留美子、大丈夫? そろそろ疲れてきたんじゃない?
ううん、思ったより着物は平気だけど、草履がちょっとね
そうだよな、普段そんな牛みたいなの履かないし
何よ牛って、足が太いって事?
ち、違いますよ、指が割れてるって事
それじゃ足袋はいてる人はみんな偶蹄目ってことだね
あははは、でもたまにこうやって和服で歩くのものいいもんだね
うん、全部で5000円だったし、辰雄なんか3500円だったしね
レンタル屋さん、結構流行ってるから競争だね
明日返せばいいってすごく良くない?
ゆっくり着替えも出来るし、うちに帰ってからア~レ~ってゆうのもできるし
辰雄ってホントにばかだ、時代劇見過ぎ

何か時間がゆっくり動いてるみたいだね
う~ん、みんなそうゆうけど、時間って何なんだろう
はいはい留美子さん、そんなに真剣に考えないの
真剣でも無いんだけど、時間はそれぞれの人になかにあるような気がするんだ

人の中にあるんじゃさ、バラバラで困るでしょう
それぞれが感じるものだから、みんな一緒に合わせなくていいのよ
何時に待ち合わせって出来なくなっちゃうよ
それは大丈夫なの、時計の時間とそれを感じてる自分は別だから

パラレルワールドみたいな事?
ちょっと違うかな、どっちかって言うと量子かな
それは魚獲る人じゃない、あのぅほら何とかのネコでしょ
そうそう知ってたんだ、シュレディンガーの猫

理科は好きだけど、それはついて行けない、量子コンピューターも意味ワカランし
そうゆうのは私も全然分からないけど、時間ってひとつじゃ無い気がする

バスが来ちゃったからもう帰ろうか
うんと温かくしてさ、今日はゆっくりの時間のままでいたいね

留美子!
ん、突然なに?辰雄
俺いまちょっと分かった気がする、時間の事
留美子は一瞬辰雄の顔をのぞくように見た
そのまま前を向くと、ちょっと微笑んでつないだ手に力を入れた。。