象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

”51−51”の大記録に見る、劣化したMLBとその時代〜されど大谷”その32”

2024年09月22日 06時01分15秒 | ベーブルース

 まずは、この偉大な記録を日本人の誇りとして、世界中に誇れる記録として、賛美を贈りたい。
 かつては、野茂のメジャー挑戦もイチローの世界記録も言わば”時代の流れ”いや”時代の変化”が生んだ大記録でもあった。
 勿論、前者は前年のストライキによるメジャーのレベルの低下や、後者はステロイドによる質の低下に依存するものが大きかったが、日本人としては、ソニーやトヨタやホンダと並ぶ、世界に誇れる”NOMO”であり”ICHIRO”でもあった。

 今回の大谷の大記録も”時代の変化”が生んだと言えなくもないが、時代という点では大谷の(守らない)二刀流は、かつてはニグロリーグ時代の黒人選手たちが内野間で毎日の様にローテを回していた事を考えると、”時代の変化”とは言い難い。更に、ルースの(守る)二刀流も、ファンからは”外野はパートタイマーレベルじゃないか”と、守備に就く度にヤジを飛ばされた。
 それに比べたら、(守らない)大谷の二刀流はある意味”時代を戻した”とも言える。

 一方で、”51−51”という大記録だが、HRと盗塁のダブルの偉業は、1988年のホセ・カンセコの”40−40”にまで遡る。が、実はその前年に、日本の秋山幸二選手(西武)が”43−38”を記録し、”40−40”の大台を逃した事は、私の記憶にはだが新しい。
 事実、カンセコがこの偉業を達成するまでは、メジャーの殆どがこの記録には関心がなかったし、評価も成されなかった。
 もし、往年のメジャーらがHRと盗塁の両立が凄い事だと理解し、認識していたら、カンセコのずっと以前に、”40−40”はおろか”50−50”という大記録も達成されてたかも知れない。確かに、若い頃のルースは脚も速かったし、4割近い打率を残した事もある。
 そういう意味では、”時代の流れ”と言うより、大谷が”時代を引き戻した”と言った方が正解である。


大記録の陰で・・・

 今回の大谷の大偉業だが、評論家の間で指摘されてるのが、盗塁し易くなった”ルール改正”である。
 つまり、”動きが少ない”との理由で人気と(放映権料を含む)興行が落ち込むMLBでは、ダイナミックなプレーを増やそうと、昨年からベースが1周り大きくなり、投手の牽制回数も制限され、より盗塁し易くなった。
 結果、MLB全体の盗塁数は昨年よりも40%増えた。でなければ、アクーニャJrの様に”40−70”が達成できる筈がない。
 因みに、大谷の走力は8.56m/sでMLB平均の8.23m/sよりも速いが、MLB全体では154位だから、イチローの様なスピードスターではない。だが、今年はDHに専念してる為、時間と体力はたっぷりある。故に、走塁のフォームを徹底して改善し、相手投手の癖を研究し、ハードな練習を重ねた。まさに、大谷だからこそ出来る芸当ではある。
 但し、シーズン130盗塁のMLB記録を持つR・ヘンダーソンだが、現行のルールだと200盗塁は可能だったとされる。

 2つ目には(記事でも何度か書いた)”飛び過ぎるボール”による”フライボール革命”がある。
 かつての(飛ばないボールの頃の)メジャーは三振する事が恥だったが、今は全く違う。つまり、狭い球場でボールがよく飛ぶんだから”三振を恐れずに下から振りあげろ”との理屈である。
 事実、”フライ革命”と”飛び過ぎるボール”のお陰で、打者の質は低下し、MLB全体の平均打率はステロイド全盛の1999年頃でも2割7分あったのが、今年は2割4分と”MLB史上最低の打率”になりつつある。
 つまり、HRか?三振か?で無茶振りするから、HRは増えど三振も増え、打率は急落し、”最低の打撃”に陥落する。
 因みに、現行のルールと”飛び過ぎるボール”と”狭い球場”なら、ルースの60本塁打は160本以上に相当するのではと、私は推測する。

 3つ目に、メジャーの質とレベルと人気の急落が挙げられると思う。
 冒頭でも指摘した、ストライキやステロイドによるのも大きいが、特に著しいのが、黒人選手の減少である。不足分は中南米から入ってくるから、表面上は目立たないが、MLBの大半の歴史とプレースタイルが実質、アメリカ黒人に支えられてた事実を考えると、MLBのプレーの質やレベルの低下は当然の流れとも言える。
 確かに、かつては黒人はプロスポーツやエンタメで活躍し、大金を稼ぎ、(社会ではなく)世間的地位を大きく向上させてきた。だがそれは現役時代での話であり、引退後は(高給だが)無職という名の”年金暮らし”には変わりない。
 結局、メジャーでいくら頑張っても実質の黒人の地位は向上する事もなく、差別がなくなる筈もない。つまり、黒人のホワイトカラー化が進みつつある昨今のアメリカを物語ってるのかも知れない。確かに、かつては黒人にMBAや実業家や学者や教授というのは、あまり見かけなかった様な気もする。

 が少なくとも、MLBの質の低下が”51−51”の大偉業に結びついたとは考えたくないし、信じたくもない。でも、それが現実だとしたら・・・事実、アクーニャJrの”40−70”は日本でも殆ど話題にならなかったし、大谷の”51−51”はベースボール人気が冷え込んだ昨今のアメリカでは、どれだけ話題に挙がったんだろうか?


最後に〜MLBの劣化と大谷の偉業 

 以上の様に、大谷ファンと多くの日本人には耳が痛い、身勝手で個人的な考察だが、大谷の孤軍奮闘する姿は往年の輝かしいメジャーの時代を彷彿させるものがある。
 ”原点回帰”という点ではイチローの世界記録もそうだったが、その後のMLBへの影響を考えると、殆ど寄与しなかった様にも思える。つまり”世界の王サン”と同じで、日本列島だけでバカ騒ぎした様なものである。
 事実、野茂も松井の活躍も地元LAやNYでは、日本メディアが報道する程の騒ぎでも人気でもなかった。

 一方で、70年代以前の黄金期のMLBのレベルだったら、大谷はここまで数字を伸ばせたであろうか?との疑問も湧いてくる。
 勿論、金田や稲尾や江川投手がMLBのマウンドで投げてたら、20勝は固かったろうとの身勝手な予測も可能だろう。スタルヒンなら300勝出来ただろうか?ディマジオとモンローの仲人を努めたキャピ―原田なら殿堂入りは確実だったろうか?
 「2つのホームベース」でも書いたが、その原田氏と高校時代に二遊間を守った入江正夫氏なら、イチローを超えたであろうか?
 最近の日本人メジャーが新たな大記録を作る度にに、あらゆる予想が次々と湧いてくる。

 メジャーが陥落しつつある時代。そんな時代に大谷が登場し、(守らないが)二刀流を再現し、”51−51”を達成した。それだけでも十分なのに、昭和の野球ファンからすれば、不思議と物足りないものがある。
 それは、1つには昨今のプロ野球以上に、メジャーに殆ど魅力を感じなくなったからだ。老いたアイドルにトキメキを感じない様に、劣化したキャバ嬢に欲情を見出す事もない。ましては、老人会のゲートボール程に動きの乏しい野球に魂と身体が躍動する筈もない。
 つまり、PTAや隣組と同様に、野球というオールドボールゲームにも、既に寿命と限界が来てるのかも知れない。

 かつては(”ミスター”と誰しもが呼んだ)長島茂雄の一挙手一投足に釘付けになった私だが、大谷の活躍には殆ど見入る事がなかった。
 一方で、長島の存在は既にメジャーを超えてたし、我ら日本国民は(当時黄金時代にあった)メジャーでなくとも、長島を見てるだけで満足の境地に至った。
 また、長島さんの記憶と王さんの記録は度々比較されるが、記録は風化しても記憶が風化する事はない。つまり、記憶は時代と共に受け継がれ、歴史と人類にしっかりと刻み込まれていく。
 仮に、今回の大谷の大記録が単なるメジャーの劣化によるものなら、MLBの終焉も時代の流れなのだろう。つまり、時代はメジャーの様々な大記録も、そして、偉大なMLBの歴史をも簡単に洗い流してしまうのだろうか。

 今回の大谷の偉業を振り返り、長嶋さんの記憶がオーバーラップし、鮮やかに蘇るのも不思議なものである。



8 コメント

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いつも大谷には (tomas)
2024-09-22 11:27:06
辛口評価ですよね〜
ただ今シーズンは打撃が少し雑ですが
本塁打は安定してます。
盗塁はルール改正が大きいと思いますが
これはメジャー全体での流れですよね。

飛びすぎるボールに関しては
見せ場を増やすために打高投低を計った結果ですが、結果は両方とも落ち込んだ感がします。
質の低下はストライキの影響が大きかったんですかね。労使交渉も完全決着はついてないし>>>それに黒人が野球をしないから動きは緩慢になりますよ。昔のメジャーとは大違いで>>

またプレーオフでは
主力投手の故障続きで大谷をリリーフに回すとか?いろんな噂立ってますが
この時点で投げたら確実に故障する。
3度目の手術となったら投手生命は完全に絶たれる。でもワールドシリーズでの大谷のMVPを見たいです。
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”40−70”の大記録 (腹打て)
2024-09-22 12:49:33
転んだ君のアクーニャJrの考察は目にウロコだ。
確かに、彼の名は日本では、メジャー通以外で殆ど知られてない筈だよね。
同じ様に、どれだけのアメリカ国民が今回の大谷の大記録に大騒ぎしたんだろうか。
王さんや松井の時の様に、読売が大げさに報道しただけで、”世界の”とか”ゴジラ”と叫んだのは日本だけで、当時日本人で”世界の”との代名詞がつくのはゴルフの青木功だけだった。
NYでも松井よりもホットドッグ大食いの日本人が有名だった。

老いたプロスポーツであるMLBを大谷が1人で牽引する。
これが誇らしい事か?悲しい事か?
大谷狂騒曲に浮かれきった日本人が正当に判断するのは難しいだろう。  
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tomasさん (象が転んだ)
2024-09-22 14:23:39
正直(いつもの事ですが)、ここまで活躍するとは思っても見ませんでした。
勿論、DH専門ですから、時間と体力は十分にあったんでしょうが、投手とのリハビリも兼ねてる訳で・・
ただ、実質的には去年がピークだと思うんで、今年はDHで助かってると思う。

一方、二刀流の完全復帰を願うのなら、プレーオフは無理しない方がいい。
ここまで順調すぎる程なので、どんな事があっても投げさせる様な事はないと思う。
ただ、大谷の大記録には様々な要因が絡んでるのも事実で、これも”大谷とその時代”なんですかね。
コメントいつも有り難うです。
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腹打てサン (象が転んだ)
2024-09-22 14:28:22
私が言いたかったのは、まさにそれです。
すでに地盤沈下したMLBで、大谷がいくら頑張っても、その地盤が再び隆起する事はないという事ですね。
グローブを幾つ配っても、今の子供たちは野球をやらない。
特に野球はアメリカと日本、台湾、韓国くらいで、多くのメジャーを輩出する中南米とてプロすらない。
市場規模でも、他のプロスポーツと比べ非常に小さい。本場アメリカ国内でも人気がない。
なのに、”野球の国”の日本メディアは未だにMLBをメジャーとモテ囃すが、今やインターナショナルなんですよ。

衰弱し、寿命が尽きたMLBですが・・
何だかMLBの運命と日本の未来がダブって見えてきそうですね。
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多分ですが (tomas)
2024-09-23 13:51:11
転んだサンは
大谷の外ズラの良さが気に食わないと思うんですよ。全てにおいて完璧に振る舞おうとする大谷翔平に嫌気が刺す。
転んだサンから言わせると
数学と人生は野球ほどに単純じゃないって思ってますよね。
でもどんなに劣化し老化したメジャーも一応は生き続けてますし完全に死んではいません。

”野球の国”日本の大谷がメジャーを支えています。
口悪く言えば延命治療とも言えますが、メジャーが復活するとすれば大谷のこの偉業が大きな起点となるような気もするんですがね〜 
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tomasさん (象が転んだ)
2024-09-23 19:35:41
確かにですね。
人間的に信用出来ないというか・・・

ただ、北米のベースボールは動きが少ないだけでなく、迫力やダイナミックさにも欠けるし、攻撃の時は打順が回ってくるまで何もする事がなく、守っても打球が飛んでくるまでする事がない。
更に、試合時間はダラダラと4、5時間に達し、ベンチの選手らも緊張感もなく明らかにダラけています。
MLB機構は、こうした致命的な負の要因を打破する為に、飛ぶボールや年々狭くなる球場に加え、様々なルール改正を重ねましたが、殆ど効果は出てません。

つまり、ベースボールという球技を変える時期に来ている。ラグビーはスクラムのないラグビーが人気を集めてますし、7人制は五輪の種目にもなってます。
フットサルや3on3など、サッカーやバスケットでも改革が進められてます。
かつて、ベーブルースが野球を勝ち負けのスポーツから見るスポーツに変えた様に・・です。
そうした本質的な改革をしないと、高校野球と化したMLBは自然消滅し、折角の大記録もおとぎ話の世界での記録と揶揄されるかもですね。
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Unknown (tokotokoto)
2024-09-24 14:18:28
なーんだか
出来すぎって感じもしなくないけど
だって
シーズン直前には水原被告による違法賭博スキャンダルあったし
そんなこんな思ってたら
その水原被告の量刑言い渡しが12月に延期されたとか・・
ヤッパいろんな事勘ぐるんですよ
ホントは知ってたんじゃないの?って

話によると、当初はWS開幕日の10/25だったのが、ギャンブル依存症の報告書提出が間に合わない事で被告側から延期が要求されていたとあるけど、タイミング悪すぎますよね。

でもね、もしですよ
賭博依存症がホントだとして精神鑑定で引っかかリ、水原被告の違法行為を既に大谷選手が知っていたとしたら・・
ありえないかもですが
被告が罪を軽くする為に”大谷こそがウソをついている。ホントは知っていた”と発言すれば
事態は急展開するかもしれません。

プロ野球もメジャーも殆ど見ない私ですが
こういう事になるとあらぬ事を予想する。
でもみんな心の中では思ってる。
ホントは知ってたんじゃないの?って・・ 
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tokoさん (象が転んだ)
2024-09-24 20:19:15
援護射撃!?有り難うございます。

でも、それはありえない?かもですね。
私も大谷に関しては疑いが全くない訳ではないですよ。
事実、EBIは大谷の無実の証拠を握ってる訳でもなく、”大谷がそんな事する状況はありえない”として無実を言い渡しただけです。
今回の延期は水谷被告の大谷に対しての配慮との線が強いですが、LAだから殺人罪を無罪にする程の有能な法律家は沢山います。

そこで仮にですが、違法賭博専門の敏腕弁護士が水原被告に付いてて、被告を無罪にするあらゆる可能性を探るとしたら、”大谷はホントは知っていた”との線もその1つにはなり得ると思います。
でも万が一そうなったら、大谷は無期限の出場停止ですよ。
勿論、大谷にも大物弁護士が付く訳で、双方で泥沼劇の様相になるかもですが、全ては闇組織が牛耳ってるから、ホントの事は闇に埋もれたままでしょうね。

事実、ブラックソックス事件(1919)も現役の判事がコミッショナーになり、賭博事件を調べましたが、時すでに遅く、違法賭博は地下深くまで蔓延してたそうで、仕方なく当時MLB史上最高の打者とされたJジャクソンを始め、CWSの主力選手8人を永久追放処分するだけに留まりました。
西鉄の”黒い霧事件”(1969)も同様でも、不世出の天才投手・池永が永久追放処分となりましたし、噂では読売が裏で絡んでたとありますが、真相は未だ闇のままです。
この様に、違法賭博で稀有のスター選手が追放処分を受けるケースは実際に存在します。輝かしい将来が約束されてたジャクソンも池永も、全くの”寝耳に水”だった筈ですが、こればかりは不運としか言いようがないですね。
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