パン教室「カフェ・タブリエ」主宰 森本 まどか 金属窯普及で「バケット」誕生
19世紀のことです。硬くて酸っぱくて黒い、丸形 のパンばかりだったフランスに、棒状のパンが登 場。たちまち、「棒型」が主流になりました。この 形の変化は、「都市化」が生み出したのです。そ のころのフランスは、パリなど都会の人口が膨らみ、街中にパン屋が 増え始めていました。田舎の共同の石窯で一度に焼き、何日も日持 ちさせていたパンの需要は減り、都会の人は毎日、街中のお店でパ ンを買うようになりました。当時の石窯は、「かまくら」のように石をド -ム形に積み上げた構造。パンを焼く炉床は円形で、効率よく一度 に多く焼くには、丸い形が最適でした。街中のパン屋では、金属製の 窯か゛石窯に取って代わりました。金属窯の炉床は、加工しやすい 長方形です。長方形の炉床でたくさん焼けるのは、細長いパンだっ たのです。こうして、世界中で最も親しまれているフランスパンである、 長くて棒状の「バケット」(杖という意味)が誕生しました。ボソボソとし た口当たりの丸いパンと比べ、熱の通が良い金属窯で焼き上げたバ ケットの皮は、独特のパリパリした歯応えがあります。今までにない 食感は、革新的だったに違いありません。
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