境に適応したウナギを選んで掛け合わせ、人工ふ化の成功率を高めることができるようになると期待されている。
高い強度、製造簡単 医療など応用に期待
化粧品や歯磨き粉に使われる天然の粘土と、粘土をぱらぱらにする薬剤とをわずかに溶かした水に、新開発の有機高分子化合物を加え、混ぜること数秒。あっという間に水が固まり、98%が水の新素材の出来上がり!相田卓三東京大教授が生み出したのが、ゲル状の新素材「アクアマテリアル」。こんにゃくの500倍の強度や力をかけて変形させてもすぐに元に戻る性質、塊同士をくっつけやすいという特徴がある。ちょうネクタイの形をした有機高分子化合物がぱらけた粘土と粘土をつなぎ、3次元の微細な網の目構造をつくっている。ほとんどが水でできており、そして強く、また簡単に作れるため、手術で傷口をふさぐ部材にするなど医療分野への応用が期待される。将来は、プラスチックに替わる環境に優しい素材としての利用も視野に入れる。
広島・鞆の浦で就航
幕末の志士坂本龍馬が瀬戸内海で乗船中に衝突、沈没した蒸気船「いろは丸」を模した公営観光渡船「平成いろは丸」が9日、広島県福山市の景勝地・鞆の浦-仙酔島間に就航した。福山市は、今月から放映が始まったNHK大河ドラマ「龍馬伝」のロケ地の一つ。市の名前と同じ龍馬役の福山雅治さんの人気にあやかり、新たな観光の目玉として集客アップに期待している。いろは丸は、全長約54㍍、約160㌧の英国製で伊予州藩が所有。海援隊が借り受け、1867年に武器などを長崎から大阪に向けて運ぶ途中、備後灘で紀州藩の蒸気船「明光丸」と衝突し、えい航中に鞆の浦沖で沈没した。平成いろは丸は全長約22㍍、19㌧と本物より小ぶり。定員は99人で、木目調の船内には龍馬の写真や古い操舵輪、コンパスも設置され、レトロな雰囲気が漂う。仙酔島では、11月まで龍馬といろは丸展も開催される。
三菱化学 専用コンテナ開発
三菱化学は12日、砂漠や寒冷地、都市などさまざまな場所で気候や環境に左右されずに野菜を栽培できる「コンテナ野菜工場」を開発したと発表した。水の循環・再利用設備や太陽電池などの発電・蓄電システムを備え、省エネ性も高い。一基5千万円からの販売で農業に適さない地域への投入を想定。1号機は4月、中東・カタ-ルに投入する。野菜工場は、幅2・4㍍、高さ2・9㍍、長さ12・2㍍のコンテナを使いパッケ-ジ化したシステム商品。蛍光灯や発光ダイオ-ド(LED)も照明を利用した水耕栽培で、病害虫の侵入がなく無農薬での栽培も可能。レタスや小松菜などの葉物野菜を1日約50株収穫できる。太陽電池電力を商用電源と併用することも可能で、将来的には太陽光発電のみて゛の稼働を目指す。
インドネシア近海 福島の水族館、世界初
「生きた化石」と呼ばれる古代魚シラカンスの稚魚の撮影に、福島県いわき市の水族館「アクワマリンふくしま」の調査隊がインドネシア近海で成功し16日、発表した。世界初という。謎に包まれたシ-ラカンスの生態を解明する上で極めて貴重としている。同水族館によると、10月6日にインドネシア・近海で発見。アフリカ種とは別種のインドネシア種で、水深161㍍にある岩の割れ目の中にいた。自走式水中カメラ(ROV)で撮影した。シ-ラカンスは魚類から両生類に進化する過程の特徴を残しており、雌の胎内で卵をかえして体長30㌢程度にまで稚魚を育てるとされる。撮影された個体も生後間もないとみられ、体長31・5㌢だった。同水族館は今回の発見でシ-ラカンスが通常の生息域で出産し、稚魚は成魚と同じく日中、岩のすき間などに隠れて暮らしているとみている。アクアマリンふくしまの担当者は「シ-ラカンス発見以来、解明されていなかった生態の謎に大きく近づくことができた」としている。