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 「雨に祈りを」 デニス・レヘイン 鎌田三平訳 角川文庫

2011-03-06 | 読書

「ミスティック・リバー」 映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」の原作を書いた人に、こんなシリーズがあると知らなかった、シリーズ最新作。

悪人にもいろいろある、犯人には悲惨な生い立ちという過去があり。衝動殺人とか、計画殺人とか、その他百の話には百の犯罪を犯す。悪は不幸のようにいろいろな形がある。

しかしこのように、悪を愉しみ、じわじわと苦しめて目的を達しようとする、こういう残酷な呵責のない悪はだれにとっても耐えられるものではない。
その上最後までその全体が確定できない。読者までわなにはまってしまう。
暗い話だが構成が面白かった。


パトリックの事務所に穢れのない清純な女が相談に来た。彼女は別れた相棒のアンジーの紹介だった。
彼は一肌脱いで解決をする。が、暫くして彼女は全裸で飛び降り自殺をしてしまった。
死ぬまでの彼女の暮らしに疑問があった。、裕福な両親、兄弟もいた。しかし自殺直前は売春をし麻薬におぼれて自分を見失っていた。引き金になったのは婚約者の突然の事故で、彼は植物状態になってしまっていた。

パトリックは、彼女を襲った絶え間ない悪運の背後に、執拗な悪意を感じる。

彼は、また、アンジーと爆弾と銃を持たせれば怪物になるブッパの協力を得て、背後の人物を追い詰める。
ブッパと言う憎めないキャラが可愛い恋をするのはちょっといい。


金のために張り巡らした複雑なワナ。パトリックの前に、ちらちらと姿を現す犯人の影。
まさに命がけの戦いが壮絶。犯人像も二転三転。

レヘインの文もますますこなれて絶妙なフレーズは立ち止まって読み返してしまう、彼のこの作品ははまさに一流。

面白かった。★5

31作目 「雨に祈りを」

32作目 「球体の蛇」道夫秀介
     最近何かと話題が多いので読んでみた。
     デビューして5作目という。
     これはミステリというより文芸作品に近い。
     青年になっていく成長期(高校生から大学時代)に
     体験した忘れられない出来事。
     それは成人し、子供を持ち 16年たっても解決
     できない大きな悲しみの塊になっている。
     雪のドームの風景のように。
     最後の1ページは蛇足のように思う。
     題名もインパクトが強すぎる。
     そういった話ではあるが。
     ★4

コメント
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