暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

皐月の教室だより・・・「七事随身」と初風炉の茶杓荘

2017年05月12日 | 暁庵の裏千家茶道教室



牡丹が咲き乱れ、風薫る気持ちの良い季節になりました。
世の中はゴールデンウィークでしたが、3日から初風炉の稽古を始めました。

床には「七事式の偈頌」を掛け、五月人形を飾りました。
?十年ぶりに陽の目を見た5月人形にこのお軸が一番ふさわしいように思ったのです。
それに、12日から五葉会・新年度がスタートすることだし、「七事随身」(碧巌録)の教えを思い起こしてみたい・・・と。

七事には「内ノ七事」と「外ノ七事」の2種があり、
「内ノ七事」は精神的な修養として禅の修行が肝腎であるとし、「外ノ七事」は禅の修行に必要な七つ道具をさしています。
さらに、これを武の七つ道具である弓・矢・刀・剣・甲・冑・戈(ほこ)に比すべきものとし、
一つも欠くことなくこの七事を常に身に備えなければならない・・・と説いています。(裏千家茶道点前教則26・七事式一より)

何となくわかったような・・・わからないような・・・
「七事式の偈頌」を読むだけで警策で打たれたような身が引き締まる思いがしますので、
「七事随身」の意味するところをじっくり考えるのもたまには必要な気がするのですが・・・。


 建長寺の「柏槇(ビャクシン)」(和名イブキ)       

「七時随身」についてわかり易く書かれ、妙に納得する記事(茶道の禅語)を見つけたので掲載させて頂きます。
      

この「七事」というのは、中国の故事で、名将の持つ七つの武具のことを言います。
つまり、弓、矢、刀、剣、鎧、兜、鉾、この七つの武具が備わっていることが「七事随身」であります。
禅門では、修行者を指導する者は、すべてを兼ね備えていなければならない、という意味で、この「七事随身」という言葉が便われています。
茶の湯では、もっと精神的な意味で、この「七事随身」という言葉を解釈されたらいいのではないでしょうか。
つまり、ほんとうに豊かなお茶をするためには、お点前ばかりでなく、書、絵画、建築、料理といった、あらゆる方面のことをすべて学ばなければなりません。
また人間的にも、もっともっと成長しなければならないのです。そうすれば、いかなる場面に遭遇しても、少しもあわてる必要がない。
ちょうど名将が七つの武器を身につけているときのように、どこから攻撃を受けても、堂々と受けて立っことができます。
そういう心境でお茶をすれば、どんなに楽しいお茶ができるかということです。

なお、お茶の「七事式」は、この「七事随身」からとられているわけですが、それはやはり、茶人は最終的にはすべてのわざを身につけねばならない、というところからきているのだと思います。(以上)


                       


さて、初風炉の稽古ですが、Fさんの初炭手前と茶杓荘から始まりました。
先ずは床に紫の袱紗を敷き、お持ち出しの茶杓を筒のまま荘って頂きました。

初炭で炭を置いてもらうと、灰形の出来が気になります。
火床の深さはよさそうですが、もう少し広くしないと胴炭が入りにくそうでした。
調整した時と違い、五徳と釜のバランスも今一つ気に入りません。
落ち着くまでにはもう少し時間が必要のようです。

半年ぶりの風炉初炭手前ですが、流石ベテランさん、すらすらとなさいます。
灰器の取り置きも身体がしっかり覚えていて、月形も美しく上品です。
風炉は唐銅面取、釜は波文尻張釜(畠春斎造)、灰器が備前焼から小ぶりの黄瀬戸になりました。
練香から白檀に変わり、淡々斎お好み「鯉幟香合」がかわいらしく泳いでいました。



つづいて、Fさんリクエストの茶杓荘です。
今、Fさんは問答を熱心に勉強中ですので、どのような茶杓でどのような由緒が語られるのか・・・
とても楽しみでした。
茶杓を拝見すると、節より上部にある1本の深い樋が何かを語っているような、質実剛健な印象の白竹中節の茶杓でした。
かなり年季が入っているらしく薄茶に変色しています。

あまり詳しく書けませんが、その茶杓は習われていたA先生が教室を閉めるときにFさんに贈られたものでした。
裏千家○○斎作、茶杓銘も誠に素晴らしく、筒と箱の拝見を所望しましたが、箱書は○○斎宗匠の生涯や佇まいを髣髴させる内容で申し分ないものでした。
その茶杓をFさんに託されたA先生のお気持ちがひしひしと伝わってくるようでした。
「この茶杓を使う機会をたくさん作って、これからもお茶を楽しみながら精進してくださいね!」(A先生の代弁??・・・)

初風炉の茶杓荘で思いがけなく貴重な茶杓を拝見することができて嬉しいです・・・ 

     
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