15年目の「甲子園」 誇り 見え始めた経済効果
1985年に「写真の町」を掲げた上川管内東川 町の試みは当初は町民の間でさえ戸惑いが大 きかった。「写真甲子園」など写真関連の事業に かかる費用は例年約五千五百万円。このうち寄 付などを除く約4割は町の持ち出しだ。「写真で メシが食えるのか」「福祉や道路整備などもっと 必要な事業がある」という批判は、今も完全にぬぐい去られていない。 それでも高校の美術の教科書で取り上げられたり、漫画化されたり と注目を浴び、さらに小さいながら経済効果の芽も見えてきた。今年 6月、広告写真制作のアマナホ-ルディングス(東京)の全国の株主 のうち約二千人に、東川町産のコメやトマトジュ-スを詰め合わせた 株主優待ギフトが届いた。「写真甲子園を続け、写真文化を育てて いる東川を応援したかった」と同社は説明する。農産物の販路として はほんの一歩だが、同町の市川直樹・写真の町課課長は「東川産 品の販売や観光客誘致につなげたい」と期待を寄せる。9月には、写 真甲子園を縁としての修学旅行誘致も初めて実現する。甲子園出場 常連の大阪市立工芸高から2年生約240人が町内宿泊を予定。同 校撮影研究会顧問の花畑雅之教諭(55)が、「生徒に写真甲子園の 舞台の雄大な自然を見せたい」と提案した結果だ。かつて東川は外 に発信するうたい文句に乏しく、町民は「旭川の隣町」「大雪山の町」 などと説明していた。「写真の町・東川の松岡です」。現在、松岡市郎 町長は「写真甲子園を全国区に育て、町のイメ-ジアップにつなげた い」との思いから町外の会合で必ずこう名乗る。役場職員の電話応 対も同様だ。写真甲子園出場が縁で東川町に婚姻届を提出した若者 もいる。大阪で写真館に勤める藤井太郎さん(31)来年1月、東川に 出したいという。「東川は情熱のある町。僕が写真を続ける原点だと 話したら、彼女も喜んでくれた」と照れ笑いをする。町経済に大きく寄 与するまでには、まだ時間がかかるだろうだが、「写真の町」の誇り は、町民の胸の内に着実に育ちつつある。
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