暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東大寺献茶式 2013-その1

2013年05月08日 | 献茶式&茶会  京都編
風薫る5月3日、東京の茶友Oさんに誘われて、東大寺献茶式へ行きました。

京都にいる間に一度は参席したいと思っていたので、朝5時起きも厭いません。
珍しくピンクの無地紋付が着たくなって葵祭の帯を〆め、出かけました。

大仏殿前の受付に到着したのは8時30分頃でしょうか。
地図を見ながら、先ず本坊奥之間の今日庵席へ向いました。

最初の待合は本坊の仏間の一つで、重源上人像が祀られていました。
次の菓子席で「香具山」(末富製)を頂き、迷路のような廊下を本席へ。
床は清巌和尚筆「粘華」、アツモリソウが竹二重切へいけられ、
香合は由緒ある椿材で、玄々斎が作られたものとか。

長板に山水画の古染付水指、風炉には古天命桐紋尾垂釜が掛けられ、
大きな炉釜を見慣れた目にはとても小ぶりに映ります。
石川先生のお点前が始まり、席主挨拶は中西先生です。
手際よく濃茶が出され、三人で練られた濃茶を味わいました。
濃茶はおおとりの昔(柳桜園詰)です。
主茶椀の黒楽は銘「母父開(はちびらき、長次郎の鉢開写)」了入造ですが、
これは展示だけでして、実際には別の茶碗が使用されました。

            

前席で同席だった方がご親切にも副席(染山席)の順番待ちを申し出てくださり、
有難く大仏殿で行われた献茶式へ初めて参席させて頂きました。

毎年5月3日は、聖武天皇の佐保山南陵に参拝する「山陵祭」の日だそうで、
お坊さまたちが大仏殿に戻るころ、お茶壷道中と称する、白装束の茶師により
宇治から運ばれた茶壺が到着し、大仏殿に奉じられました。
いよいよ献茶式の始まりです。
鵬雲斎大宗匠が茶壺から茶袋をとり出し、臼で新茶を挽き始めました。
その後、濃茶と薄茶の二椀を点てられ、盧舎那仏さまへ捧げられました。

            
                 大きな大きな盧舎那仏(大仏)さま

            
                  献茶式が始まる直前

早くに席を確保していたにもかかわらず、後から来た方が前に立ってしまい、
仕方なく私たちも立ち見で献茶式に臨みました。
点前座では大宗匠が白い帛紗を捌いて茶器を清めていくのですが、
袱紗捌きの呼吸の間合を測りながら拝見していると、
白い帛紗だけがほの暗い空間に存在し、舞っているようでした。
催眠術にかけられたように、遠い夢の中の出来事の心持ちになって、
その動きを見つめていました。

茶が点じられてから、はっとしました。
仏前の献茶台まで長く急な階段を上って運ばなくてはなりません。
急に心配になり、固唾を呑むように見守っていました・・・。
だって御年たしか九十歳・・・。
でも、心配は全く無用で、凛とした姿勢で足も呼吸も乱れず茶を献じました。
流石でございます・・・思わず、心の中で大拍手いたしました。
その後、参列者全員で般若心経を唱和しました。

四国遍路で献茶をさせて頂いたとき、あるお坊さまと般若心経を唱和し
その間にお大師様に茶を喫んで頂いた思い出があります・・・。

盧舎那仏さまも般若心経を聞きながら味わってくださったことでしょう。

合掌。
                                   


         東大寺献茶式 2013-その2へつづく