時の流れをテーマにした4編は面白かった。女性二人はタイムカプセルの話だったが、優しい読後感が残っている。
タイムカプセルの八年 辻村深月
教育熱心な担任の勧めで6年生は卒業前にタイムカプセルに記念品を入れて埋めることにした。だがそのカプセルは倉庫の隅に置いたままになっていた。
同級生の父親で作った「親父会」はその噂を聞いて、探し出すことにする。教育熱心で子供たちに慕われていた先生の実像に不安があったが、何かと行事に顔を合わす父親たちは、探し埋めることを実行した。
父親会の付き合いと、子供たちの成長振り、環境が変わっても何かしら暖かい繋がりがある話だった。
トシ&シュン 万城目学
「縁結び」の神が配置換えになった。今度は「学問」と「芸能」も面倒を見る神社だった。
付き合っているらしい二人はどちらもトシと言う名前だったが紛らわしいので一人男性のほうはシュンと呼ばれていた。
小説家になりたいという男と女優を目指す女、夫々の目標が成就するように神はヒントを与えたが。
ユーモアたっぷりに話は二転三転、読んでいて思わず心が軽くなる。
下津山縁起 米澤穂信
A.D.873 遠江国に火山の噴火で、上津山に並んで下津山が出来た。下津山の横に沼が出来た。
A.D.1180 麓で武士たちが戦った。
A.D.1783 旗沼の埋め立ての話が持ち上がったが中止された。
A.D.1885 二つの山を測量した結果、3Mの差だと判明。
A.D.1966 旗沼で泳がないようにプールが出来た。
A.D.1989 圧電流・地電流について百科事典より引用
A.D.2018 旗沼埋め立て工事を中止
A.D.2191 人の脳波を知性とするなら、電機で動く機械に知性はないのかという命題から人類の友を見つけたいと思う森島博士。
A.D.2205 森島研究室のコンピュータに不明確な受信記録
A.D.2256 下津山の半分が削られる
A.D.2299 研究所の解読後の信記録。
A.D.2753 研究所のコンピュータが更に交信、山からの発信は人間を認知していなかった。
A.D.2574 ネットワークが見つからないということは人間の滅亡を意味した。森島博士の予言どおり「山との交信」成功
A.D.2873 山々の裁判で上津山は下津山を殺害で有罪判決。上津山は有機知性体(以後人間と表記)を誘導して下津山を殺害させた。上津山の標高についての嫉妬心が動機、としたが控訴する予定。
長い歴史を辿って、人と山の歴史を創造した。まさに作家は素晴らしい。
長井優介へ 湊かなえ
高校卒業の日タイムカプセルがあけられた、中学三年生の時の事件が改めて姿を現す。何か腑に落ちないままに解決したかに見える強姦未遂事件。無罪にはなったが素行の悪い三人組が疑われた、しかし彼らには証拠がなかった。
実際は、、。それを知っている人物がいた。
面白かった。一読の価値有り。