群馬大が物質発見
研究に適したモデル生物である細胞性粘菌を使って、細胞が特定の物質に向かって移動する「走化性運動」を促進したり、抑制したりする物質を、群馬大生体調節研究所の久保原禅准教授(細胞生物学)らのグル-プが発見した。走化性運動はがんの転移のほか、白血球が外敵を撃退したり、傷が治ったりするのにも関与しているとされ、詳しい仕組みを解明することでがんの転移を防ぐ薬などの開発につながる可能性があるとしている。久保原准教授「走化性運動を促進したり抑制したりする天然物質の発見はおそらく世界初ではないか」としている。細胞性粘菌は、土の中に生息する微生物。胞子から発芽した単細胞の粘菌アメ-バは餌がなくなると集合して多細胞体となり、最終的にカビのような姿の「柄」と「胞子」に分化する。集合する際には、自ら「サイクリックAMP」(cAMP)という物質を放出し、その走化運動で集まるという性質を持つ。久保原准教授らは寒天のプレ-トの上にcAMPと粘菌を一定間隔で置いて、さまざまな条件を加えて粘菌細胞の移動の様子を調べた。その結果、「DIF-1」という物質が粘菌の走化性運動を抑制し、構造の似た「DIF-2」という物質が運動を促進する働きがあることを突き止めた。2種類のDIFはcAMPとは別に、粘菌自らが分泌。粘菌の多細胞体から柄と胞子への分化を促す性質があることは知られていたが、DIF-2はその働きが弱く、何のためにあるのか分かっていなかったという。細胞がある特定の物質に向かって効率良く移動する「走化性運動」は細胞の基本機能の一つだが、詳しい仕組みは未解決で、世界的には白血球を使った研究が活発に行われている。走化性運動を促進すれば免疫力を活性化し、阻害すれば転移や炎症を抑えることができると期待されている。
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