象が転んだ

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3次方程式のガロア群(終盤)〜エヴァリスト・ガロアを巡る旅”その16”

2024年01月19日 15時02分53秒 | エヴァリスト・ガロア

 一昨年の6月以来の「ガロア群」ですが、これまでを大まかに整理します。
 2次方程式のガロア理論(「その8」と「その9」)でも述べた様に、2次方程式の解から作る代数体の自己同型(全単射)の仕組みを考察する事にありました。
 3次方程式のガロア理論では、対称性をなす可換群「その10」と巡回群「その11」と正規部分群「その12」について考察しました。この3つをまとめると、正規部分群の剰余類が巡回群つまり可換群になる事をガロアは発見し、この”ガロア系列”という簡単な群を見つける事で、四則とルートで解ける事を証明しました。
 そこでまずは、2次方程式から順に振り返ります。以下、「完全版:天才ガロアの発想力」(小島寛之著)を参考にしてます。


2次方程式のガロア理論

 例えば、x²+ax+b=0の2次方程式の係数a,bを含む有理数体Qを考え、拡大体K=Q(√(a²−4b))を作れば、有理数と√の四則演算から作られるx²+ax+b=0の解が共にKに含まれる。
 故に、”解を四則と√で解けるなら、√を有理数体に加えた拡大体の中に方程式の解が存在する”事がガロア拡大体の理論です。
 言い換えれば、方程式が四則とべき根で溶ける為には、べき根を加えた拡大体を次々と作り、それら拡大体のどれかに全ての解が入ってる事を確かめる。
 但し2次方程式では、その係数や解を含む拡大体の自己同型が僅か2種類(eとf)であり、ここで解の判別式:a²−4b=(α−β)²に注目すると、自己同型f(共役写像)の定義からf((α−β)²)=f(α−β)f(α−β)=(f(α)−f(β))(f(α)−f(β))=(β−α)(β−α)=(α−β)²となり、(α−β)²=”有理数”となる。
 これと解と係数の関係(α+β=−a)を合わせると、2α=−a±√(有理数)となり、有理数体Qに解αを含む拡大体Kは”K=Q(α)=Q√(有理数)”が判り、√と四則で解を得る事が可能になる。
 故に、自己同型fの考察から簡単に解の公式が導ける。これは、2次方程式の解で作った体Kが共役写像の自己同型fに関して、単純な(線)対称性を持つと言える。

 これを真似て3次方程式の解から体を作るんですが。「その10」では、3次方程式も同様に、方程式の解から作る代数体の自己同型の仕組みを考察する事で解の公式を明らかに出来る事を紹介しました。
 結論から言えば、まず3次方程式の解を全て加えた体を考えますが、有理数体Qではなく、1の3乗根ω(x³=1の複素数解)を有理数体に加えた体F=Q(ω)を基礎体とし、Fの拡大体Kを考えます。
 Kの自己同型は一般に6つありますが、これは3次方程式の3つ解の置換の順列組合せが6(=3!)事から来てますが、これはガロア群が3つの元(解)を置き換える置換となるからです。
 この6つの自己同型の作る群Gは、三角形の自身に被さる対称操作(線対称と回転対称の6通り)の群と同類ですが、3本のアミダくじをイメージすれば判り易いですね。
 つまりこの群は、3つの元からなる部分群Hで巡回群なるものが存在する。

 以下でも述べるが、G(Kの自己同型の群)→H(3個の元からなるGの部分群)→e(自明な部分群)が、F=Q(ω)→M→Kに対応する”ハッゼ図”(家系図)を考えます。
 ここで、体Mは体Fを拡大したもので、Q(ω)にある数の平方根を加えた体がMとなる。更に、このMにある数の3乗根(立方根)を加えた体がKとなる。結果、有理数と1の3乗根ωの四則演算と平方根(√)と3乗根(³√)により、体Kの数は全て”表現”できる事が解る。
 そこで、2次元方程式と同様に、3次方程式の解の作る代数体の自己同型へと話を進めるのだが、群とωを理解する為に、群論と複素数(体)を「その13」と「その15」の2回に分けて説明しました。


3次方程式の解が作る体とは

 つまり前回「その15」では、実際に3次方程式x³=2の全ての解を有理数体Qに加えて作った体Kの6個の自己同型を作る群を紹介したが、ここではもっと一般的な3次方程式x³+ax+bを考えます。因みに、これはフォンタナが発見した方程式でした(「その7」参照)。
 x³+ax+bの3つの解をα,β,γとすると、x³+ax+b=(x−α)(x−β)(x−γ)と因数分解でき、この右辺を整理すれば、”α+β+γ=0、αβ+βγ+αγ=a、αβγ=−b”が得られる。
 3つの解は無理数ですが、それらの和や2つずつの積や3つの積は全て有理数になる。

 そこで、これらの解から体を作るのだが。まず、有理数に1の3乗根ωを加えた体F=Q(ω)を作る。次に、この体Fに解α,β,γを加えて体を拡大し、体Fの要素に解α,β,γとの四則演算で作られる数を次々と加えていく。
 この作業を”飽和”するまで行い、出来た最終的な体をKとする。この体Kが全ての有理数やωや解α,β,γを含み、更にそれらの四則演算で作られた様々な形の数を含んでる事は明らかです。 
 そこで、この体Kの自己同型の仕組みを考察する。つまり、自己同型fが有理数だけでなく、体F上の数全体を”不変”にする”F上の自己同型”を考えます。
 まず、Kの”F上の自己同型”であるfの性質として、αが解よりα³+aα+b=0。故に、f(α³+aα+b)=f(0)。但し、0は有理数よりf(0)=0。
 また、fが有理数を不変にし、四則演算を保存する事から、α³+aα+b=f(ααα)+f(aα)+f(b)=f(α)f(α)f(α)+f(a)f(α)+f(b)=f³(α)+af(α)+b。故に、f³(α)+af(α)+b=0となる。
 つまり、fによりαに対応する数(元)は3次方程式の解となる。これは、他の2つの解βとγでも同じです。
 以上より、fにより解α,β,γが対応する数は解α,β,γの何れかである。自己同型は全単射(1対1対応)だから、その数はα,β,γの順列組合せの数の6(=3!)個となる。
 つまり、体Kは解α,β,γと体Fの数の四則演算で作られ、自己同型fでは体Fの元は不変より、α,β,γの対応先が決まれば、それだけで全てKの数の対応先が決まる。

 そこで、「その15」でやった様に、体Kの6つの自己同型を{e,f₁,f₂,g₁,g₂,g₃}とすると、αとβとγの対応先は、e(α,β,γ)→(α,β,γ)、f₁(α,β,γ)→(β,γ,α)、f₂(α,β,γ)→(γ,α,β)、g₁(α,β,γ)→(β,α,γ)、g₂(α,β,γ)→(α,γ,β)、g₃(α,β,γ)→(γ,β,α)となり、丁度、α,β,γの順列組合せになる。この6つの自己同型は、繋ぐという演算❅に関して群をなす。
 これは自己同型により、体Fの数を不変にし、四則演算を保存するから、f₂(f₁をf₂(f₁(α))と定義すれば、eは恒等写像であり単位元となる。また、f₂(f₁(α))=f₂(β)=αよりf₂※f₁=e、g₁※g₂=eの様にどの元にも逆元が存在する。故に、群になるのは明らかですね。


体の自己同型

 図2(上図参照)は、6つの自己同型で構成される群G={e,f₁,f₂,g₁,g₂,g₃}の乗積表です。前回「その15」でやった様に対応表を使い、1つ1つ計算して求めます。
これは、「その10」で述べた正三角形の対称操作の群と全く同じで、この群Gは3次方程式の3つの解α,β,γに作用する。丁度、正三角形の3つの頂点α,β,γに対応すると見れば、容易に理解できます(図1参照)。
 そこで、この群G={e,f₁,f₂,g₁,g₂,g₃}の部分群を全て見つける。群Gは3次方程式の解を体Fに加えた体Kの自己同型の作る群だが、正三角形の対称操作の群と見れば、「その11」でやった様に部分群を簡単に見つける事が出来る。
 「その11」では正方形を例にしたが、対称性を持つ三角形は二等辺三角形と正三角形の2つのみです。
 まずは二等辺三角形を不変にする対称操作(自己同型の写像)は、それぞれ頂点γ、α、βを通る軸を持つ二等辺三角形で、g₁とg₂とg₃の3つです。故に部分群は、H₁={e,g₁}、H₂={e,g₂}、H₃={e,g₃}となる。但し、部分群は必ず単位元eを含む必要があるので、必ずeを加えた2個の元になる。
 次に、正三角形を不変にする回転対称操作の部分群は120度の回転操作f₁とf₂を集めたものより、H={e,f₁,f₂}となる。
 以上、H₁,H₂,H₃,Hの4つの部分群に、自明な部分群であるG自身と{e}を加えた6個の部分群が全て求まった。これをハッセ図(家系図)で示すと(図3の)様になる。

 そこで、自明でない部分群H₁,H₂,H₃,Hにて、「その12」でやった様に、これらが正規部分群であるかを乗積表(図2)を見ながら調べます。因みに正規部分群とは、Gの全ての元pに対し、”pH=Hpなる部分群H”の事でした。
 そこでまず、H={e,f₁,f₂}を調べます。g₁H={g₁※e,g₁※f₁,g₁※f₂}={g₁,g₃,g₂}、Hg₁={e※g₁,f₁※g₁,f₂※g₁}={g₁,g₂,g₃}=g₁H。同様にg₂H=Hg₂、g₃H=Hg₃となり、Hは正規部分群となる。
 次に、H₁={e,g₁}ですが、f₁H₁={f₁※e,f₁※g₁}={e,g₂}、H₁f₁={e※f₁,g₁※f₁}={e,g₃}となり、f₁H₁≠H₁f₁より、H₁は正規部分群ではないし、H₂とH₃も同様に正規部分群ではない事が判る。

 こうして解の公式を考える時、ガロアがなぜ解そのものではなく、それらを含む”体”を考察したのか?その秘密が見え隠れしてきますね。
 ガロアは対称操作に対する不変な固定四角形の様に、”自己同型で不変になるKの数の集合”というものに着目します。 
 例えば、部分群H={e,f₁,f₂}に属する自己同型全てで、不変になるKの数全ての集合Mを考えます。すると、このMの元x,yは四則演算で閉じ、体になる。
 証明は、f₁は自己同型より四則を保存し、加法についてf₁(x+y)=f₁(x)+f₁(y)=x+yとなり、x+yもf₁で不変になる。これはeやf₂でも同様なので、x+yは群Hの全ての元で不変になり、集合Mに属する。同様に、x−yもx×yもx÷yもMに属し、Mは四則演算で閉じ、Mは体となる事が証明できる。 
 

正規部分群と自己同型

 同じ様な手続きで、部分群H₁,H₂,H₃の固定体をM₁,M₂,M₃と記す。また部分群{e}の固定体は体K自身ですが、”部分群Gの固定体が体Fとなる”事の証明はかなり困難です。
 これは”α,β,γのどんな入れ替えに関しても数が変わらないなら、その数にはα,β,γが含まれず、体Fの数に他ならない”事を意味し、直感的には当り前に見えるのだが、見かけ上はα,β,γが含まれても、実際にはFの数という事もある。故に、”α,β,γのどんな入れ替えに関しても不変な体Fに属する”事の証明は非常に困難な作業となる。
 そこで、この証明は無視して先へと進みます(悲)。以上で記した6個の部分群{G,H,H₁,H₂,H₃,{e}}と6個の固定体{F,M,M₁,M₂,M₃,K}のハッセ図を対応させると、以下の様になる(図3参照)。 

 ここで、KーMーFを取り出すと、基礎体Fと3次方程式の解から作った体Fとの間に体Mが挟まってるが、MがFに対しどんな拡大体になってるのか?そこで、体Mの”F上の自己同型”を分析する。
 結論から言えば、体MのF上の自己同型の群は2個の元からなり、”2次方程式の自己同型の群”と同類となる。つまり、体Mが体Fの係数とする2次方程式の解を付加して作った体である事を意味する。言いかえれば、体Mに属する全ての数は体Fの数を四則と√で書く事が出来るとなる。
 体Mは、体Kの中から一部の数を取り出して集めたものだから、有理数,ω(1の3乗根),α,β,γを四則演算で結びつけた数となる。故に、体Fを不変にする体Mの自己同型は、体Kの自己同型である群G={e,f₁,f₂,g₁,g₂,g₃}の中のどれかである。

 因みに、群Gのどの自己同型も体Mの数だけに制限して作用させると、全ての体Mの自己同型の役割を果たす事が知られている。
 この証明ですが、まず、e,f₁,f₂の3つについては、体Mの定義から体Mの全ての数を不変にする事から明らかに自己同型ですね。
 次に、g₁,g₂,g₃ですが、体Mの任意の数xに対し、g₁(x)が体Mの数である事が対応する群Hが正規部分群である事から証明できる。
 これはg₁(x)が部分群Hに属する自己同型e,f₁,f₂全てで不変である事を言えばいい。事実、部分群Hは群Gの正規部分群だから、右剰余類と左剰余類は一致し、f₁○g₁=g₁○hなる部分群Hの元hが存在する。
 そこで”演算子の入替え”が有効となり、h=f₂としてf₁○g₁=g₁○f₂が成り立ち、f₁(g₁(x))=g₁(f₂(x))となる。更に、f₂はHの元より体Mの全ての数を不変にするのでf₂(x)=xとなり、f₁(g₁(x))=g₁(x)が示せ、f₂(g₁(x))=g₁(x)も同様に示せる。
 つまり、g₁を体Mに制限して作用させると体Mの”F上の自己同型”の1つである事が示せた。これはg₂とg₃についても同様にして証明できる。
 以上より、体KのF上の自己同型6個のe,f₁,f₂,g₁,g₂,g₃は、全て体Mの”F上の自己同型”でもある事がわかったが、6個全てが異なる訳ではなく、実質的に異なるのは2個しかない。というのも、部分群Hの自己同型e,f₁,f₂は全て体Mの元を不変にするから、体Mに制限すれば恒等写像そのものとなる。

 次に、g₂が右剰余類(=g₁H)よりg₂=g₁○f₁と書けるので、g₂=g₁(f₁(x))=g₁(x)となり、体Mの数に対してはg₁と同じ結果を生む自己同型となる。g₃も同様にg₃=g₁○f₁と書けるので、体Mに対してはg₁,g₂,g₃は全く同じ自己同型となる。数学的に言えば、”群Gの正規部分群Hによる同じ右剰余類に属する自己同型は、みなMに対しては同じ自己同型”となる。
 以上をまとめると、体KのF上の自己同型6個は群Gの構造を持つが、それらを中間の体Mの自己同型だと見ると、3つずつが一致し、結果として2種類の自己同型、つまり恒等写像{e}とg₁に代表される自己同型のみとなる。つまり、3次方程式の解が作る体の自己同型は{e}とg₁の2つのみとなる事が判る。
 故に、3次方程式の解の公式を求めるには、2次方程式では1つで済んだ手順が2つになるだけである。

 少し(いや、かなり)長くなったので、今日はここまでです。
 次回は、3次方程式のガロア理論と解法について書きたいと思います。



10 コメント

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腹打てサン (象が転んだ)
2024-01-27 01:49:03
腹打てサン
私の方も少し補足ですが

ガロアの定理とは”方程式がべき根に
より可解である為の必要十分条件は方程式ののガロア群が可解となる”との定理でしたが、一方で、アーベル=ルフィニ定理は”一般の5次の代数方程式はべき根により可解にならない”との事でした。
この2つの定理を眺めると、後者は前者の十分条件を成してるのが判りますね。

両者とも、方程式の解の対称性を起点とし、係数体(有理数体)に解を含めた拡大体を考察するんですが、ルフィニはべき根を含めた拡大体に零点(解)が含まれる事で可解性をを示しました。
アーベルは更に、ルフィにが考察したべき根拡大体が”これ以上分解できない”事を証明し、可解性を説きました。
一方でガロアは、拡大体の最小の分解体が正規部分群である事に着目し、方程式のガロア群が素位数巡回群を満たし、解の対称性を崩せる事から解がべき根で得られ、可解群となる事を証明しました。

これらに関しては、きちんとまとめて記事にしたいんですが、考える程に頭が混乱します。
いつもコメント勉強になります。
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訂正 (腹打て)
2024-01-25 20:28:29
G=E/F(左剰余類)と書いたけど正確には

係数体Qに√(べき根)を加えた体をFとし、F上のn次方程式f(x)=0の最小分解体Eを含む体をBとする。そこで、べき根拡大体B/Fが存在すれば、f(x)=0はF上でべき根によって可解となる。
更に、f(x)∈Fが体F上のべき根により可解であり、またE/FをFを含む最小分解体とする時、f(x)=0が代数的に可解である為の必要十分条件は、ガロア群G=E/Fが可解群である。

以上、訂正と追加でした。
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腹打てサン (象が転んだ)
2024-01-24 22:47:42
コメントいつも勉強になります。

更に言い換えればですが
位数を素数pとする剰余類群は(1,2,…,p)を生成元とする巡回群となるので、正規部分群の置換では変化しない。
そこで、その他の置換で変化する根の置換群であるVの多項式をgとし、それぞれの剰余類の置換でgがg,g₁,g₂,…と変化したとすれば、g,g₁,g₂,…によるラグランジュの分解式Eは、1のp乗根をζとすれば、E=g+ζg₁+ζ²g₂+…となります。
巡回置換により、EはζᵏEと変化するので、巡回置換でEᵖは変化しない。故に、Eᵖは基礎体に含まれ、p乗根を求める事でEが求まる。
方程式の係数体KにEを添加すれば、体は拡大し、ガロア群Gはその正規部分群εへと縮小する。
この最小の正規部分群の発見こそが、ガロアがなし得た偉業とも言えますね。

確かに、オイラーがなし得た魔法の様な計算による問題解決は、多くの難問を解き明かしてきましたが、近代数学では限界に到達しようとしていました。事実、ガロアは未来の数学は”計算の上を飛ぶ事だ”と遺書に記しています。
つまり、”数を超えた数学”というのがガロア理論の本質だったかもです。
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アーベルとガロア群 (腹打て)
2024-01-24 14:26:53
ある方程式のガロア群が可解群であれば、その方程式は代数的に解く事が出来るが、<素位数の巡回群こそが可解群である>との条件がつく。
可解群とは、元はアーベル=ルフィニの定理から来たもので、アーベル群(可換群)から群の拡大を用いて作る群とみなせる。
ガチに定義すれば、Fを有理数体Qに√を加えて拡大した体をFとし、F上のn次方程式f(x)=0の最小分解体をEとする。この時、f(x)=0が代数的に可解である為の必要十分条件は、ガロア群G=E/F(左剰余類)が可解群である。

正規部分群との関係だが、ガロア群に正規部分群が存在するなら、ラグランジュの分解式により、その正規部分群は素位数の巡回群にまで縮小でき、この巡回群により解の対称性が崩され、方程式はべき根で解ける。
つまり、正規部分群を通じて、素位数の巡回群を満たすガロア群を可解群と呼ぶのだろう。
ただガロアの論文を忠実に約すと、方程式のガロア群Gに正規部分群の列H,H₁,…,εなる列:G⊃H⊃H₁⊃…⊃εが存在したとすると、それぞれの剰余類群が素位数の時、剰余類群は素数を生成元とする巡回群となり、方程式はべき根で解ける。

ガロアは方程式やその群そのものではなく、可解群の構造に注視していた。若干16歳で数学界に変革をもたらした青年の偉業は、これからも永遠に輝き続けるであろう。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2024-01-23 22:15:01
貴重なコメント有り難うです。

アーベルは、ルフィニの不完全な証明を完成させ、1823年の「不可能の証明」に続く、26年のパリの論文では、方程式の係数を含む体に冪根を添加し、拡大体を作り、その中に根を含むようにできると結論づけました。
つまり、5次方程式ではそんな拡大体が作れない事を証明します。

そんなアーベルですが、ラグランジュやコーシーの置換論を熟考し、代数方程式の不可能性の証明へと突き進みます。
故に、ルフィニもアーベルも解の置換の対称性を崩す事で不可能性を論じましたが、置換群の構造に着目したガロアの証明の方が明確明瞭でした。
更に言えば、アーベルは解の差積やラグランジュの分解式により、置換群を通じて解の置換の対称性を崩し、解の公式の不可能性を見出しました。一方ガロアは、解の置換の対称性を置換群の中の正規部分群の有無を調べる事で不可能性を証明し、その後ガロアは群の概念に到達し、ガロア理論を構築しました。

私が思うに、ガロアはラグランジュやガウスを通じてアーベルを眺め、そのアーベルの研究を隈なく考察して、ガロア理論に到達したと思えます。
まさに天才は天才を継承するですよね。
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置換群と正規部分群 (UNICORN)
2024-01-23 13:18:35
ガロアは解の置換が表す対称性の集まりを群と名付けました。
群の研究はラグランジュの時代にも成されてましたが、解の置換群の全ての元の対称性を調べる為に、ガロアは正規部分群という魔法を用いた。

ルフィニは5次方程式が代数的に解けない事を不完全ながら証明したが、解の置換を120個の一覧表を使って1つ1つ実験したそうです。
ルフィニもラグランジュも正規部分群は見えなかったし
アーベルも可換群(アーベル群)には気づいてたが、その中に存在する正規部分群までは見えなかったのだろうか。
もし気づいてれば、解の置換の対称性が崩せ、ガロア理論に到達できた筈でした。
すなわち、置換群の中の(素位数の)巡回群から正規部分群を見出す事ができれば、解の代数的解法が可能になる。つまり延々と調べ上げる必要はない。

方程式を解く為に、係数を集めた体にべき根や複素数を入れて拡大し、解の置換の対称性を調べる為に群が用いられた。
ここまではラグランジュもガウスもアーベルもなし得た事でした。しかしガロアだけは正規部分群がはっきりと見えていた。 
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腹打てサン (象が転んだ)
2024-01-21 04:18:37
ガウスによる代数学の基本定理とは”複素数の中に必ず答えはある”というものでした。
しかしアーベルは”解の不可能性”を主張した。
実は、(複素数の範囲でなら)方程式に”解が必ず存在する”と予想したのは、オイラーが最初でした。後にガウスが方程式の基本定理を証明し、カントールとデデキントにより実数が確立され、同時に複素数が体系化され、ガウスの主張が正しい事が証明されました。

結局、ガウスの基本定理もカントールやデデキントの存在なくしては、インチキに思えてたであろうし、オイラーからしたら、ガウスの主張なんて”俺のパクリじゃないか”って逆鱗に触れたんでしょうか・・・
数学史上で見ても、数多くの天才たちが名を刻んでるんですよね。
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ガウスの一喝 (腹打て)
2024-01-20 15:57:40
私が知る限りでは
”5次の一般方程式の解の不可能性”とのタイトルにガウスが激怒した。
というのも、ガウスの博士論文が(複素数に限れば)全ての方程式に解がある事を証明した、代数学の基本定理だった。
つまり、アーベルは”解の不可能性”でなく”解の公式の不可能性とすべきだった。

だけどガウスもアーベルもガロアもラグランジュの解の対称性に注目し、代数学の難題に挑んだ。
ということで
天才たちの系譜に乾杯! 
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paulさん (象が転んだ)
2024-01-20 13:52:39
全くですよ。
代数方程式で先を越され、更に楕円関数でも先を越されたガウスの無念は計り知れないものがあったと思います。
ただ、小島氏の拡大体と自己同型の群を行き来する論法は、私には少し難しいですかね。
次回「その17」で書く予定の3次方程式のガロア群までは突破したんですが、ガロア理論の証明となると一気に抽象的になります。
小島氏はこのガロア理論を使って、4次方程式のガロア群を説明してますが、完璧にマスターしてないと無理でしょうか。

言われる通り、”解の置換の対称性を崩す”というアーベルの手法で攻略した方が自然の流れな様にも思えますが、”中学生でも”というのは多少無理がある気もしますね。

コメントとても参考になりました。
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代数的に解けるか?否か (paulkuroneko)
2024-01-19 20:27:11
5次方程式は”代数的には解けない”という所が
ガロア理論のポイントですが
アーベルは”一般的な公式は存在しない”と論文のタイトルに書きましたが、ガウスは”代数的に解けない”と書くべきだろうとアーベルを一蹴しました。

ラグランジュもガウスもアーベルも解の置換を使いましたが、”解の置換の対称性を崩す”事でアーベルは5次方程式には”一般的な公式が存在しない”事を証明しましたが、ガウスは”代数的には解けないだろう”と予想しただけでした。

つまり、ガウスはアーベルに先を越されたのが余程悔しかったんでしょうね。
ただ、著者の小島氏は”中学数学のレベルでも理解できる”と謳ってますが、純粋数学者らしく演繹的手法で1つ1つ石を積み重ねるように丁寧に説明されてます。
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