表紙はきりっとした表情のセーラー服の少女、題名も美しいので読んでみた。
今はなくなったような呼び名で言えば、しっかりしたジュニア小説で、ファンタジックな物語が展開している。
捨てられた人がいくと言う階段島で目が覚めた。中学も高校もあって生活が保障されている。下宿屋も食堂もある。郵便は出すことも受け取ることも出来る、ただ出て行けないだけで、慣れれば暮らしてはいける。
面白い設定だが、一つの階段が頂上に続いていて、上には魔女が住んでいるそうだが見たことがない、何かありそうだが、魔女がいるともいないとも、途中の話には余り関係がない。
面白いのは冒頭、いつも屋上にいる100万回生きた猫と呼ばれる男の子との会話は、芝居の台本のうな、面白いテンポがあり、現実感はないが続く物語に期待を持たせている。
残念なことに、100万回生きた猫というのは七草が呼んだ名前であって、他の登場人物がどう呼んでいるのか、一括しで「ナド」と呼ばれていると言うのはじつに味気なかった。もうすこし気の効いた呼び名があれば面白い。
こういう浅瀬を歩いているような、ストーリーで物足りない。
主人公の七草という男の子の後から、幼馴染の真辺由宇もくる、性格のまったく違うふたりはこの再会を機に、様々な体験をする。
お互いを理解できるようになっていく出来事は、この話のメインかもしれない。七草の内向きの生き方にくらべて、物言いもストレートな真辺は好感が持てるだけに、作者の意図もこの辺りにあったように感じた。
特に変わった事のない日々におきる落書き事件、階段を上ってみようという行動派の真辺。
階段島の生活は何のためにあるのか、捨てられたと言う意味は。いつか外には出られるのか。
最後で種明かしになるが、目新しい出来事もなく、ただ面白いと感じられないのは世代の相違かもしれないと思いながら、乗り切れず苦労して読んだ。