空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「横道世の介」 吉田修一 文春文庫

2014-09-02 | 読書


 柴田練三郎賞 第7回本屋大賞3位


 とても面白くて、今年の雨の被害や、いつまでも続く雨の日の多さを、ひと時でも、からっとした青空に変えてくれるような、爽快な、楽しい本だった。
因みに、こんな面白い本が第7回の3位だったら、1位と2位は何だろうかと思ったら、「天地明察」と、「神様のカルテ」だった。
ところが、いつも解説から読むので、何気なく最後のページを開いたら、解説が無くて、最も大切な世の介のその後だった。こういうのを軽挙妄動と言うのだろうか。残念だった。もしこれから読まれる方がありましたら、最後のページは開けないで。本好きの方はもう読んでしまっているかも、その上新聞連載だったそうで、無駄な一言だったかもしれませんが。


東京の大学に入学するので、九州から上京した世の介。世事に疎く、のんびりしたお人よしな性格。一人息子で、素朴で暖かい両親と、環境の中で育った、そのまんまで都会の中で暮らし始める。
ひょんなことが重なり個性的な友人たちに出逢う。成り行きでサンバクラブに入り、パレードに参加するつもりがハプニングで不参加、それでも弱小クラブなので仲間にせっつかれ、学祭で練り歩いたりしてサンバも好きになる。

入学式で知り合った倉持。同郷の小沢。アルバイトで弟役を頼まれた片瀬千春、教習所仲間の加藤。加藤は大阪の出身、スーパー経営者の息子で、ここにはクーラーがあり世の介は夏中居候をする。そつの無い加藤に誘われて海水浴に行ったところ、これがダブルデートで、世の介の相手は黒いセンチュリーで運転手つきで来たお嬢様、与謝野祥子。加藤は頓珍漢な子と言うか育ちを考えれば仕方が無い。
祥子は世の介が気にいって夏休みも長崎の田舎についてきて、母親とも打ち解けて評判がいい。

世の介は、先輩の石田に紹介されたホテルのルームサービスのアルバイトを始める。シフト制で夜勤も多い。学生生活もクラブもこなし免許も取り、祥子とも親しくなり、とうとうホテルに連れて行く仲になる。

様々なエピソードが賑やかだった一年が過ぎる。

そして話は未来,20年後の友人たちの生活を見せてくれる。

倉持は同級の唯と付き合い、そのうち唯が妊娠、退学して父親に目覚める。加藤はボーイフレンドと同棲中。

何が切っ掛けともわからないが、ちょっと喧嘩別れのような按配で祥子は世の介と別の道を歩いている。そしてフランス留学し国連職員になる。

20年後、世の介は報道写真家になり、祥子は遠く国連に勤めている。そんなそれぞれの生活があり話は終わる。

青春時代の世の介を中心にした物語だが、周りを囲む人々が個性的で、エピソードも極上で楽しい。
故郷は暖かく、人々はそれなりに悩み自分の人生を進んでいく。
世の介は、周りから抜けていると言われるが、そういう人柄が笑いまきおこし、周りを包んでいく。

読後感のいい、読みやすい話だった。


本箱に保存する(^^)
 
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「珈琲店タレーランの事件簿」 岡崎琢磨 宝島社文庫

2014-09-01 | 読書

このミス大賞 2012隠しだま



何気なく入った小路の奥にある珈琲店で、探し求めていた味に衝撃的に出逢ったアオヤマ。
京都の繁華街に近い狭い路地の奥にあるコーヒー店のバリスタは切間美星。実に頭のいい聡明な女性だった。

二人が解く事件は、日常茶飯のささやかなもので、事件と呼ぶようなものではないが、鮮やかなバリスタの推理で解決するところは面白い。

二人とも何か過去の有りそうな雰囲気が次第に濃くなってくるが、なかなか話がそこまで進んでいかない。
傘の取替えや、小学生の子猫を拾ったことや、美星のストーカーが絡んで話は進んでいく。

アオヤマと切間美星の珈琲の薀蓄で半分、最初は読み慣れないためか、内容もさほど起伏が無くて進まない。
文体も落ち着いた形だが少し前時代風で硬い。文学的ともいえるかもしれないが。ラノベというには少し距離がある。

珈琲好きには、苦さも甘さもよくわかる、プロの言う複雑な深さには届かないにしても、知識は、香りとともに広がって面白い。ちょっと一休みして飲みたくなる。

表紙や珈琲の薀蓄につられ、登場人物のキャラに惹かれて手を出したが、前半の会話にさすがと思わせるテンポのいい部分はあるけれど、どうも読みにくい。

そこを我慢すれば、後半は面白い展開になる。
まず捻ってある、そこにまた捻って、ひねりが効き過ぎて目が回りそうになる。
そういう遊びが目新しくて、いろいろ言いたいことを飲み込んでしまいそう。

題名にもひねりがある。最後まで読んでみて、はぁはぁそうなのかとにやりとする。

話題のこの本を買ったまま積んであったのでやっと読了して一安心。ヾ(〃^∇^)ノ♪






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