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「ファーストラヴ」 島本理生 文藝春秋

2021-07-03 | 読書

貸してくれた知り合いに、この題名は?と聞くと、それはちょっと難しいラヴだからぜひ読むといいということで、直木賞を読んでみた。
島本さんと言えば作品は多く恋愛小説らしいが、これはミステリ風味で、恋愛は少し薄味ということだった。


父親を殺したかもしれないと言っている女子大生環菜の半生を、ノンフィクションの形で書く事になった臨床心理士の真壁由紀は、インタビューもかねて面会に行くと、環菜は取りつく島もない。

環菜の義父は画家で学生を指導し、家の離れでデッサン教室を開いている。母は父に盲従、娘には無関心。それでも由紀の質問に対しては母をかばう。

美貌の環菜は幼い頃からデッサン教室でモデルになっている。男性のモデルと全裸で学生の視線に耐えることが成長するに従って苦痛になり自傷を繰り返していることが判る。

なぜ父を包丁で刺したか。トラウマがあるだけに環菜の事件は救いようがないかに思える。

一方弁護士の迦葉は由紀の大学時代の友人で、一時付き合ったことがあるが、由紀はその兄と結婚している。
写真家で受賞歴もある夫はおおらかで温かく優しい。由紀と結婚することで海外に行く夢を絶ち結婚式のカメラマンをしている。

由紀にも母親との確執があり、迦葉も由紀との間に成就できなかった思いを残して、それが現在でも恋愛に真摯に向き合えずにいる、結婚もしていない。

環菜は由紀にも言えない(いいたくない)ほどの苦しみを抱え、そんな自分を信じられなくなっている、自我を見失いそうになっている。それが逮捕されたときの「動機はそちらで見つけてください」という言葉になり、ひどくバッシングを受ける。ますます父を殺したことも曖昧になっている。

迦葉と由紀は彼女の真実の姿を追いかけていく。
会話も増え、環菜を見るにつけて自分自身を見つめることも多くなり、こじれていた二人の関係も、次第にほぐれてくる。

環菜は、なぜどうやって父を殺したのか。

由紀の夫が明るい光になってはいるが、冷酷な人間たちに犯されていく魂がよく書けている。文章も読みやすい。
由紀と環菜の心の揺れも、何気なく見える生活の奥底にはありそうでいい。

それでも欲張れば、どこか都合のいい成り行きに、これが直木賞というものかと少し期待外れの印象を受けたが、ストーリーは何か納得できる部分もあり、この作者の物は初めてなので読んでよかったとは思う。

 

 

 

☆TVで映画化の宣伝をしていたので、本が好き!の感想文から、

どんなストーリーだったかな。最近本を読んでもメモしないので、すっかり記憶から消えてしまって。これではいけない ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶よ~し

 


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