「警官の血」を予約したら、これが先に来た。この作者は「笑う警官」から二作目。
不祥事を改善するため道警本部がとった、長期滞在をなくすための配置換で、十勝の片田舎、志茂別町の、派出所勤務になった、川久保巡査が主人公の短編5作が収められている。
捜査権のない巡査が、旧弊固陋な町で起きる事件解決に腐心する姿が主題になっている。
「逸脱」
一人息子が帰ってこないと訴えで田母親。ここは母子家庭で、息子は町の悪童たちに苛められていたという。
聞き込みも効果がないある日、道端に息子の死体と、盗まれたバイクが転がっていた。町は交通事故で済まそうとする。
「遺恨」
散弾銃で犬が殺された、その家は入村も新しい余所者で酪農を営み隣家ともめていた。
隣家は中国人学生も受け入れるほどの大酪農農家だった。
調べるうちに起きた事件と、調べるうちに過去の出来事に当たる。面白い一編。
「割れガラス」
父親に虐待されていた少年を、見込んだ流れ大工に預けてみた。少年は彼になついて仕事を覚え大工も教えることに生き甲斐を持ったいた。
事件が起き、それを突き止めたときには、濡れ衣は晴れたものの大工は解雇され、少年は福祉事務所に引き取られていった。
川久保の人情味があたたかい、最後に川久保の一刺しで、ちょっと気が晴れる。
「感知器」
放火事件が相次ぐ。町の連続放火犯を追うミステリらしい一編。
「仮装祭」
復活した祭りの最中に前に起こって未解決だった誘拐事件が、同じ形で起きる。
当時の巡査ととともに阻止するために駆け回る。
町の人たちの絡んだ過去。川久保の境遇などいちばん長い一編だが、押さえとして上質の感がある。
時々登場する町の物知り、片桐もいい味で、とても読みやすい。
読書
34作目 「制服捜査」★4