Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

昭和の匂いを感じる中学生~その1

2009-12-29 | 日本の中学校
今日は昨日と対照的な中学生の話。
息子を始めとして、日本にはときたま一風変わった中学生というのはいるもんだ。
息子は妙に昭和を引きずって生きている。

根本的には歴オタ(歴史オタク)なんだけど、きわめつけは太平洋戦争オタクってやつ。
ありとあらゆる太平洋戦争に関する本を読んでいて、(勿論第一次世界大戦もだ)各国の戦略やら有名な軍人たちの細かい戦略や飛行機の細かい性能など、現代の中学生にしては戦争に精通している。
11月から週刊雑誌「第二次世界大戦データファイル」(戦略・人物・兵器--7年間の全記録)が出始めて、これをすみずみまで読む。
第1回に、ドイツのロンメル将軍、ヘッジホッグという兵器、エースパイロット坂井三郎がでていたら、「おおっ、ロンメル将軍!」と叫んで、飛びついていたので、買ってやったら、毎週買うようになった。
(しかし、最近は休刊になっちまったらしく、息子はがっくり!)
きれいにさまざまなデータを集めてファイルしている。

そうそう、NHKの「坂の上の雲」も食い入るように見ていました。
こちらは、明治時代ですけど、当時の有名な軍人の秋山兄弟(もっくんと阿部ちゃん演じる)と正岡子規(香川照之演じる)が主人公なので。



大日本帝国海軍連合艦隊司令長官、東郷平八郎(渡哲也演じる)や大蔵大臣をやった高橋是清(西田敏行演じる)がでてきたときは、興奮していた。

息子は決して、戦争に参加したいとかそういうわけではない。
戦争の悲惨さを充分に理解した上で、その時代の人々の我々には想像できないような強靭な精神力のようなものに惹かれているのだろう。
息子は、もうすぐ始まる受験の面接で、もしも「一番尊敬する人は?」と聞かれるなら、「栗林忠道」と即答するという。(2番目はメジャーリーガー松井秀喜)
硫黄島総指揮官で、映画「硫黄島からの手紙」の主人公になった人だ。
それほど深く、栗林中将のことを尊敬しているらしい。
今日、古本屋で、「散るぞ悲しき 硫黄島総司令官・栗林忠道」(著梯久美子 新潮社)という本があったので、遅まきのクリスマスプレゼントとして渡したら、大喜び。


この本は、アメリカ駐在中、シカゴの盟友T君から借りて何回も読んでいた。

T君も息子に負けず劣らず太平洋戦争オタク。
T君は現地校に通っていたのだが、家では昭和天皇の終戦を告げる玉音放送や東條英機の学徒出陣のときの演説、はたまた軍歌などを聞いて暗記していたというから、すさまじい。
そして、息子とT君がたまに公園で会うと、30分ぐらい太平洋戦争のことを語り合ってから遊ぶのがつねだったそうな。
隣で、M君が2人の会話を盗み聞き、ギョッとした顔で引いていたという。
そりゃそうだ、アメリカの広々とした美しい公園で、戦時中の戦略やら日本軍人の話をする 中学生たちっているのかな?

息子が太平洋戦争に興味を持ったのは、シカゴ日本人学校の小学3年生のとき。
このときの担任のオカムラ先生が熱血で、さまざまな悲惨な戦争の写真集などを子供たちに見せ、話もしてくれたという。
それから息子は原爆に関する写真や本を読み、猛烈なショックを受けながら、どんどん深みに入っていったのだろう。
なぜ日本がそういう戦争に巻き込まれていったのか?
そういう問いをしたら、延々と何時間も話し続けるであろう。
戦争に関することなら、おそらく5日間はずっと話し続けられると昨日言っていた。
広島、長崎の原爆記念日の日は、必ず黙祷をささげるのが習慣。
今年、長崎の記念式典を見るのをのがしてしまったときは、「しまった!黙祷をささげるのを忘れた!」と叫んでいた。

息子たちの考えていることはよくわからないが、戦争の悲惨さを理解し、それを後世に伝えていけるなら、戦争オタクでもいいじゃないか。
息子は私のように書く仕事がしたいと言っているが、今後も息子なりに戦争を検証し、戦争を体験した人々に取材して、私たちに知らせて欲しいものだ。



栗林忠道辞世3首を捧ぐ 

国の為重きつとめを果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき

仇討たで野辺には朽ちじ吾は又 七度生まれて矛を執らむぞ

醜草(しこくさ)の島に蔓る(はびこる)その時の 皇国(みこく)の行手一途に思ふ

最初の句の「散るぞ悲しき」が、新聞では「散るぞ口惜し」と変えられているのである。国のために死んでいく兵士を、栗林は「悲しき」とうたった。それは、率直にして痛切な本心の発露であったにちがいない。しかし国運を賭けた戦争のさなかにあっては許されないことだったのである。

(「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」著梯久美子 p23 新潮社より)


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