予想外の大差
「意見が出尽くしたのなら、直ちに採決すべきだ」。カタール・ドーハで18日午後(日本時間同日夜)に開かれた第1委員会。各国の意見表明が一巡したところで、マグロの蓄養が盛んなリビア代表が即時採決を求める動議を提出した。スーダンも同調し、採決の結果、賛成が72票と反対の53票を上回った。
リビア動議の採択後、EU案、モナコ案が採決され、いずれも否決。モナコ案の投票総数は118で、反対した68カ国にはアフリカ諸国が目立った。一方、賛成票はEU加盟国数を下回り、棄権30カ国の多くが欧州諸国であることをうかがわせた。米国の多数派工作が成功し、アフリカ諸国などが賛成に回っていれば、禁輸が採択されかねない「薄氷の勝利」だった。
採決の動議を提出したリビアなどに加え、同じアジアのマグロ漁業国である中国や韓国の存在も大きかった。特に中国は原油や鉱物など資源確保のため、アフリカを徹底支援。赤松農相は16日の会見で「中国も他の国に働きかけてくれた」と述べた。(毎日新聞 2010年3月20日)
環境問題と食糧問題
このニュースを聞いて、国1票制でよかったと思った。欧米各国による植民地時代に比べ、アフリカやアジアの国々の権限が認められている。また、同じアジアでマグロを食糧とする、中国や韓国のがんばりも見逃せない。日本の窮地は救われた。
ワシントン締約国会議の開幕を前に、日本のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞。赤松広隆農相は、ワシントン条約で日本の食文化に深くかかわる魚類が多く取りざたされていることと、米映画界の動きを同一線上にとらえ、不快感を示した。
また、シーシェパード(SS)による南極海における、日本の調査捕鯨船妨害工作の問題もあった。今回の結果についてシー・シェパード(SS)のスポークスマンは19日、ワシントン条約締約国会議の第1委員会で大西洋・地中海産クロマグロの国際取引禁止案が否決されたことについて、「強欲が勝利した」と批判、クロマグロを絶滅から救う唯一の道は漁獲の全面禁止だと主張した。
クジラであろうと、マグロであろうと何でもかんでも反対という感じだ。世界的に行き過ぎた環境保護の雰囲気の中で開催された、ワシントン条約締約国会議。ただ環境を保護すればよいわけではない、日本など漁業国の食糧を確保する問題だけに、もし負けていたら大変な問題であった。
つい最近、米国で環境保護のためにトウモロコシをバイオ燃料に使用すると決定したために、トウモロコシをふくめた穀物が高騰し、世界的な食糧不足をまねいた。環境保護と食糧の問題はこれからも慎重に議論せねばならない。
欧米各国の反応(2010.3.19)
「マグロに痛手。戦い続ける」と米国 クロマグロ禁輸案否決
ワシントン条約締約国会議の委員会で大西洋・地中海クロマグロの国際取引を全面禁止する提案が否決されたことについて米内務省は18日、大西洋クロマグロにとって痛手だとする声明を発表した。
声明で、ストリックランド米交渉団代表は「今日の投票は、大西洋クロマグロにとって痛手だったが、われわれは持続可能な形で漁獲が管理されるよう戦い続ける」と強調。
米海洋大気局(NOAA)のルブチェンコ局長は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が昨年決めた、漁獲枠を約4割削減する保護措置について「これだけでは不十分」と指摘、「ICCATのメンバーとともに種を保存するために作業を続ける」とした。(共同)
「非常に落胆した」とEU クロマグロ禁輸案否決
欧州連合(EU)の欧州委員会は18日、ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議の第1委員会が、大西洋・地中海クロマグロの国際取引を全面禁止する提案を否決したことを受けて「非常に落胆した」との声明を発表、保護のために何の行動も起こさなければ「大西洋クロマグロが消滅する深刻な危険がある」と警告した。
欧州委は「大西洋クロマグロの個体数の回復には厳しい措置が必要と確信している」と強調、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)に対し「クロマグロが持続的に回復するよう責任を果たすことを期待する」と呼び掛けた。(共同)
モナコ元首が遺憾の意 クロマグロ取引禁止否決
大西洋・地中海クロマグロの国際取引禁止を提案したモナコの元首、アルベール2世公は18日、声明を発表し、ワシントン条約締約国会議の委員会で提案が否決されたことについて遺憾の意を表明した。
声明でアルベール公は、地中海のクロマグロが絶滅する恐れについて「米国、欧州とは考えを分かち合えた」と表明。環境保護はモナコの政策の主軸であることを強調した上で「締約国会議での議論を通じて、クロマグロの種の保全が緊急の課題であるとの理解が国際社会に広がることを望む」と述べた。(共同)
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