巨大氷山2つが衝突
地球温暖化のためか、南極の巨大な氷床が分離し、2つの巨大氷山となって大海を漂い始めた。大きさは埼玉県ぐらいのものと千葉県の半分ぐらいのものだという。
氷山の一角という言葉がある通り、見えている部分でそのくらいであるから、見えない部分は10倍ある。さしずめ関東平野ぐらいだろうか?そんな巨大の氷が環境にどんな影響を与えるか専門家は様々な警告を発している。
南極の巨大氷山が半島状の氷河をもぎ取り、新たな巨大氷山をつくった様子を、米航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星アクアが撮影した。氷山の面積を日本に当てはめると、埼玉県が房総半島とぶつかり、千葉県の半分がもぎ取られたのと同じくらいになる。新たな氷山は、重量が7千億~8千億トンで、豪州の方向にゆっくり動き始めた。
埼玉県ほどの氷山B-09Bは、1987年に南極大陸から離れ、周辺を漂っていた。その後、2月7日にメルツ氷河に接近、根元にひびをつくった。そして、ひびが広がって氷河がちぎれ、長さ78キロ、幅39キロの氷山になった。
メルツ氷河はペンギンの繁殖地。ペンギンを乗せたまま漂流したとみられ、専門家は生態系への影響が出るとみている。(asahi.com 2010年3月19日)
そもそも氷山とは何か?
氷山が見られる海域は限られており、南半球では南氷洋、北半球ではグリーンランド東岸とその周辺の島々から流出したものが北大西洋高緯度に広がる。北太平洋やベーリング海などでは氷山は見られない。
南極地域と北極地域では氷山の成因が異なる。南氷洋では、南極大陸から押し出された棚氷により形成されるため、上面の平らな台状を呈し、巨大なものが多い。北大西洋では氷河が海に流れ込んでできるので、とがった山型の形状のものが多い。
氷山の形成に関する説明は、1760年にロシア人のミハイル・ロモノーソフによって初めて発表された。
20世紀になると氷山の研究や監視のため幾つかの機関が設立された。タイタニックの事件を教訓にして1914年に設立されたInternational Ice Patrolは、北大西洋の氷山を監視している。
北大西洋に存在する氷山の平均的な一生は、およそ3,000年前に雪として降り、万年雪となって堆積して50年後には氷河となり、数千年かけて移動し、最後に氷河から分離して氷山として海に浮かぶことになる。同海域の氷山は、氷山になってから平均で3年経過したものである。
海洋循環への影響
上の図はベルトコンベアのように地球規模で流れる、海洋大循環の図である。南極大陸沖合の冷たい深海流もこの循環に組み込まれており、栄養豊富な海洋深層水を表層まで押し上げて世界中に運んでいる。
オーストラリアにあるタスマニア大学の外郭団体「南極気候学・生態システム学共同研究センター(ACECRC)」の研究者は、問題になっている2つの巨大な氷山について次のように述べた。「流れ着いた先で海洋循環や海氷・深層水の形成に影響を与える危険がある」。
衝突現場のメルツ氷河は南極大陸の東端付近に位置し、傍らを冷たく塩分濃度の高い深層海流が通っている。巨大な氷山の影響で海流の動力源である高密度の海水の形成が減速すれば、深層海流に変化が生じるかもしれない。深く沈み込んだ高密度の海水は深海生物に酸素を供給する役割も果たすため、一部の海域に酸欠の“不毛地帯”ができるのではないかと懸念する科学者もいる。(National Geographic News March 2, 2010)
海洋微生物やペンギンへの影響
衝突によって生まれた氷山の南極海漂流について、NASAのゴダード宇宙飛行センターで海氷研究を行っているクレア・パーキンソン氏は次のように話している。「海洋循環が今回の氷山のような漂流物によって阻まれると、その海域の全生物も影響を免れ得ない」。
同氏は海洋の変化がエサとなる微生物の減少につながることもあると述べ、海洋生態系の食物連鎖全体に予測不能な影響を及ぼしかねないと指摘している。画像のコウテイペンギンも例外ではない。ドキュメンタリー映画『皇帝ペンギン』で描かれたコウテイペンギンたちも、この海域に生息しているのだ。
例えば、北方向へ広がった海氷が開放水域を覆うと、植物プランクトンの光合成に必要な太陽光が遮断され、食物連鎖の上位にまで悪影響をもたらすことになるという。
また、今回の巨大な氷山が障害物となる可能性もある。「海洋を移動中にペンギンの通り道を突然ふさいでしまうこともあり得る」と同氏は話している。(National Geographic News March 2, 2010)
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