象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

『夫婦財産契約』に見る、バルザックのいう社会の掟とは。

2018年08月02日 05時58分03秒 | バルザック&ゾラ

 昨日は、”鏡張りの部屋”ブログのバックナンバーを読んで下さった方、ホントに有難うです。私めのブログはこの”バックナンバー”こそ命なんですよ。ブログを横ではなく、タテに繋ぐ事で、アクセ数ではなく、アクセスの密度を何とか増やしたいんですが。中々うまく行かなくてです。


 さてと、”海辺の悲劇”以来の、3ヶ月ぶりのバルザックですが。彼の作品に関するネタは、結構あるんですが。なかなか、紹介しきれません。最近少し鬱っぽくて、ブログを休もうと思ってたら、ふとバルザックを思い出しました。


 バルザックは自らの全作品を《人間喜劇》として一つに括り、《風俗研究》《哲学的研究》《分析的研究》と3つに分類したのは有名な所ですが。

 ”人間喜劇”の約3/4を占める”風俗研究”は、さらに”私生活情景” ”地方生活情景” ”パリ生活情景” ”政治生活情景” ”軍隊生活情景” ”田園生活情景”の6つに分けられます。こういう所も、バルザックの理屈が半端ない事を示してますね。
 
 特に、『ソーの舞踏会』『夫婦財産契約』『禁治産』の3編は、”風俗研究”の中の”私生活情景”に収められた、極めて完成度の高い作品ですが。
 評価と人気が比例する、バルザックにしては貴重で非凡な作品でもありますね。

 
 因みに、この3編は、『ソーの舞踏会』(バルザック•コレクション(ちくま文庫) 柏木隆雄訳)に収められてます。

 この3編に共通するのは、"結婚前夜に起こる出来事"を中心に結婚相手の選択、その選択の結果、どんな夫婦生活が社交生活が展開するのか。これこそが、この”私生活情景”を代表する3編の最大のテーマであると、訳者の柏木隆雄氏は解説する。


 貴族やブルジョアの世界において、結婚相手の互いの所有する財産が決定的な重い要件、いや難件となるのは当然で、それを自己の”感情”と”勘定”を合わせる必要があると。後でも述べますが、結婚とは双方の財産の移動(譲渡)を意味したんですね。

 それこそが、バルザックの説く"社会の掟が作り出す見えない対立。我々の本能の自然な欲求と止み難い願望が深い所で発現する葛藤"なのだ。掟と本性との対立ですかね。


 何れもこのテーマに沿い、時代の流れと人間社会の欲望と壁を鮮やかに切り取り、"青年の過誤"を浮き彫りにして遺憾がないと、序文の解説を締め括る。全く憎い事言いますな。


 バルザックの作品は非常にユニークで奇怪だが、同時に非常に複雑で理屈っぽい。だから本編を読む前にじっくりと解説で頭を整理して、読み進める方がずっと馴染みやすい。

 バルザックに一貫する大きな特徴は、演繹と帰納を駆使し、結果と原因を行き来し、物語を論理立てし、読者を混乱に陥れる重厚で複雑な理屈っぽさだ。吐気がするほどに理屈っぽい。だから、どうしても彼の作品のレビューは長くなる。

 いや、長いレビューで説明しないと、バルザックの本当の凄みは先ず伝わらない。読んで面白かった的な、一次元的な物差しで測れないのが、彼の小説だからね。
 読者も多元的な物差しを用意しておく必要がある。

 という訳で、次回は、この3編の中でも一番のお気に入りである、『夫婦財産契約』から紹介する予定です。あくまでも、予定ですが。



2 コメント

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世襲財産制度 (ootubohitoman)
2018-08-06 15:41:45
暑いんですが、続けてコメントします。

私もこの夫婦財産契約は楽しく読ませていただいた記憶があります。特に豊満なな肉体をもつ未亡人の描写は実にエロチックで、当時まだ若かった私も結構、惹き寄せられました。

記憶が少し曖昧ですが、老公証人が孤軍奮闘の活躍で、夫婦財産契約を世襲財産にこぎつけるというストーリーだったようですが。

でも転んださん言う通り、バルザックはとても法律臭いですね。そんな中人間臭いどろどろとしたドラマがへばり付くんですが。
今の人は込み入った理屈臭い小説は受け付けないんですかね。軽いノリのノー天気な小説が多すぎるような気もしますが。重く硬いレビュー期待してます。
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Re:世襲財産制度 (lemonwater2017)
2018-08-07 04:56:44
お早うございます。続けてコメント返しです。

 夫婦財産契約に関しては、レビューとあらすじをじっくりと紹介していきたいと思います。特に巨乳で豊満な超エロい肉体を持つ、エバンジェリスタ婦人の描写はかなりしつこく、濃いものがあります。多分バルザックのタイプじゃないねすかね。

 確かに、バルザックの小説には巨乳系熟女が結構登場します。この悪女に唯一対抗するのが、老マティアス公証人です。禁治産のポピノ判事といい、我らが正義の味方ですが。最後は・・・ですが。

 この小説は法律臭いというより、かなり人間臭いですかね。全てはクレオールの熟女のお陰ですね。巨乳で熟女ってのは何時の世にも、淫らな香りを撒き散らすんですね。
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