注目される超伝導
超伝導とは何だろう?超伝導とは、特定の金属や化合物などの物質を超低温に冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象である。1980年代半ばに比較的高い温度で超電導になる新物質が発見されて以来、大きな技術革新をもたらすと期待を集めてきた。
これまでは超伝導リニアモーターカーやMRI(磁気共鳴画像装置)など先端医療機器にその応用はとどまってきたが、地球環境やエネルギー問題解決の本命としていよいよ本格的な出番が迫ってきた。
住友電気工業は小型の超電導モーターを搭載した世界初の超電導電気自動車を試作し、2008年のG8洞爺湖サミットに合わせて公開した。自動車はひとつのデモンストレーションにすぎない。最近注目されているものに超伝導送電がある。抵抗を減らして超伝導で送電すれば、例えばサハラの太陽光発電から日本へ電力輸送することも可能になる。
超伝導交流送電
住友電気工業は米国にて実用送電路での送電実験が行われている。超電導ケーブルとして世界で初めて実用(地下)送電路に使用されたもので、2006年~2007年約半年間にわたり超電導ケーブルシステムの実証実験を進めた。
米国では、2005年制定されたエネルギー法において送電網の近代化が国家的な課題として位置づけられ、2030年には全米に強固な超電導ケーブル送電網を構築する計画が検討されている。その一環として、現在DOEが資金提供する超電導ケーブルプロジェクトが同時に3件進められており、その中のひとつである。
超電導ケーブルシステムは、全長350m、電圧34.5kV、電流値800Aの3相が一体となった三心一括型高温超電導ケーブルと、三心一括型気中端末、世界初の超電導三心一括型ケーブルジョイント、及びそれらの計測、冷却システムから構成されている。超電導ケーブルは、内径約150mmの地下管路に布設され、片側から30mの地点にジョイントを設けている。また、超電導ケーブルには、独自開発した加圧焼成法で製造された革新的ビスマス系超電導線が70km使用されている。(2006年7月31日 住友電気工業株式会社)
世界発!超伝導直流送電
中部大(愛知県春日井市)は2010年3月2日、超伝導物質を使って電気抵抗を抑えたケーブルで、直流電流を200メートル送電する実験に、世界で初めて成功したと発表した。
現在の電力設備の送電は交流電流で行われているが、同大では直流の方が、送電過程で失われる電力を大幅に減らせることに着目。実験の成功で、超伝導送電の実用化に一層弾みがついたとしている。
超伝導は、極低温で電気抵抗がゼロになる現象。交流では電圧が常に変化するため電力ロスが大きく、超伝導送電でも275キロ・ボルトで1キロ・メートル送電する際のロスは200キロ・ワットに上るが、直流なら10分の1程度に抑えられるという。
中部大の山口作太郎(さたろう)教授は「研究が進み、送電距離が伸びれば、夜間に電力が余っているヨーロッパから日本に送電するなど、世界規模の節電も可能になる」と話している。(2010年3月2日20時08分 読売新聞)
それにしても直流と交流では、交流の方が遠くまで送電できるのがエジソン・テスラ以来の常識であったが、超伝導の場合は直流の方が損失が少ないとは、面白い新常識である。
参考HP 住友電工「米国で高温超伝導ケーブルによる送電実験開始」
トコトンやさしい超伝導の本 (B&Tシリーズ―今日からモノ知りシリーズ) 下山 淳一 日刊工業新聞社 このアイテムの詳細を見る |
超伝導の基礎 丹羽 雅昭 東京電機大学出版局 このアイテムの詳細を見る |