母の残した本を整理していて見つけたので再読。ついでに読みたい本を探すと紙袋に一杯になった。
世界のミステリの名作と言うと上位にランクする、完全犯罪小説。アルレーは1956年に発表したこの作品で一躍世界に知られるようになった。
わらの女。つまらない女、犯罪に巻き込まれてもなすすべの無い女。
彼女は新聞広告で、半身不随で気難しい億万長者の老人の世話係りに採用される。秘書は全ての手はずを整て待っていた。
二人は老人のいる船に乗り込む。
やがて、老人に気に入られて、結婚した。莫大な遺産が転がり込むはずだったが。老人が急死。
身寄りない老人は先に財産を寄付する遺書を書いていたが、それを妻に変更した。だが急死したため
手続きが間に合わなかった。
遺言の効力が発生するまで生かしておかなくてはならない。
老人の遺体を生きていると見せかけて下船させて家に運ぶ。緊張感のある場面。
しかし、警察がかぎつけ、彼女は拘束されて、尋問を受ける。
秘書の計画で、便宜上の養女になっていたがそれも巧妙な罠で、秘書は娘思いの父親役を演じていた。
彼女は、老人の死を狙った財産目当ての打算的で冷酷な女ということになり、世間の非難を一身に受ける。
動機や行動が全て不利に働き、彼女の発言は心境の乱れで、辻褄が会わない虚言と見なされた。
彼女はついに法廷で裁かれることになる。
巧妙な罠にかかって、身動きもままならない。こうして完全犯罪の犠牲になって命を閉じる。
無防備な若い女を言いくるめて実行に移す、犯人の犯人の長い間に練りに練った巧緻な犯罪が成功する。
新訳が出ているので、少し古い訳だったが、追い詰められていく女の進退窮まった閉塞感は重く、反してどうあがいてもほころびがない犯罪計画に追い詰められる女、と言う設定がスリルもあり、スピード感もあるさすが名作だった。