AIDとAIDSの違い
AIDとは何だろう?AIDSである後天性免疫不全症候群とまぎらわしい。AIDとは非配偶者間人工授精のこと。
海外では精子の仲介をするビジネスが盛んである。そういった企業や医療機関を介在しない非配偶者間人工授精も、珍しくなくなってきた。例えばアメリカでは、家庭で容易に精子の採取が出来るキットや、家庭で女性一人で人工授精できる専用のキットが17ドル程度で販売されている。またインターネットでリストから希望する男性の精子を注文することが出来る企業のサイトも存在し、凍結された精子を自宅で受け取り、自宅で人工授精をすることも出来る。
日本でも主に男性側に原因があり、妊娠できない夫婦のために1948年からはじめられたもので、第三者の精子を使う受精方法である。反対や倫理的問題はあったものの、その後数十年の間は特に何の規制もなく、技術は行われ続けてきた。精子提供者は匿名で、提供者に関する情報はその精子を使って子どもを得た夫婦にもまったく伝えらなかった。
もちろん提供者自身にも、自分の精子が誰に提供されたのか、子どもが生まれたのかという情報は与えられなかった。AIDに関しては、提供者、医師そして夫婦がその事実をふせ続けることで、表立って問題が起こることはこれまでなかった。AIDは60年以上にわたり実施され続け、現在でも年間120~200名前後の子どもたちが生まれており、推計ですでに1万人以上の子どもが誕生している。
「人生が虚構のようだ」
もし、自分が両親の実の子でなかったら...誰でも一度は考えたことがあるかもしれない。AIDの子として出生した2人の女性が、成人してその事実を偶然知ってしまった。
23歳で事実を知ったという30歳の女性は「人生が虚構のように感じ、大学をやめたり親と一時絶交状態になった」と話した。
結婚後の32歳で知らされ、現在大学生と高校生の子供がいるという女性は「両親や親せきに見た目が似ていない、居心地の悪さを感じながら育ってきた。自分は子供を産んでよかったのか、と思った」と語った。
そのうえで2人は「育ててくれた両親は好きだが、自分のルーツを知りたいのは当然の気持ち。提供者が分からないと意図しない近親婚や、遺伝的な病気の治療が遅れる可能性もある」などと、出自を知る権利を強調した。
専門家の立場から慶応大医学部の渡辺久子専任講師(小児精神科)は「社会の中で相談できる場所などの支援機能が必要だ」と指摘、不妊治療の問題を社会全体で考えるべきだと訴えた。(毎日新聞 2010年3月21日)
日本におけるAIDのはじまり…
1948年、慶應義塾大学病院にて初めて実施され、翌1949年に女の子が誕生した。AIDは男性側に原因があり、妊娠できない夫婦のためにはじめられたもので、第三者の精子を使うことへの反対や倫理的問題はあったものの、その後数十年の間は特に何の規制もなく、技術は行われ続けてきた。
精子提供者は匿名で、提供者に関する情報はその精子を使って子どもを得た夫婦にもまったく伝えられなかった。もちろん提供者自身にも、自分の精子が誰に提供されたのか、子どもが生まれたのかという情報は与えらなかった。AIDに関しては、提供者、医師そして夫婦がその事実をふせ続けることで、表立って問題が起こることはなかった。
商業目的の精子バンクの誕生…
1996年、インターネット上で精子提供者を募集するという、国内初の民間精子バンクが誕生した。このバンクの特徴は、提供者は匿名ではなく、利用者が希望すれば面接のうえ、提供者を選べるという点であった。
商業目的の精子売買という新たな問題が提起され、これに対し、日本産科婦人科学会は、1997年5月にはじめて、「非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解(会告)」という形で、それまで行われ続けてきたAIDの技術を追認し、一方で実施する施設に一定の規制をする会告を発表した。
日本産科婦人科学会の見解
この見解にはAIDを実施する際の夫婦の条件や、選択時の同意書の作成と保管、それら夫婦及び生まれてくる子どもへのプライバシーに配慮すること、精子提供者の条件、また提供者のプライバシーの保護と記録の保存、営利目的の精子売買の禁止、AIDを実施する医療施設の学会への登録等が示されていた。
しかし、これはあくまで学会の「見解」であり、学会に所属している医師に呼びかけられたものでしかなかった。そのため、これに違反したときの罰則もなければ拘束力もなく、実際には実施施設後とのやり方に任されているのが現状と言える。
議論のはじまり…
1999年から旧厚生省にて生殖補助医療技術に関する専門委員会の話し合いが始められた。(この議論がはじまった背景には、学会の会告に反し、実妹からの卵子提供による体外受精や、実父の精子を使っての人工授精などを行う医師が出てきたことがあった。)
2000年12月には「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」が出された。それを受け、さらに厚生労働省では2001年から生殖補助医療部会を設け、医師のほか小児精神科や法律、福祉、倫理等の専門家により、そのあり方が話し合われることになった。
2000年の報告書では、提供者の情報は、「提供者が特定できないものについて」「提供した人がその子に開示することを了承した範囲内で」というように、出自を知る権利に一定の制限が設けられていた。
ところが2003年4月に提出された、生殖補助医療部会の最終報告書では、第三者からの精子・卵子・胚の提供を認める一方、代理出産や営利目的の精子売買は禁止とし、また生まれた子どもの「出自を知る権利」を認めた。15歳以上になった子どもが希望すれば、提供者の情報を個人が特定できる範囲まで認めるという。
法案化に向けて…
2003年に提出された報告書をの内容をもとに、法案を国会に提出する、はずだったが、2004年、2005年の通常国会への提出も見送られ、2006年10月現在、法案化への動きはまったく止まってしまっている。
法的親子関係について
法的な親子関係についての議論は、2001年から法務省に生殖補助医療関連親子法制部会を設け、親と子の関係、提供者と子の関係、子どもの出自を知る権利や近親婚の可能性などについての問題の話し合いが行われ始めていたが、上記の法案化の問題などがほとんど棚上げ状態になっていることもあり、議論はとまってしまっている。
現在の実施の状況
AIDは60年以上にわたり実施され続け、現在でも年間120~200名前後の子どもたちが生まれ、推計ですでに1万人以上の子どもが誕生しているといわれている。
AIDは60年以上の歴史があるにもかかわらず、提供者は完全に匿名であり、親もその事実を子どもはおろか周囲にさえ決して告げることはなかった。
そのため、そもそも自分がそのような方法で生まれたと子どもだと、その事実を知る人はほとんどいなかった。現在、AIDの抱える問題について声をあげはじめている人たちも偶然にして自分の出生を知った例が多い。
AID実施後のその家族や子どもへの追跡調査もほとんど行われておらず、すべてが水面下で行われてきたため、この技術に関して大きな問題は起こっていないと言われてきた。
それでも最近は、親や提供者に対する調査がいくつか行われ始めたようだ。(HP「AIDについて考える」より)
人工授精とは?
人工授精とは、生殖医療技術の一つで、人為的に精液を生殖器に注入することによって、妊娠を実現することを目的とした技術のことである。
精子の運動性や数に問題があり妊娠に困難がある場合、性交障害(インポテンツ)がある場合、女性生殖器の狭窄などによって精子の通過性に問題がある場合などに行われる。
手法として、精子を注射器のような器具を用いて子宮内に注入することによって行われる。かつては採取した精液をそのまま注入していたが、現在では精液を遠心分離などによって精製し、活性の高い精子を選別するなどして効率向上と副作用(精液中に存在するプロスタグランジンの影響などによる発熱等)の低減を図っている。
精子の提供者について配偶者間人工授精(AIH:Artificial Insemination by Husband)と非配偶者間人工授精(AID:Artificial Insemination by Donor)に区別される。(出典:Wikipedia)
参考HP AIDについて考える「日本におけるAIDの歴史」・Wikipedia「人工授精」
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