追い風 地域振興へ膨らむ夢
農業を基幹産業とする十勝管内鹿追町では、 乳牛のふん尿を原料とするバイオガスプラントを 核に、マチづくりへの夢が大きく広がっている。 吉田弘志町長は「環境、エネルギ-、食糧という 世界的な課題を前に、バイオガスを取り巻く情勢に追い風が吹いて きた。ト-タルな形でプラントを地域振興に生かしたい」と力を込める。 町はすでに、年間2800㌧と試算されるプラントの二酸化炭素(CO 2)排出削減効果をもとに、CO2排出権の販売に向けて証券化に着 手。自然に優しい有機肥料として、メタンガスを採取した後の消化液 の活用で町内農作物のイメ-ジアップも狙う。さらに、順調な稼動状 況を踏まえ、バイオガス利用の次のステップも見据える。その一つが、 電力よりエネルギ-効率が高いガスの直接利用だ。町農業振興課の 大井基寛課長は「北電への売電価格には、欧州などのようにクリ- ン電力に対する上積みがないだけに、直接利用のほうがメリットが大 きい。まずは、ふん尿の運搬車や温室栽培、温水プ-ルなどの燃料 として実用化を検討していく」と話す。吉田町長は「夢エネルギ-自給 のマチ。インフラ整備など国のエネルギ-政策に依存する部分も多い が、各家庭の電力や熱源までバイオマスガスでまかなうことは技術 的には可能だ。まずは、現在のプラントの安定稼動に全力をクリアし ていきたい」と語る。町内にはプラント処理能力の10倍以上の1万8 千頭の乳牛が飼育されており、夢を実現するための「資源」には十分 だ。帯築大大学院の梅津一孝教授は「北欧では圧縮したバイオガス を車両だけでなく列車にも利用している。プロパンガスのように移動し ても使える。『バイオガスビジネス構想』とも呼ばれる鹿追の取り組み は、国などの支援があれば十分実現できる」と期待する。ふん尿処理 の労力軽減や消化液の効果を目の当たりにし、プラント利用組合員以 外の農家から新たなプラント設置を求める声が強まっている。プラント 増設には建設費など初期投資の手当てに課題があるが、町は現在の プラントのノウハウを生かす形で、今後は個人農家へのプラント設置の 道を探っている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます