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桜島 観測史上最多548回の爆発的噴火 大噴火の可能性は?

2010年03月16日 | 地学
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 観測史上最多の年548回の噴火
 鹿児島市の桜島(標高1117メートル)は昨年、観測史上最多の年548回の爆発的噴火を記録し、活動を活発化させている。今年もすでに300回を超えた。2月に開かれた火山噴火予知連絡会では、昭和火口からの溶岩流出の可能性に初めて言及した。桜島の今後はどうなるのだろうか?

 桜島は、鹿児島県の錦江湾(正式には鹿児島湾)にある東西約12km、南北約10km、周囲約55km、面積約77km²の半島。かつては文字通り島であったが1914年(大正3年)の噴火により大隅半島と陸続きとなった。

 御岳と呼ばれる活火山によって形成され、頻繁に噴火を繰り返してきた歴史を持ち、2010年現在も噴火を続けている。海の中にそびえるその山容は特に異彩を放っており、鹿児島のシンボルの一つとされる。2007年、日本の地質百選に選定された。

 有史以前
 桜島の今後を知るには、過去の歴史をひもとく必要がある。桜島西部の横山にある城山(横山城跡)は古い時代に形成された台地であり、少なくとも約11万年前には陸地として存在していたと考えられているが、残りの大部分は地質学的に最近の火山活動によって形成された非常に新しい火山である。

 約2万5千年前、姶良カルデラで発生した入戸火砕流と姶良Tn火山灰の噴出を伴う巨大噴火(姶良大噴火)によって現在の鹿児島湾の形が出来上がった(右衛星写真の鹿児島湾奥部、桜島より上の部分に相当)。

 桜島はこの巨大カルデラ噴火の後に火山活動を始めた。約2万2千年前、鹿児島湾内の海底火山として活動が始まり、安山岩やデイサイト質の溶岩を流出しながら大きな火山島を形成していった。約1万1千年前には北岳が海上に姿を現し、この頃に北岳から噴出した火山灰の地層は九州南部に広がっておりサツマ火山灰と呼ばれている。噴火活動は約4千年前から南岳に移行した。

 有史の大噴火
 歴史に残っている噴火は、30回以上、特に文明、安永、大正の3回が大きな噴火であった。

 文明大噴火は、1471年(文明3年)9月12日に起こり、北岳の北東山腹から溶岩(北側の文明溶岩)が流出し、死者多数の記録がある。2年後の1473年にも噴火があり、続いて1475年(文明7年)8月15日には桜島南西部で噴火が起こり溶岩(南側の文明溶岩)が流出した。さらに翌1476年(文明8年)9月12日には桜島南西部で再び噴火が起こり、死者多数を出し、沖小島と烏島が形成された。

 安永大噴火は1779年11月7日(安永8年9月29日)の夕方から地震から始まった。翌11月8日(10月1日)の朝から井戸水が沸き立ったり海面が変色するなどの異変が観察された。正午頃には南岳山頂付近で白煙が目撃されている。
 昼過ぎに桜島南部から大噴火が始まり、その直後に桜島北東部からも噴火が始まった。夕方には南側火口付近から火砕流が流れ下った。夕方から翌朝にかけて大量の軽石や火山灰を噴出し、江戸や長崎でも降灰があった。
 11月9日(10月2日)には北岳の北東部山腹および南岳の南側山腹から溶岩の流出が始まり、翌11月10日(10月3日)には海岸に達した(安永溶岩)。翌年1780年8月6日(安永9年7月6日)には桜島北東海上で海底噴火が発生、続いて1781年4月11日(安永10年3月18日)にもほぼ同じ場所で海底噴火およびそれに伴う津波が発生し被害が報告された。

 大正大噴火
 大正大噴火は1914年(大正3年)1月12日に始まり、その後約1ヶ月間にわたって頻繁に爆発が繰り返され多量の溶岩が流出した。一連の噴火によって死者58名を出した。流出した溶岩の体積は約1.5km3、溶岩に覆われた面積は約9.2km2、溶岩流は桜島の西側および南東側の海上に伸び、それまで海峡(距離最大400m最深部100m)で隔てられていた桜島と大隅半島とが陸続きになった。

 1913年(大正2年)6月29日から30日にかけて伊集院町(現日置市)を震源として発生した弱い地震が最初の前兆現象であった。同年12月下旬には井戸水の水位が変化したり、火山ガスによる中毒が原因と考えられる死者が出るなどの異変が発生した。12月24日には桜島東側海域の生け簀で魚やエビの大量死があり、海水温が上昇しているという指摘もあった。

 翌1914年(大正3年)1月に入ると桜島東北部で地面の温度が上昇し、冬期にも拘わらずヘビ、カエル、トカゲなどが活動している様子が目撃されている。1月10日には鹿児島市付近を震源とする弱い地震が発生し、翌11日にかけて弱い地震が頻発するようになった。噴火開始まで微小地震が400回以上、弱震が33回観測されている。

 噴火による火山灰は九州から東北地方に及ぶ各地で観測され、軽石等を含む降下物の体積は約0.6km3、溶岩を含めた噴出物総量は約2km3(約32億トン、東京ドーム約1,600個分)に達した。噴火によって桜島の地盤が最大約1.5m沈降したことが噴火後の水準点測量によって確認された。この現象は桜島北側の海上を中心とした同心円状に広がっており、この中心部の直下、深さ約10kmの地中にマグマが蓄積されていたことを示している。(出典:Wikipedia)

 噴火の周期
 「桜島は、おおむね200年ごとに20億トン級の灰や溶岩が出る大噴火、約30年ごとに2億トン級の噴火があった」と京都大防災研究所火山活動研究センターの井口正人准教授(火山物理学)は指摘する。文明(1471~76年)、安永(1779~82年)、大正(1914年)と、過去に大噴火を起こしてきた。
 
 また、1946年の昭和噴火は約2億トンの溶岩や灰が放出され、80年代を中心に南岳山頂で続いた噴火では、溶岩の流出はなかったが、約20年かけて約2億トンの灰が放出されたという。現在、大正大噴火からは約100年、80年代の噴火からは約20年が経過した。
 
 マグマだまり
 気象庁によると、鹿児島の錦江湾の下の姶良(あいら)カルデラの深さ約10キロ付近に主マグマだまりがあり、年間約1000万立方メートルのマグマが地底から供給されている。そこから南にある桜島南岳の直下約5キロのマグマだまりに流れ、東斜面にある昭和火口で噴火が続いている。気象庁のほか、国土地理院や京都大などが地震計や傾斜計、GPS(全地球測位システム)などで地盤の変化や噴火の様子などを常時監視している。

 地下にたまるマグマの量は、地盤の隆起や沈降の変化から推測できる。京都大が姶良カルデラ西縁の水準測量の基準点を調べた結果、1890年を基準にすると、大正大噴火直前までに約30センチ隆起したが、直後に約85センチ沈降。その後、マグマの蓄積は続いたが、昭和噴火のあと約10センチ沈んだ。大正大噴火では約13億4000万立方メートル、昭和噴火では約1億8000万立方メートルの溶岩が流出したという。

 地盤の隆起は、80年代を中心に一時安定した。南岳で噴火が相次いだ時期に相当し、地底から供給されるマグマと放出される灰の量が同程度だったとみられる。気象庁によると、姶良カルデラの下のマグマだまりには今、大正大噴火直前の約9割のマグマがたまっていると推測されるという。  

 三つのシナリオ
  桜島は、2006年6月に58年ぶりに昭和火口が噴火。昨年10月ごろから活発化し、同11月の噴出物からは、従来のマグマとは違う新しい成分が検出された。井口准教授は「桜島直下に新しいマグマが入ってきた証拠。姶良カルデラのマグマの一部が昭和火口に向かって動き始めている」と話す。  たまったマグマは、いずれ灰や溶岩の形で放出される。主に三つのシナリオが考えられるという。
 
 (1)80年代のように、南岳山頂火口で爆発的噴火活動が再開し、灰を長期間放出する(2)昭和噴火のように、昭和火口が噴火し、溶岩が流れ出る (3)大正大噴火級の噴火が起き、20億立方メートル級のマグマが山腹から放出される。  

(1)のケースでは、大量の灰が市街地や農地に降り積もるが、マグマの供給量と放出量のバランスがとれ、大噴火にはなりにくい。住民の避難が想定されるのは(2)と(3)のケースだ。

 (2)では、すでにマグマだまりから昭和火口までの道があるため、顕著な前兆現象なしに噴火する可能性があるという。しかし、昭和火口の直径が小さく、大正大噴火級の溶岩が大量に流れる可能性は低い。また、溶岩の粘度から、ふもとの民家まで届くのに1~2週間かかるという。
 
 最も影響が大きいのが(3)。大正大噴火では、大規模な地殻変動があったとみられ、数日前から地震が続いたり、マグマの蓄積で火山内部の圧力が上がり、地下から多量の二酸化炭素がしみ出したり、井戸水の水位が異常上昇するなど多くの前兆現象が確認された。
 
 大正規模なら予測も
 気象庁は、おおむね10年程度以内に、避難対策が必要な規模の噴火が予想されるとした上で、予測の手掛かりとなる経験や知見から大正大噴火と同規模であれば予測は可能としている。
 
 井口准教授は「100年先は別として、現時点で(3)の可能性はまずない。マグマだまりの位置や蓄積量も推定され、今後起こりうる噴火も予測できるようになった。最大の課題は、噴火地点である南岳山頂や山腹地下へのマグマの移動をいかにとらえるかだ。わずかだが、姶良カルデラのマグマが動き出しているのが現状」と話している。 (毎日新聞 2010年3月16日)

 

桜島―噴火と災害の歴史
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灰降る島―鹿児島県桜島
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