Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

NGワード

2019-01-16 00:10:00 | コラム
「フリー」を掲げてモノカキやっていると、いろんなジャンルの原稿依頼が入る。

基本は断らないし「はったり」を信条としているので、苦手分野の経済や服飾関係もNGにはしないですよボツを喰らうことも(当然)あるけれど。。。


つまり、向こうが断りを入れることは「多々」あっても、自分が断りを入れることはない。

入れられる、わけがない―そう思っていた。

うん、思っていたんだ。

いたんだが。

去年の暮れに、初めて自分のほうからNGを出した仕事があった。

最初はOKを出して取りかかったので、きちんとした表現をすれば降板ということになる。


なぜって。

NGワードが多かった・・・からではなく、その逆、、、でもないな、
なんというのだろう、自分のなかでNGとしていたことばを「積極的に使用してくれ」と注文を受けたから。


ちなみに自分が使用していて「これはよくない」と指摘されることの多いことばは、「キチガイ」。

自分、妙な表現だが、このことばが大好きで、しょっちゅう使用する。

「やめてくれ」といわれても使いつづけ、結局はボツにされたことも多々ある。


逆に自分が大嫌いで、積極的に使わないようにしていることばは・・・

女性のことばとされている「~だわ」という末尾、

そして、「騒然」「殺到」「苦言」のみっつ。


ためしに、1週間のYahooニュース!の見出しをチェックしつづけてほしい。

煽り文言として、このみっつが「異様なほどに」「飽き飽きするほどに」多用されているから。

実際は「騒然」としていないのに。
実際は「殺到」もしていないに。
実際は単なるツッコミなのに、大仰な「苦言」ということばに置き換えられている。


クリック数だけで勝負しているので、本文はどうでもいいってこと。


これはいかん。

いや、こういう世界があってもいいけれど。

こういう世界に加担することは、モノカキとして終わっているなと。

もう少し差別的にいえば、こんな、アルバイト感覚で文章創っている連中と同じことをしてはいかん!! と思ったわけ。


この依頼、けっこうギャラがよかった。

文章力ではなく速筆力を最も評価するという方針で、その点においては自分に向いている気もしたのだが、


「文章はばっちりです。キレもあるし、要点もまとめられている。ただ、見出しが弱い。だから見出しはこっちで創ります。それから、その見出しにあわせて本文にも少し手を加えます」

といわれ、どう変えるのかと問うと、

「飛びつき易い文言をふたつかみっつ、見出しに持っていきます」と返された。

「飛びつき易い?」
「いったでしょう、出来るだけ騒然とか殺到とか大炎上とか使ってくれって。牧野さんの文章はリズミカルだけど、そのどれも入ってないから刺激が弱い」


べつに刺激を与えるためにモノカキやっているわけではないので、バカらしくなって「投げて」しまった。

「半分くらい、原稿料出しますよ」といわれたが、
「いいです、自分にとっての授業料とします」といって電話を切った。


器用ではないかもしれないけれど、
これを許せるか/許せないか、この一線に踏みとどまるところに、自分の、ちっぽけなプライドがあるのだなぁ、、、と思った―。


※ワインスタイン問題で「金で買った」といわれているオスカー受賞作『恋に落ちたシェイクスピア』(98)だが、自分は好きなんだよな



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明日のコラムは・・・

『映画監督別10傑(37)大林宣彦』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(276)

2019-01-15 00:10:00 | コラム
くれー「む」→「む」し(虫)

「成人後あるある」のひとつ、かな。

ガキのころは平気で虫とかを触っていたのに、触れなくなる現象。

これに当てはまるひとは多いので、「あるある」認定。


自分?

まぁダメではないけれど、積極的には触りにいかない。

ただ逆に、ガキのころはカエルはペケだったのに、いまは触れたりする。
(でもカエルは、虫ではないよね)


ちなみに自分の好きな虫は、やっぱり(?)昆虫。

とくに、トンボとバッタが大好き。

ウルトラマンより「圧倒的に」仮面ライダーが好きなのは、そのへんも関係していると思う。


さて、映画のなかの虫。

ダジャレじゃなくってね。
邪魔者として出現し、無視したくても無視出来ない存在感を見せつけてくる―それが、映画のなかの虫。

繰り返すけど、ダジャレじゃないよ。


『ブルーベルベッド』(86…トップ画像)

鳥じゃないかって?

くちばしを見てごらん、虫を咥えているでしょう。

映画のテーマを端的に表現した名シーンとして、(一部では)あまりにも有名。



『バートン・フィンク』(91)

一夜をともにした女の背中に止まる、一匹の蚊。



男は蚊を叩き潰すも、そこそこの衝撃があったはずなのに女は起きない。

女の身体をひっくり返してみると・・・。

『ハエ男の恐怖』(58)

よく知られたリメイク版のほうではなく、オリジナルを。



あまりに「そのまんま」な変身ではあるものの、インパクトは充分。

それに脚本がしっかりしているから、安い視覚効果さえ「あり。」と思ってしまうのだった。

『モダンタイムス』(36)

ライン工場でボルト(?)をせっせと閉めるチャーリーの邪魔をする、一匹の蠅。

ね、基本的に映画のなかの虫は、いっつも登場人物の邪魔をするんだ。

その最たる例が・・・

『殺しの烙印』(67)でしょう。

殺し屋ナンバー3(宍戸錠)の仕事を邪魔したのは、美しい蝶。




ここまで邪魔者扱いされると、ちょっと気の毒になってくるなぁ!!


次回のしりとりは・・・
む「し」→「し」っきん。

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明日のコラムは・・・

『NGワード』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(275)

2019-01-14 00:10:00 | コラム
そんどらろっ「く」→「く」れーむ

映画のなかのクレーム、その王者といえば『フォーリング・ダウン』(93)のマイケル・ダグラスで決まりでしょう。

ファストフード店で、
(1)モーニングを頼もうと思ったら、「たった数分」間に合わずに断られる
(2)出てきたハンバーガーのサイズが、看板の写真とあきらかにちがう

で、マシンガンを取り出すと笑

ただきょうは、映画のなかではなく「映画館でのクレーム」について。

自分、映画館で働いてましたから。


ちなみに自分がサービスを「提供した」側として、「映画館以外で」受けたことのあるクレームは・・・

(1)『すき家』で働いていたころ、生煮えの玉葱入り牛丼を出してしまった

(2)ラブホテルで働いていたころ、部屋の隅の隅の隅に落ちていたコンドームに気づかず売り部屋にしてしまった

どちらも、クレームが入って当然の失態だわな。

逆に自分は、クレームを入れたことがあるか?

・・・・・。

(テイクアウトで)注文したなにかが入ってないとか、釣り銭がまちがっているとか、店員に知らせることはあるけれども、いわゆるクレーマーみたいな行為には走らない。

なんか、すごくダサいと感じるから。

イライラすることくらいは、あるよ。
居酒屋で、最初の一杯目がなかなか運ばれてこないとか。

それでも可能なかぎり、ニコニコ顔で「まだですかー?」と聞くことにしている。

接客態度とか気に入らなかったら、早めに退店するか二度と行かなければいいだけ、、、だもの。


※この話、モノスゴ面白い。
たまに松ちゃんの話より浜ちゃんの話のほうがインパクトがある、、、ということが起こるのよね。




話を戻して、映画館でのクレームについて。

自分?

映画館に行く回数が異様に多いので、そりゃいろいろあるけれど。

映写が中断されたときも、そのまま再上映がなかったときもクレームは入れなかったよ。

だってそのあと、返金やらなにやら「ちゃんとした」フォローがあったから。

しかし「きょうしか時間が取れない」というひとも居て、けっこう怒っていたっけな。


それでは、
自分が映画館で働いていたころに受けたクレームと、観客として目撃したクレーム、それぞれ最も印象に残るものを挙げてみよう。


『平成狸合戦ぽんぽこ』(94)



50代後半のお客さんから、「音がでか過ぎる」とクレームが入る。

「申し訳ありません」といえばいいものを、まだ若かった自分は「この劇場に適した音量になっています。映画館の醍醐味を味わってください」といい返してしまったため、けっこうこじれる結果に。

いろんなひとが居ると分かった現在であれば、もちろんそんな風に返さなかっただろう。

『アレックス』(2002)

明滅を繰り返す映像、それを捉えるカメラはじっとせずに揺れたり回転したりしている。
不安定なのは映像と音だけでなく、描写もそうだった。

ギャスパー・ノエによる挑発的な映画のハイライトは、8分超に及ぶ強姦シーン。

これに腹を立てた30代後半の男性が、係員に「こんな映画をかけちゃいけない! なぜかけたんだ!?」と怒鳴っている場に出くわす。

分からないではないが、係員に罪はないわけで、ちょっと気の毒だった。

そもそも。
こういうタイプの映画であることは、予告編はもちろん、ポスター(トップ画像)からも「なんとなく」想像出来るわけで。。。



あすのしりとりは・・・
くれー「む」→「む」し。

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明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(276)』
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少食にはならないけれど…

2019-01-13 00:10:00 | コラム
こちら、去年クリスマスに喰ったケンタさん。





んでもって、年を越してすぐに喰ったケンタさん。




相変わらずチキンばかり喰っているが、いちどで喰う量/スピードともに、10年前と比べれば落ちている。

当たり前か、落ちていなかったらほんとうのバカヤロウということになる。


たとえばトップ画像の、サーティワンのアイス。
持ち帰りの7個を、それが当然であるかのように一気に喰っていた。

もちろん主食じゃないよ、デザートとして。

凄まじいエンゲル係数だったなぁ、、、と我ながら。


いまだって「10年前に比べれば」喰わなくなったというだけで、べつに少食というわけではない。

それでもエンゲル係数は減少傾向にあり、それは計算しなくてもいちどで喰う量/スピードで分かる。


じゃあ貯金出来そうなものだが、そのぶん酒に金を使うようになった。

ので、プラスマイナスはゼロ。


アマチュアとはいえ、少しばかり格闘技をかじったことのある自分。

もし才能があってプロになったとしても、自分をいちばん苦しめるのは怪我でも対戦相手でもなく、減量だったのだろうな・・・と、ほんとうに思うよ。


※この回のチャーハン大食い対決、モノスゴ面白い…とくに20分からの、渡名喜アナウンサーとのやりとり!!



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明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(275)』
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にっぽん女優列伝(94)樹木希林

2019-01-12 00:10:00 | コラム
43年1月15日生まれ・2018年9月15日死去、享年75歳。
東京出身。

去年鬼籍に入った樹木希林(きき・きりん)さん、元々いいたいことをはっきりいうタイプのひとですが、
最も仰天し、ある意味で痛快、けれども関係者を気の毒に思った発言といえば・・・

自分だけではないでしょう、
『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(2007)で日本アカデミー賞を取ったときの、ハイライトになってしまったスピーチです。

「私ならちがう作品を選びます」
「半分くらいしか出演していないのに賞をいただいてしまって申し訳ない」
「帰りたい」
「組織票かと思いました」

そして最後に・・・

「この日本アカデミー賞が名実ともに素晴らしい賞になっていくことを願っております」と述べる。


米版のアカデミー賞で問題発言やパフォーマンスをしたひとは多いですけれど、日本でそれをやったのは希林さんだけです。

日本アカデミー協会の運営は、放映権料によって賄われています。
つまり「日テレ様様」の体制から抜け出さないかぎり、日テレがからんだ映画が受賞するに決まっているだろう―映画ファンの多くが「日本アカデミー賞はダメ」と思っている根本理由を、希林さんは本舞台でぶっちゃけたのですね。

すばらしー。


作品それ自体は、駄作というわけではなかったのですけれどね。

リリーさんの原作を上手に脚本化していった松尾スズキ。
俳優陣も好演していましたし、なぜ中途半端な映画になってしまったのでしょう・・・。



<経歴>

旦那は、ロッケンローラー内田裕也。



娘はエッセイストの内田也哉子、その夫はモックン。

ロッケンローラーな旦那について、少しだけ言及しておきましょうか。
歌の才能は、正直分かりません。
ただ、やりたいことをやるというのがロックの神髄であるとするならば、このひとはまちがいなくロッケンローラーなのだと思います。

そこいらへんのことは濁したままにしておきますが、俳優としては素晴らしい存在なのではないか、、、と。


さて希林さんについて。

61年―文学座付属演劇研究所に入所、「悠木千帆」名義で女優活動を展開する。
65年に正座員になるも翌年に退団、映画への初参加は66年の『続・酔いどれ博士』でした。

77年―テレビの企画で芸名を競売にかけ、いろいろあって樹木希林という芸名が生まれる。
(このあたりのことは、ウィキペディアを参照してください)

遡って64年―。
テレビドラマ『七人の孫』(TBS)に出演、注目を集める。

以降も『寺内貫太郎一家』(74)や『ムー』(77)とその続編『ムー一族』(78~79…いずれもTBS)などに出演し人気者になる・・・のですけれど、ここに記したとおりで、現在では「映画女優」のイメージがありますが、このころは「テレビの喜劇俳優」みたいな位置づけだったのですよね。


映画だって、すごい数の出演作はあるのですが。。。

【60年代】
『湖の琴』(66)『旅路』(67)『兄貴の恋人』(68)『コント55号と水前寺清子の神様の恋人』(68)

【70年代】
『男はつらいよ フーテンの寅』(70)『縁結び旅行』(70)『谷岡ヤスジのメッタメタガキ道講座』(71)『喜劇 夜光族』(71)『赤ちょうちん』(74)『悪名縄張り荒らし』(74)『あばよダチ公』(74)『蔵王絶唱』(74)『告訴せず』(75)『まむしと青大将』(75)『エデンの海』(76)『サチコの幸』(76)『女教師』(77)『はなれ瞽女おりん』(77)『トラック野郎・突撃一番星』(78)『金田一耕助の冒険』(79)

【80年代】
『ツィゴイネルワイゼン』(80)『土佐の一本釣り』(80)『帰ってきた若大将』(81)『野菊の墓』(81)『転校生』(82)『刑事物語』(82)『天城越え』(83)『ふるさと』(83)『クララ白書・少女隊PHOON』(85)『カポネ大いに泣く』(85)『さびしんぼう』(85)『夢千代日記』(85)『春駒のうた』(86)『郷愁』(88)『つる ―鶴―』(88)『風の又三郎 ガラスのマント』(89)


基本、小さい役をどんどんこなしていく―というのが80年代までのスタイルだったといっていいかもしれません。
(もちろん『転校生』における真面目な母親など、印象的な役柄も演じてはいますが)


81年―旦那が無断で離婚届を提出するも希林さんはそれを認めず提訴し勝訴、それ以降は別居婚のような状態がつづく。
夫婦には、その夫婦しか分からないことがある、、、ってことですよね。


90年代に入ると、芸能スタイルそのものは変わらないものの、映画における存在感が増していくようになります。
この時代は日本映画の斜陽期と呼ばれていましたが、演技巧者の希林さんの存在は、監督たちにとってどれほどありがたかったことか。

ただ、一部ではこんな評価のされかたも・・・。

「希林さんが巧過ぎて、ほかの俳優がみんな大根に見える」

うーん、たしかにそういう映画もあったけれど。
しかも、1本だけでなく苦笑

キャリアに戻りましょう。

【90年代】

『大誘拐 ~Rainbow kids~』(91)『リトル・シンドバッド 小さな冒険者たち』(91)『いつかギラギラする日』(92)『ザ・中学教師』(92)『夢の女』(93)『REX 恐竜物語』(93)『さくら』(94)『RAMPO』(94)『時の輝き』(95)『三たびの海峡』(95)『美味しんぼ』(96)『恋と花火と観覧車』(97)『39 刑法第三十九条』(99)

【2000年代】

『ざわざわ下北沢』(2000)『東京マリーゴールド』(2001)『ダンボールハウスガール』(2001)『ピストルオペラ』(2001)『リターナー』(2002)『命』(2002)『半落ち』(2004)『下妻物語』(2004)『IZO』(2004)『チェケラッチョ!!』(2006)『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』『サイドカーに犬』(2007)『歩いても 歩いても』(2008)


最後の10年代に入ると、「より」存在感は増します。

『悪人』(2010)の、詐欺に引っかかる母親役を覚えているひとも多いと思われます、とても不憫で、でもなんとか生き抜こうとする姿に胸を打たれました。

『ゴースト もういちど抱きしめたい』(2010)、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(2011)、『奇跡』(2011)、『朱花の月』(2011)、
『わが母の記』(2012)、『ツナグ』(2012)、
『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(2013)、『そして父になる』(2013)、
本人を追ったドキュメンタリー『神宮希林 わたしの神様』(2014)、
『駆込み女と駆出し男』(2015)、『あん』(2015)、『海街diary』(2015)、
『海よりもまだ深く』(2016)、
音声ガイドナレーションを務めた『光』(2017)、
『モリのいる場所』(2018)、『万引き家族』(2018)、『日日是好日』(2018)、

そして最新作にして遺作が『エリカ38』(2019)。
公開日は未定ですが、きっとヒットすると思います。最期の作品ですからね。


2003年―網膜剥離で左目を失明、さらに全身がんであることを告白。

2018年9月15日、死去。
享年75歳。


ただヒトコトだけいっておきましょう。

めっちゃかっけー! 人生です。

合掌。


次回のにっぽん女優列伝は、菊池桃子さんから。

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明日のコラムは・・・

『少食にはならないけれど…』
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