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空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「金色機械」 恒川光太郎 文藝春秋

2015-04-08 | 読書

やっと読み終えた。時間がかかったのは、物語の流れが緩やかであったことと、内容がわかりやすくて、つい雑念が入り込んでしまう、それでまた読み返すということを繰り返した。
恒川さんの、現実から幻想的な世界に滑り込んでいく物語が好きで読んでいるが、長編は初めてで少し勝手が違った。時系列どおりに進むのではなくて登場人物が現れるごとに、その過去から話が進む。時間の往来があって、現在に合流する形になっている。柔らかい美しい文体で野生的な盗賊たちが描かれているが、何か夢物語めいている。全編を通して恒川ワールドの雰囲気が続いていく。はみ出し物の盗賊たちは殺しもやれば子どもの誘拐もする、情け容赦のない場面もあるが、それも全て絵物語のようで、続けて読めば分厚い400ページを越す話もあっという間だったかもしれない。

山奥に通称極楽園といい、鬼屋敷とも呼ばれる盗賊のがある。子供をさらってきて働かしているが、頭目が殺され手下だった夜隼が実権を握る。
そこに殺されそうになった熊悟郎が逃げ込んできて下働きを始めるが、夜隼に見込まれ、武芸の訓練を受ける。
見る見る上達して仲間に認められるが、彼は長じて、妓楼を任され莫大な利益を得てのし上がっていく。
熊悟郎は人の心が見える目を持っている。

捕縄の名手、同心の柴本巌信のところに遥香と言う娘がやってくる。彼女は手を当てると人を安楽に死なせる技を持っていた。医者の家で、見込みのない患者にその技を使わせていたが、そこからきたと言う。
彼女は過去に鬼屋敷にさらわれてきて逃げた紅葉という娘の子供だった。
遥香は養父の家を出てさまよい、庵に中にいた金色様に出会う。気を失っている間に厳信の元につれてこられたのだった。彼女は父母が殺されたいきさつを話し、厳信が手伝うことになる。

金色様と呼ばれるのは、遠い昔月から来た一族だったが、体が金に覆われ光で生きているため、一族が耐えても生き残っていた。極楽園で暮らしていたが、やがて遥香とめぐりあう。
同心と一緒になった遥香の復讐、極楽園の人々の末路、話は前後しながら進み、やがて幕引きの時が来る。

金色様と呼ばれるロボット様の物体は、言われているようにC-3POの姿を彷彿とさせ、男にも女にも変幻自在、声まで変えられる。花魁の衣装を着て白塗りの顔を長い髪に隠し、文字通りこの世のものでない強さを見せる。月から来たと言うそのときから物語の中に存在し続けて、人々の生き方に関わり続ける。

恒川さんの現実離れのしたストーリーは、離れすぎて荒唐無稽に鳴りそうな部分が、巧妙に異次元に誘う。時々はっと我に返ると、少し齟齬のある部分がみえて、どちらかといえば、短編の方が持ち味に沿っているように思えた。もっと多くの作品を読んでから言うことかもしれないが。





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