映画総括、最後の夜は5項目に分けて今年の映画界を振り返ります。
【音楽劇との相性】
一昨年の『ボヘミアン・ラプソディ』に始まって、今年も『アリー/スター誕生』や『ロケットマン』などがスマッシュヒットを記録。
もともと映画と音楽は相性がいいものだけれど、演者の熱演、撮影・編集そして録音技術の進化によってリアリティがぐんと増し、映画館がまるでライヴ会場であるかのような効果をもたらした。
この現象に「いける!」と思ったプロデューサーは多いはず、だから来年も「映画と音楽の幸福な結婚」は期待出来ると思う。
【配信系映画】
もう無視するわけにはいかない―ということは、じつは去年も記している。
けれども(自分のような)頭の堅い映画好きであればあるほど、配信系映画の勢いを認めつつも、それらを素直に受け入れられないところがあった。
(カンヌ映画祭そのものが、そうじゃない?)
そういえば「フィルムからデジタルへの移行期」でも同じことが起こった。
「記憶するデジタルは映画とはいえない。焼き付けるフィルムこそ映画なんだ」と、呑み会で議論したことはきのうのことのように覚えているもの。
でもね。
野心的な映画監督は、撮りたいもののためには手段やツールは選ばないんだよ。
ジェームズ・キャメロンやジョージ・ルーカス、アルフォンソ・キュアロン、そしてスコセッシのような映画界の重鎮たちは、つべこべいわずに新しいものを手に取り貪欲に「映画を!」撮る。
受け手のほうが精神的にはジジイじゃん!! と思ってしまった。
もちろん踏ん張ることは「ときに」必要でしょう。
ただそれは「いまじゃないかもしれない…」と猛省するきょうこの頃なのだった…。
【マーヴェル系は映画じゃない】
そんなスコセッシ御大は「狂的な」シネフィルとして知られるが、マーヴェル系の映画に喧嘩を売ったことが話題になっている。
物量と勢いで観客を圧倒させようとする構成にドラマはなく、ほとんどテーマパークのアトラクションであると。
もともと『アベンジャーズ』系に乗れなかったこと、そもそもスコセッシ・フリークであること―などから「どうしたって」神のことばを無条件に支持してしまう自分ではあるけれど、
その是非は置いておいて、創り手たちが「ある程度」やりあうことも必要なのかもな、、、などと思ったり思わなかったり。
かつて津川雅彦は北野武に「賞を取って喜んでたってしょうがないでしょ」と喧嘩を売ったことがあり、自分は、いいぞやれやれ! と煽ったことがあるし。
ただ受け手は、冷静にならなければいけないところがあるよね。
自分を例に出すまでもなく、どうしたって、内容よりも「誰がいっているか」に重きを置きがちだから。
【劇場の一体感を日本産で】
去年のダークホースが『カメラを止めるな!』だったとするならば、今年は『翔んで埼玉』でしょう。
劇場での一体感といったら!
(関東で観たからかな? ちがう気がする)
日本産のコメディ映画で、これほど沸くのも珍しい。
予告編にあるとおり、これは壮大な茶番劇。
しかし茶番も極めれば超大作以上の満足感、映画を観た感! を覚えることを証明した点で、この映画はもっともっと評価されていいと思う。
【期待値の高さ】
いっぽうで、抱えきれぬほどのプレッシャーを背負ってしまったのが『カメラを止めるな!』の上田監督だったと思う。
このひとが「センスのいいエド・ウッド」であったことがはっきりした―という点だけが第二作目『スペースアクターズ』のよいところで、このままでは「『カメ止め』は運がよかったに過ぎない」などといわれてしまう、たぶん次作が正念場になると思う。
逆に感心したのが、『天気の子』の新海誠。
ひょっとすると、前作の特大ヒットを「運がよかっただけ」と思っている唯一の日本人かもしれない。
そのクールなスタンスで『天気の子』に臨んだ結果、前作でファンになったであろう多くの観客をけむに巻く(?)快作に仕上げている。
じつにあっぱれ! なのです。
…………………………………………
~19年度劇場公開映画17傑~
第01位『魂のゆくえ』
第02位『ジョーカー』
第03位『アイリッシュマン』
第04位『108~海馬五郎の復讐と冒険~』
第05位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
第06位『ウィーアーリトルゾンビーズ』
第07位『ハウス・ジャック・ビルド』
第08位『翔んで埼玉』
第09位『チワワちゃん』
第10位『CLIMAX クライマックス』
第11位『ROMA/ローマ』
第12位『グリーンブック』
第13位『海獣の子供』
第14位『宮本から君へ』
第15位『RBG』
第16位『天気の子』
第17位『ブラック・クランズマン』
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明日のコラムは・・・
『美人と焼き肉とあたし』
【音楽劇との相性】
一昨年の『ボヘミアン・ラプソディ』に始まって、今年も『アリー/スター誕生』や『ロケットマン』などがスマッシュヒットを記録。
もともと映画と音楽は相性がいいものだけれど、演者の熱演、撮影・編集そして録音技術の進化によってリアリティがぐんと増し、映画館がまるでライヴ会場であるかのような効果をもたらした。
この現象に「いける!」と思ったプロデューサーは多いはず、だから来年も「映画と音楽の幸福な結婚」は期待出来ると思う。
【配信系映画】
もう無視するわけにはいかない―ということは、じつは去年も記している。
けれども(自分のような)頭の堅い映画好きであればあるほど、配信系映画の勢いを認めつつも、それらを素直に受け入れられないところがあった。
(カンヌ映画祭そのものが、そうじゃない?)
そういえば「フィルムからデジタルへの移行期」でも同じことが起こった。
「記憶するデジタルは映画とはいえない。焼き付けるフィルムこそ映画なんだ」と、呑み会で議論したことはきのうのことのように覚えているもの。
でもね。
野心的な映画監督は、撮りたいもののためには手段やツールは選ばないんだよ。
ジェームズ・キャメロンやジョージ・ルーカス、アルフォンソ・キュアロン、そしてスコセッシのような映画界の重鎮たちは、つべこべいわずに新しいものを手に取り貪欲に「映画を!」撮る。
受け手のほうが精神的にはジジイじゃん!! と思ってしまった。
もちろん踏ん張ることは「ときに」必要でしょう。
ただそれは「いまじゃないかもしれない…」と猛省するきょうこの頃なのだった…。
【マーヴェル系は映画じゃない】
そんなスコセッシ御大は「狂的な」シネフィルとして知られるが、マーヴェル系の映画に喧嘩を売ったことが話題になっている。
物量と勢いで観客を圧倒させようとする構成にドラマはなく、ほとんどテーマパークのアトラクションであると。
もともと『アベンジャーズ』系に乗れなかったこと、そもそもスコセッシ・フリークであること―などから「どうしたって」神のことばを無条件に支持してしまう自分ではあるけれど、
その是非は置いておいて、創り手たちが「ある程度」やりあうことも必要なのかもな、、、などと思ったり思わなかったり。
かつて津川雅彦は北野武に「賞を取って喜んでたってしょうがないでしょ」と喧嘩を売ったことがあり、自分は、いいぞやれやれ! と煽ったことがあるし。
ただ受け手は、冷静にならなければいけないところがあるよね。
自分を例に出すまでもなく、どうしたって、内容よりも「誰がいっているか」に重きを置きがちだから。
【劇場の一体感を日本産で】
去年のダークホースが『カメラを止めるな!』だったとするならば、今年は『翔んで埼玉』でしょう。
劇場での一体感といったら!
(関東で観たからかな? ちがう気がする)
日本産のコメディ映画で、これほど沸くのも珍しい。
予告編にあるとおり、これは壮大な茶番劇。
しかし茶番も極めれば超大作以上の満足感、映画を観た感! を覚えることを証明した点で、この映画はもっともっと評価されていいと思う。
【期待値の高さ】
いっぽうで、抱えきれぬほどのプレッシャーを背負ってしまったのが『カメラを止めるな!』の上田監督だったと思う。
このひとが「センスのいいエド・ウッド」であったことがはっきりした―という点だけが第二作目『スペースアクターズ』のよいところで、このままでは「『カメ止め』は運がよかったに過ぎない」などといわれてしまう、たぶん次作が正念場になると思う。
逆に感心したのが、『天気の子』の新海誠。
ひょっとすると、前作の特大ヒットを「運がよかっただけ」と思っている唯一の日本人かもしれない。
そのクールなスタンスで『天気の子』に臨んだ結果、前作でファンになったであろう多くの観客をけむに巻く(?)快作に仕上げている。
じつにあっぱれ! なのです。
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~19年度劇場公開映画17傑~
第01位『魂のゆくえ』
第02位『ジョーカー』
第03位『アイリッシュマン』
第04位『108~海馬五郎の復讐と冒険~』
第05位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
第06位『ウィーアーリトルゾンビーズ』
第07位『ハウス・ジャック・ビルド』
第08位『翔んで埼玉』
第09位『チワワちゃん』
第10位『CLIMAX クライマックス』
第11位『ROMA/ローマ』
第12位『グリーンブック』
第13位『海獣の子供』
第14位『宮本から君へ』
第15位『RBG』
第16位『天気の子』
第17位『ブラック・クランズマン』
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明日のコラムは・・・
『美人と焼き肉とあたし』