空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「時の罠」 辻村深月 万城目学 湊かなえ 米澤穂信 文春文庫

2015-03-15 | 読書


時の流れをテーマにした4編は面白かった。女性二人はタイムカプセルの話だったが、優しい読後感が残っている。


タイムカプセルの八年 辻村深月
教育熱心な担任の勧めで6年生は卒業前にタイムカプセルに記念品を入れて埋めることにした。だがそのカプセルは倉庫の隅に置いたままになっていた。
同級生の父親で作った「親父会」はその噂を聞いて、探し出すことにする。教育熱心で子供たちに慕われていた先生の実像に不安があったが、何かと行事に顔を合わす父親たちは、探し埋めることを実行した。
父親会の付き合いと、子供たちの成長振り、環境が変わっても何かしら暖かい繋がりがある話だった。

トシ&シュン 万城目学 
「縁結び」の神が配置換えになった。今度は「学問」と「芸能」も面倒を見る神社だった。
付き合っているらしい二人はどちらもトシと言う名前だったが紛らわしいので一人男性のほうはシュンと呼ばれていた。
小説家になりたいという男と女優を目指す女、夫々の目標が成就するように神はヒントを与えたが。
ユーモアたっぷりに話は二転三転、読んでいて思わず心が軽くなる。

下津山縁起  米澤穂信   
A.D.873  遠江国に火山の噴火で、上津山に並んで下津山が出来た。下津山の横に沼が出来た。
A.D.1180 麓で武士たちが戦った。
A.D.1783 旗沼の埋め立ての話が持ち上がったが中止された。
A.D.1885 二つの山を測量した結果、3Mの差だと判明。
A.D.1966 旗沼で泳がないようにプールが出来た。
A.D.1989 圧電流・地電流について百科事典より引用
A.D.2018 旗沼埋め立て工事を中止
A.D.2191 人の脳波を知性とするなら、電機で動く機械に知性はないのかという命題から人類の友を見つけたいと思う森島博士。
A.D.2205 森島研究室のコンピュータに不明確な受信記録
A.D.2256 下津山の半分が削られる
A.D.2299 研究所の解読後の信記録。
A.D.2753 研究所のコンピュータが更に交信、山からの発信は人間を認知していなかった。
A.D.2574 ネットワークが見つからないということは人間の滅亡を意味した。森島博士の予言どおり「山との交信」成功
A.D.2873 山々の裁判で上津山は下津山を殺害で有罪判決。上津山は有機知性体(以後人間と表記)を誘導して下津山を殺害させた。上津山の標高についての嫉妬心が動機、としたが控訴する予定。

長い歴史を辿って、人と山の歴史を創造した。まさに作家は素晴らしい。


長井優介へ  湊かなえ
高校卒業の日タイムカプセルがあけられた、中学三年生の時の事件が改めて姿を現す。何か腑に落ちないままに解決したかに見える強姦未遂事件。無罪にはなったが素行の悪い三人組が疑われた、しかし彼らには証拠がなかった。
実際は、、。それを知っている人物がいた。

面白かった。一読の価値有り。

  
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「満願」 米澤穂信 新潮社

2015-03-15 | 読書
  
  


下記に列記したように読者の評価が高いので、楽しみにしていた。

端正な文章が最後まで乱れずに続く。テーマは、現実の出来事だったり、現実にあからさまにより過ぎない、時にファンタジックであり、伝承的であり、ノンフィクション風であり。そこに潜む謎を、独特の心理描写で読ませる。

平凡な日常を切り取った中に潜む謎がトリッキーな展開を見せることもある。様々な「面白い」が詰まった短編集。



夜警
警察学校を出たばかりの川藤が部下になった。夫が暴れているという妻の通報で駆けつけると、逆上した夫が刃物を持って襲ってきた。川藤がその場で射殺。即死かと思ったが、犯人の最後の刃で斬られて殉職した。
以前、部下を締めすぎて自殺された経験で、川藤を御し切れなかった。
臆病者と小心者という書き分けが興味深い。

死人宿
行方不明になっていた部下が見つかった。山奥の淋しい宿で働いていたが、なくなった叔父から受け継いだのだという。
そこは人気もない寂れた場所だったが、火山ガスだまりで綺麗に死ねるというので「死人宿」と呼ばれていた。事実過去に何人もの自殺者が出ていた。
露天風呂の脱衣かごに遺書が落ちていた。泊り客の誰が落としたのだろう。それは誰なのだろう。

柘榴
離婚する両親に親権をめぐって、父と住みたい二人の女の子が絞った智恵。最後に姉妹の心理が解ける。子どもの仕掛けは誰にもわからない。


万灯
海外でガス開発に携わっていたが、部族の利権争いに巻き込まれてしまう。サラリーマン同士の競合もある。勝つために手段は選ばなかった。帰国して彼は大きなミスを犯したことを知る。犯罪に負けたのではないところが面白い。意外な罠に落ちる。

関守
編集長がルポの種をくれた、チョット曰く有り気だったが引き受けた。伊豆山中の峠のカーブで続けて起きている事故死。
峠近くの関守風の店で、老女に話を聴くことにした。山道を延々と登り人恋しくなったあたりに格好の古い店がある。
入り口に小さな地蔵菩薩が祭られているのもいかにもと言う感じだった。老女は事故のドライバーがみんなその店で休んでいったという、記憶は鮮明だった、事故は同じように峠のカーブでガードレールを突き破って崖から落ちている。
思いがけない結末。短いが読み応えがある。

満願
弁護士を目指して辛い勉学に励んでいたとき、畳屋の二階に下宿させてくれたのは、人付き合い悪い、職人としても腕のない借金まみれの男だった。だが辛い受験時代が耐えられてのは、家主の妻の思いやりだった。
弁護士になってその家を出、事務所を持って独立した。
世話になった家主の妻が殺人罪で捕まったことを知る。恩返しのために弁護を買って出た。
だが、出来の悪い厄介者の夫が死んだと聞いた途端、控訴は取りやめになった。
刑期が開けて出所した妻は病死した夫の保険金で借金を払い、何とか暮らしが立てるようだった。
しかし、遭って様々な疑問をぶつけてみたい。自分なりの解釈であっているのか。
伏線もいい、解決編もすっきり納得できる。あぁそうだったのか。面白かった。



第27回 山本周五郎賞(新潮社)受賞・第151回 直木三十五賞(文藝春秋)候補・ミステリが読みたい! 2015年版 国内編』(早川書房)1位・週刊文春ミステリーベスト10 2014 国内部門』(文藝春秋)1位・このミステリーがすごい! 2015年版 国内編』(宝島社)1位・第12回 本屋大賞(NPO法人 本屋大賞実行委員会)ノミネート

面白くて止まらず、一気に読み通してしまった。



 
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